隣人 ニーチェの話

 ニーチェです。よろしくお願いいたします。

 ニーチェ、なんて名乗ると「なんで哲学者の名前?」と言われるんですが、本名がニーチェなんですよ。

 新しくさとると書いて「新智ニーチェ」って読むんです。すごいでしょ?


 まあ、それはおいておいて。

 この間ね、街を歩いていたら高校時代の友人と再会しました。

 友人に合うのは二年ぶりくらいで久しぶりー!なんて盛り上がりましてね。

 お互いに時間があるとのことで、近くのカフェに入ることになりました。

 私はコーヒーを、Оさんはカフェオレを注文して、待っている間近況報告をしていました。

 注文の品が運ばれてくると、Оさんはキョロキョロと周りを見渡して、声を落としてこんな話を始めました。



 実は、変な夢を見るんだ、と。



 夢の内容はね、実家の近くの道を歩いているの。

 時間?

 夕方になりかけぐらいと思う。

 年齢は……そう、小学生ぐらい。

 で、自宅に着いて玄関から中に入るんだけど、誰もいないんだよね。

 それに何だか薄暗くて。

 怖くなって、とにかく隠れなきゃって押入れとか机のしたとかに隠れるの。

 初めはそこで目が覚めたんだけど、二、三日してまた同じ夢を見るのよ。

 実家の近くの道、玄関から中に入る、隠れる。

 別に他の誰が出てくる訳じゃなくて、でも何だか誰かに追われてる気がして隠れるんだよね。

 で、また数日後に同じ夢を見る。

 あぁまたかと思っていたんだけど、最近夢が進んでね。

 ドキドキしながら隠れてるんだけど、何故か早く逃げなきゃ、今なら逃げれる!って思うわけ。

 で、こっそり急いで裏口に回って逃げるの。

 外に出ると眩しいくらいの夕焼けで辺りが真っ赤になってて、また怖くなって家の前の道路に飛び出すんだけど、目の前に真っ黒ででっかい影みたいなのがいるの。形はゴジラみたいな感じかな。そこで目が覚めるんだよね。


 何だと思う?と首を傾げながら訊ねてきた。

 夢占いなんて、興味がないんだけどスマホでささっと調べてみる。

 すると、自分自身の思いが夢に反映されるのは「魂の夢」で、眠っている間もその思いが頭から離れないために見る夢なんだそう。

 魂の夢で最も多いのは、日頃抱えているストレスが見せる夢で、うまく言葉で表現できない悩みを抱えているときは声が出なくなる夢を、八方ふさがりのときは迷路に迷う夢を見ることがあるらしい。


 とでてきた。


 だってよ、夢なんてそんなものだよねってОさんに言うと少し困った顔をしてこういった。


「この話をするとね、聞いた人の中には、同じような夢を見る人がいるの。それに、最後に黒い影に捕まると捕まった所を怪我をするみたい。ニーチェも気をつけてね」

 と。



 私はまだ黒い影には会っていません。






「夢で逢いましょう」

 三題噺「コーヒー」「魂」「再会」

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