第6話 もったいないは大事

 さてと、何にしようかな。作るものとか、まーったく考えてなかったのよね。でも一番初めだし、スープとかが無難かな。


 お腹がいっぱいになって、尚且つヘルシー。ってなると、ある程度具材を入れつつも野菜メインよねぇ。


 厨房の中を見渡すと、野菜の切れ端が目に入る。色鮮やかなその野菜たちは、おそらくその前の食事の際にでも使ったものの残りだろう。


「料理長、コレ使ってもいいですか?」

「奥様、それは切れ端でして奥様が口にするようなものではないです」

「どうせスープにするし、コレで十分だわ」


 私は勝手知ったるとばかりにまな板の上にその切れ端たちをのせ、順番にテキトーにみじん切りにしていく。

 そしてみじん切りにした野菜たちはそのまま寸胴鍋の中へ。


 見た目はキャベツとか人参っぽいから、まぁ大丈夫でしょう。

 でもこれだけだとダシが出ないのよね。それに腹持ちも良くないし。さすがに野菜だけのお昼は嫌だなぁ。


「何か、肉っぽいもの入れたいなぁ。何か余ってるものないかしら」


 さすがに肉の切れ端はこんなとこに出しっぱなしにはしてないわよね。いくらそんなに暑くはないからって、腐ると困るだろうし。


「ウインナーでしたら本日は使わないものがありますよ」


 そう言って冷蔵庫から出して来てくれる。冷蔵庫って言っても、電気があるわけではなくて中に魔石っていう魔法が込められた石が入っているのよね。


 便利なものみたいだけどこれが結構高価らしく、持っているのは貴族でもごくわずかって聞いたわ。

 さすがお金持ちよねー。これ実家うちにもあったのかな。


「こんなにいいものを使ってもいいのかしら」

「なんかミレイヌ様、たかってますよね」

「やっぱりそう思う? なんか私もそんな気がしてきたのよね」


 いくら自分のお昼ご飯だとは言っても、食材を強奪してる気分になるのよね。

 だって、明らかに使う用にとっておいたもののはずだし。


「明日は自分で食材買いに行こうかな」

「無難ですね」

「ごめんなさいね、料理長」

「ここにあるものは、全て奥様が使っても大丈夫なのですよ。そんなことをおっしゃらないで下さい」

「とは言ってもねぇ」


 あくまでココは彼らの職場であって、いくら妻になったからといって勝手をしていいわけではない。

 しかもご飯の献立なんかは、きっと前日から決めているはず。


 それがわからないほど私は子どもでもないし、申し訳なさしか立たないのよね。


「それよりも奥様は何を作られるのですか?」

「んと、スープょ」

「野菜クズのスープですか?」

「クズって言っても、煮込めばほぼ溶けてしまってなんでも同じだし、もったいないでしょ」


 貴族がもったいないとか、少し変かな。でもどうせただのスープなんだし、私が食べるものだから切れ端で十分なのよね。


 とは言っても、ダシと食べこたえのためにウインナーも刻んで入れていくんだけど。


 野菜クズは細かく刻めば煮込む手間も省けるからね。

 ウインナーは少しでも大きく思えるように、斜めに五等分にカットがいいかな。


 それらを全て鍋に入れ、浸るくらいの水を入れて私はふと止まった。

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