放課後、駅のホームで怪談話を。

雫石わか

第1話「駅のホームで」


 今日は四時間授業だったためいつもより帰る時間が早かったが、友達はみんな部活があるため、私はひとりで駅のホームに向かった。電車が来るまでは、まだ三十分程時間があった。放課後のこの貴重な時間をなにもせずにひとりで過ごす、なんて少し虚しい気もするがこれはこれでいいかもしれない。

 そんなことを考えていたときだった。

「あの、隣いいですか?」

 ふっと右を向くと、私とは違う制服を着た、少し不思議な雰囲気をまとった女子高生が立っていた。

「あ、もちろんです。どうぞ」

 私は少しだけ横にずれる。その人は「ありがとう」と言って隣に座った。

「あの、なにか話をしませんか?」

「え、急ですね」

 こんなにいきなり距離を詰めてくるとは思っていなくて驚いたが、お互い高校生で年も近いし、これって普通の事なのかもと思った。

「じゃあなにか怖い話でもしましょうよ。ほら、今夏ですし。夏と言ったら怪談みたいなところあるじゃないですか」

「ああ、いいですね。じゃあどっちから話します?」

 なんだかとっても話しやすい。口調こそ敬語だが、話し方や態度はすっかり友人と話すときのようになってきていた。

「んー、まあ、ここは先に話を持ち出した私からっていうのが定番ですよね。なので私っから話します」

「じゃあお願いします。楽しみ」

「あ、ホラーとかいけるタイプ?」

「実際に見るのは好きじゃないけど、話を聞いたり読んだりするのは好きかな」

「同じく! じゃあ、始めるね」

 その子は少し声を潜めるようにして語り始めた。


「これは、私が小学生だったころの話なんだけど——」




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