夜明けのカナタ

サイノメ

配送娘と配信姫

第0章 明け方の夢

0‐1 明け方の夢①

 広い地平線が闇からゆっくりと白へ変わっていく、払暁ふっきょうの時。

 荒地の岩石にその明かりが少しずつ照らされていく。

 その光の中、一人の青年が立っている。

 朝の太陽を背にしており顔はよく見えない。

 しかし見えなくても、その顔を忘れることはない。

 その姿を追って、わたしたちは長い旅をしているのだ。

 彼は誰時かたわれどきの夢。

 それは、今はかなわない思いの残滓。

 自分の記憶が見せてくれる希望ゆめなのだろう。

 まどろむ少女の姿を照らしていく朝日の中、いつしか青年の影は溶けて消えていった。

 やがて直接顔に当たる強い光にまぶしさを覚えた彼女は、ゆっくりと目を覚ます。

 今日も始まるのだ、夢を追いながら日々の糧を得るための旅路が。

 そして、その道程にはともに歩む友がいた。

 彼女の近くで人ならざる巨体。

 巨大な身体を停止させ待機状態休んでいる、人に造られた意志を持つ巨人。

 彼が目的を果たした時、どうなるのだろうか?

 目を覚ますといつも湧き起こる不安。

 寝ている間に一人になってしまう恐怖。

 それらを振り払うように勢いよく起き上がった少女の腕には、表面が摩耗しゆがんだコンパクト状の物が握られていた。

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