怪談Night

羽入 満月

怪談芸人 ナッツの話

 ようこそ、怪談Nightへ!

 只今ご紹介に預かりました、ナッツの山田と申します。

 えー、普段はナッツというお笑いコンビを組んでまして、怪談芸人なんてのをやらしてもらってます。


 怪談ライブって最近はやってるんですよねぇ。

 今日来てくださった方たちの中で始めて怪談ライブ来たよって方〜。

 あー、結構いらっしゃいますね。

 ちょっと前に台風ができて、それの影響で蒸し暑くなってきているので、今日は怖い話でちょっとでも涼しくなって帰って下さいね。


 僕ね、怖い話が大好きで読んだり聞いたりしてるんですけど、それだけなんですよ。

 霊感ありますかー?とか、お祓いしてください!ってたまに言われるんですけど、全然できませんからね!先に言っときますよ。

 でも、こんな仕事してると怖い話の相談されたり、体験談を教えてもったりするんです。

 でね、この間こんな話を聞きまして。


 えー、お話をしてくれた人、仮にKさんとしましょうか。

 Kさんは、会社員の男性でアパートに一人暮らし。

 彼女は別れたばかりで、会社や友人たちとの飲み会を毎晩のようにしていたんですって。


 その中で仲良くなった人がいたんです。

 あ、女性かって僕も聞きましたよ。

 残念ながら男性です。


 彼とは好きなまんがとかアニメとかが一緒で盛りあがった。

 で、盛りあがりすぎて宅飲みをしようと約束をして連絡先を交換し、その日は解散。

 後日教えてもらった住所にコンビニでお酒とおつまみを買って遊びに行きました。


 今季のアニメはどうだ、とか、ネット小説のおすすめは〜なんて話をして、それから会社の愚痴なんかもちょっと話してーなんてしてたら、昔話になったんです。

 彼は結構な田舎の出身みたいで、お盆の先祖の墓参りに行くのに提灯に火を入れて持っていくんだーなんて話をしてくれましてね。

 都会育ちのKさんは、へーそんな事するんだ、なんて関心して聞いていたんです。


 すると、ふっと彼が声を落としてこんな事を言ったんです。


 おかわりさんって、知ってます?と。

 おかわりさん?なにそれ?と聞くと、彼は田舎でお盆の墓参りの時、『振り返ってはだめだよ。おかわりさんに連れて行かれるから』って言われて育ったんです、と。

 小さい頃から言われていて、当たり前に『おかわりさん』の存在を受け入れていたため、少し前に会社で墓参りの話の時に『おかわりさん』の話を出したら、話をしていた全員が『?』ってなって、『あ、これうちの地域だけか』と思ったんだって言うんです。


 でね、職場でそんな話をした後に田舎に帰る用事があって、彼は母親に聞いてみたんです。

『おかわりさんって母さんが作った話?』って。

 そしたら『あんたのばあさんもよく言ってたし、ここらじゃよく言われる言葉だよ』って言われてね。

『へー』と別にその話を深堀りすることもなく、話が終わると思ったいたのに、母親が『今日は気を付けなさいね』なんて言うんです。

 なんで?と聞いたら、『おかわりさんの名前を出したから、振り返えらないように』と注意されたそうです。

『まだ、時期じゃないし大丈夫だと思うけど』と。


 そんな話を始めて聞いた彼は、驚いて母親を問い詰めたそうです。


 おかわりさんは名前を呼ばれたら『来る』そうで、もし振り返ってしまったら『変わられて』しまうとの話があるとか。


 Kさんは、自分も名前を呼んでしまったから、振り返る事が恐ろしくなって、お酒もすっかり抜けてしまって、その日はソワソワしながら家路についたそうです。


 まぁ、何もなかったみたいなんですけどね。


 この話をした僕は振り返ることが出来なくなってしまいましたね。


 話を聞いたみなさんも背後に気をつけて、振り返る時は自己責任でお願いしますね?




「おかわりさん」

 三題噺「ナッツ」「台風」「先祖」

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