男女比の狂った未来へタイムリープしたら若返った〜16歳のパパと70歳の娘〜普通に生活してたらいつの間にか世の女性たちの希望の星になった件

いっちにぃ

プロローグ

2033年 7月9日


朝日が差し込む部屋の中、カレンダーを見てからその下に飾られた写真に私は話しかけた。写真の中には一人の男性が屈託なく笑う姿。


「私もとうとう20歳になったよ。10年前のあの日から色んなことがあったの…」


抑えようとしたが涙が溢れるのを止められない。


古賀 結月こが ゆづき 20歳 中小企業の末端社員

ある理由から新入社員からも馬鹿にされてアゴで使われている。

力仕事ばかり押し付けられサービス残業は当たり前で帰る頃には日付が回っている。

あまつさえ顔を合わすたびに暴言が飛んでくる。


「どうしてこうなっちゃったのかな?あの日から全部が悪い方向に回っちゃった…

ねぇ、どこに行っちゃったの…パパ…」


全ては10年前の7月9日から始まったのだ。

出勤までの僅かの間、過去を振り返った。



⭐︎



2023年 7月9日


今日は私の10歳の誕生日だ。幸運なことに今年は日曜日だった。

わくわくしながら飛び起きた私はパジャマのままダイニングへと駆けた。

そして、目的の人物を見つけると朝の挨拶も忘れて話しかけた。


「パパ!!私の誕生日プレゼントは!?」


エプロン姿で菜箸を持ったパパは私の方を振り向くと笑顔で言った。


「ゆっちゃん、おはよう。

よく眠れたみたいだね。心配しなくてもちゃんとあるよ。

ほら、顔を洗っておいで。朝食にしようか」



テーブルを見るとご飯とお味噌汁、焼き魚に卵焼きが置いてある。どれも湯気が出ておりちょうど今出来上がったところのようだ。


美味しそうではあるのだが、今日は私の誕生日。いつもと同じ朝食は絶対に嫌だった私は大声で言った。


「いつもと同じご飯なんて絶対イヤ!!

私、ナックが食べたい!買ってきて!」


パパは困った顔をしてから、ごめん。でももう作っちゃったし、、、お昼じゃダメかな?なんて言ってたけど私は今すぐじゃないとダメ!!と頑なに主張した。



今、目の前で困った顔で頬をかいてるのが私のパパ。

名前は片岡 和也かたおか かずや 35歳

私より2か月早く誕生日を迎えたパパは、四捨五入したら40歳だぁなんて笑いながらお酒を飲んでたっけ。



パパは年齢より断然若く見られる。いわゆる童顔というやつで見た目もかっこいい部類に入る。それになにより優しい。


流石にアイドルや俳優と比べるとアレだけど日曜参観や運動会などの行事に顔を出すと、友達じゃない子からも『あの人、ゆづきちゃんのお父さん?若いしかっこよくて羨ましいなぁ。それに比べて私の方は…』なんて言われることも多い。


家ではこんな風だけど、元来泣き虫で内弁慶の私は自分から積極的に友達を作るなんてことはできない。

だから、さっきの会話をキッカケにして友達になるなんてことも多い。

現に、今一番仲良しの2人はそれがキッカケだった。



仕方ないなぁと苦笑いしたパパはナゲットセットでいいの?と確認を取りながらエプロンを外していつもの薄手の長袖パーカーを羽織って袖を捲った。


夏なんだから夏らしい服着れば良いのに!と言ったこともある。だけど、『パパはおしゃれには疎くて…これは結婚前にママが買ってくれたやつだから多分おしゃれ!』という謎の返答が返ってきただけだった。

確かにパパの私服は驚くほど少ない。というかパパの私物自体が驚くほど少ないのだ。

家の中の物を見渡してもママのものと私のものでほぼ全てが占められている。



そんなパパはママ〜、ナック行くけど何がいい?と大きめの声で話しかけていた。


すると、ダイニングの扉が開いたかと思うと怒りながらママが出てきた。


「またゆっちゃんのワガママ!?いい加減にしなさい!

パパもゆっちゃん甘やかしすぎ!!」


怒ってるママを『まぁまぁ、今日はゆっちゃんの誕生日だから許してあげてよ』とパパが宥めていた。



ママは怒りっぽい。自分のことは棚に上げて怒るから余計にタチが悪い。

そして、あまり家事や子育てに関心がない。遊んでもらった記憶はない。幼稚園の頃、パパが仕事だからお迎えはママだったけど送るのはパパ。

普段の朝食、洗い物、お風呂掃除、ゴミ捨て。仕事が休みの日には私を遊びに連れて行ってくれるどころか、一週間分の掃除と昼食、夕食の準備も全部パパになる。



そんな家族だから必然的に私の家族はパパを中心に回ってる。



じゃあ行ってきます!と玄関を開けて出て行ったパパはそのまま帰ってこなかった…



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