人生2週目兄妹

あめだま

プロローグ

「紗蘭ー!置いてくよー!!」

「待っててね香菜ちゃん!」

まだ涼しい夏の朝、私は急いで身支度を整えていた。

今日が終われば夏休み。

今年の夏休みは、いつもよりも楽しみだ。

なぜなら、中学2年生の夏休みがいちばん楽しいって、お兄ちゃんが言ってたから。

そのお兄ちゃん、輝琉は、3年前の水難事故で、この世を去ってしまった。


3年前の夏休み、2人で山奥の川に遊びに行ったとき、溺れかけた紗蘭を助けて流されてしまったのだ。

周辺に広がるのは森で、近くの人里からもけっこうな距離がある場所だったため、大人に助けを求めることも出来ず、溺れた時に水に浸かって使い物にならなくなってしまったスマホでは通報することもできず、溺れた時に足を怪我してしまった私はただ流されていく輝琉を見ていることしかできなかった。


まあ、これも昔の話だ。

中学生生活2度目の夏休み、存分に楽しまなくっちゃ。

「行ってきます!」

「もー、遅いよ!」

「ごめんごめん……ちょっと浮かれてて」

「えー……まあ、そうだよねー!明日から夏休みなんだし!」

「楽しみだね!」

「ね!紗蘭は、今年は予定あるの?」

「うーん……特にないなぁ」

「ここ数年ずっとそうだよねー……前はいつも家にいなくてお母さん困らせてたのにさ」

「はは……昔の話だよ」

「あ……ごめんね」

「ううん!いいんだよ!せっかくの夏休み、存分に楽しまなくっちゃね!」

そんなたわいもない話をしている時だった。

「そうだね!私はね、今年は……」

「香菜ちゃん危ない!」

トラックが突っ込んできた。

紗蘭は咄嗟に香菜を道の端のほうに押した。

そしてそのまま、

「紗蘭!?ねぇ、起きてよ紗蘭!紗蘭!!!

……嘘でしょ、?嘘って言ってよ……」




二度と目覚めることはなかった。

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