neirunwiqu

エリー.ファー

neirunwiqu

 ブラフでしかないのだよ。

 いいかい、バレないようにやりたまえ。

 理解が遅れていると、いつまでたっても結果は出来ないぞ。

 学びたまえ。

 自らを犠牲にしなければならぬのだよ。

 

 アヒルを殺して、僕も死ぬ。


 マグカップを割って、僕も死ぬ。


 人生を鼠色にしなければ、世界は分からないままだよ。


 地下芸人を間近で見たいのです。


 デスクトップを粉末状にして、夢の中に流します。


 幻を見た気になったが、現実だった。

 寂しいと思いながらも、僕の中にある世界が立ち上がっていくのを感じていた。

 定義が必要なのは分かるが、その定義が誰にとっても必要であると言い切るのは、一体、どこに存在する定義に依存しての結論なのだろうか。

 僕に分からない。

 ただ、少なくとも。

 杖がなければ、歩くことも、立つこともできない大人が多く存在しているといいうことは事実である。

 悲しみを言葉にして、物語へ変化させることによって、文化が紡がれていくのは、僕たちが信じていた世界の破片を集める作業に他ならない。

 何もかも、物語になって、何もかも、物語のような何かになっていく。質に意味はない。量にしか依存できない、客観的な視点。いずれ、僕たちも身に着けては捨ててを繰り返して、立派であるという言葉に酔いしれる。

 今、この瞬間もそうなのかもしれない。

 僕にとって、あなたにとって、世界にとって、神にとって。

 今日も、何事もなく動き続ける社会の中で、見失いかける時間の重点が最もらしく輝く瞬間を薄めている。

 明日は、きっとよくなるだろう。

 呪文のようにつぶやくことで、結果的に、今日という日の質の低さを証明している。

 望むべきか、声に出すべきか、心にとどめるべきか、誰かを求めるべきか。

 僕は、今から僕以外になる。

 成長なのか、退化なのかは分からない。

 しかし。

 一つの変化ではある。

 ページをめくることで生まれる風が、どこかで嵐に育っていく。

 蝶の羽ばたきよりも、新鮮で、価値があり、優雅で、知性に溢れた瞬間を切り取る。

 もう二度と帰らない旅に出る者たちの背中が余りにも哀れに見えてしまうから。

 僕は、黙って本を読む。

 そして。

 結局。

 僕も、旅に出る。

 誰かに陰口をたたかれる時には、僕は何もかも承知の上である。

 大人になってしまったのだと口から吐き出した意味を連ねて、僕を作り出してもらうことにする。

 愛しているんだ。

 愛されていたいんだ。

 もはや、呪いではないか、と口にしたが。

 誰も聞いていなかった。

 誰も聞く気がなかったと言っていい。

 そして。

 それが心地よかった。

 欲しかったコミュニティは所属するためではなく。

 参加しなくてもよいコミュニティを幾つ人生で抱えるかだったのだ。

 自らを照らす光よりも、遠くに見える小さな明かりの方が温かく見えてしまうのだ。

 魔法だろうか。

 いや、種のある奇術だ。

 記憶だろうか。

 いや、色のついた思い出だ。

 私だろうか。

 いや、私を内包する世界だ。

 もしも。もしも、この物語についてどこかで聞かれたら、こう答えてほしい。


 物語と呼ぶには不十分だ。

 詩と名乗らせるには品が足りない。

 しかし。

 物語のような詩であり、詩のような物語である、と表現することができる。




 ある日、地球は滅亡してしまった。

 真っ白になって、すべてを零とした。

 誰かが築き上げた文化などどこにもない。


 見えなくなってしまったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

neirunwiqu エリー.ファー @eri-far-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ