王都落城の日
カイルも5歳になり、とうとうのらりくらりと交わしていた鷹狩りから逃げる嘘八百も尽きていた。
「オー可愛い可愛いカイルよ。今日こそは、ワシと鷹狩りに行ってもらうぞ」
「今日はちょっと、その」
渋るカイルに救いの手が差し伸べられるかのようにリーパーが間に割って入った。
「兄貴、少し良いか?」
「うむ。なんとそれは真か。仕方がない」
ファインとリーパーの話が終わる。
「ランダス、カイルを連れ鷹狩りに向かうのじゃ」
「御意」
こうして、最悪な1日が始まるのである。森へと鷹狩りに出た。カイルとランダス。
「違うと何度申せばわかるのですかな」
「こうです。ヨシヨシお前は良い子ですねぇ」
「ピーヒョロロロ」
「ほら、カイル皇子、やってみなさい」
「無理だよー怖いもん」
「はぁーこんなに可愛いのに何が怖いのだ。鷹とのコミュニケーションですぞ。伝令に色々と活躍するのです。魔物との戦いでも活躍しますからな。鷹の躾は、レインクラウズクリア王国に産まれたものなら当然ですぞ」
「ううううう」
「(こいつホントにレインクラウズクリア王国の皇子なの?アタシの使い方知らなさすぎじゃん。ホント失礼しちゃう。それに引き換え、こっちの叔父様はもう最高)」
「だからなんだいえばわかるのですかな。違うと申しておるでしょう」
「だって」
「言い訳は結構。態度で示しなされ」
「(あれっあの方角は確か王都の方。赤々としている。何かあったんじゃないかしら。私の仲間たちは無事かしら。って違う違う知らせないと)キッキッキッキッキッ」
「(この音は威嚇音。敵なのか。一体どこから。王都の方を見ている)馬鹿な!?」
「どうしたんだよランダス」
「いえ(王都が燃えている。状況がわからない今迂闊にカイル様を連れて戻るべきではない。ならばワシの取る道は)カイル皇子、鷹狩りは疲れましたな。かくれんぼしましょうか」
「マジで。良いのか。じゃあ、ランダスが鬼だぞ」
「はいはい(こうしてカイル様を森の中に隠せば様子を伺えるであろう)」
カイルが隠れて少しするとランダスの周りを兵士が囲んでいた。
「(この兵装は、オズマリア王国の者か。一体何が起こっているというのだ。でも良かった。今のワシは兵士とわかる服を着ていない。ただの老人と映るじゃろう)」
「ひっとらえろ。老人といえ。貴重な労働奴隷だ」
「(迂闊であった。すぐに捕えられようとは)」
「離せ離せーーー俺を誰だと思ってんだ」
「(カイル様が見つかってしもうたか。ここで王族を名乗れば殺されるやもしれん。ならワシのできることをせねば)ワシの息子ですじゃ。今日は仕事が非番だったもので、鷹狩りに来ていたのです」
「ほぅ、お前のような老人にこんな小さな子供が」
ランダスの言葉で状況を察したカイルが話を合わせる。
「父ちゃん、ごめん助けられなかった」
「良いのだ。それに年甲斐もなくハッスルしてできた子供じゃ」
「そうかそうか。お前とその子供、名は何という」
「(カイルという名が王族の名だと知られていら可能性があるな。ここは偽名を名乗るとしよう)ワシはルーカス、倅はルイスと言いますじゃ」
「そうかそうか。こんなに元気なジジイの子供ならこいつも労働奴隷として、さぞや使えるだろう。ひっとらえて、このジジイと一緒に労働収容施設に送るのだ」
「はっ」
「(なんとか隙を見つけてカイル様を逃さないといけませんなぁ)」
連行されていく2人であった。一方、その頃の王都。
「まさか、君だったなんてね。信じたくはなかった。でも思い返せば、王都までの裏道。兄貴が今日玉座にいるようにしてほしいなど。怪しい点は多数あった。君を愛するあまり、盲目になっていたようだね。ゴフッ」
「貴方の情報のおかげよ。その見返りに私の身体差し出してあげたんだからさ。お互いウィンウィンってやつよね。後は、鷹狩りに行っちゃった馬鹿皇子を仕留めて終わり。そこだけは私のいうとおりにしてくれないんだから困った元旦那よね」
「(そうだった。怪しいと感じた俺はせめて、カイルだけでもと、あいつのそばには1番信頼できるランダスもいる。なら俺がすべきことは一つだけだ)」
リーパーはストロベリーの背中から剣を思い切り突き立てた。
「あ、な、た、ま、だ、う、ご、け、た、の、ね」
リーパーは涙を溢しながらストロベリーの胸へと剣を突き立てる。その直後現れたオズモンド兵により、串刺しにされるリーパー。
「(兄貴、義姉さん、カイル、すまねぇ。俺がこの売国奴に情報を流しちまったせいで。謝っても許されねぇけど。カイル、どうか強く生きてくれ)」
「(お父様、ストロベリーはやりましたわ。褒めてください。うんと褒めてください。これで、私もホントの家族ですわよね)」
最後は殺し合った2人だがその手は自然と重なり合うようにして絶命していた。
「あちゃーストロベリー王女、死んじまったぜ。どうするよ」
「お前は新参の兵だったから知らなかったな。この女は、オズモンド様が農家の妾に産ませた認知もしていないガキだ。気にする必要はあるまい」
「オズモンド様って実の娘にも容赦ないんだな。俺ら兵士の待遇は最高なのに。お気の毒。ペッ」
玉座の間では、レインクラウズクリア王国の兵士団とオズマリア王国の近衛騎士団が対峙していたが次々と倒れていくレインクラウズクリア王国の兵士団。オズモンドもファインの前に現れて、一騎打ちとなる。
「オズモンド王よ。魔物蔓延る今、何故侵攻した」
「名ばかりの連合軍などいらぬからだ。命令系統もバラバラ。統一感もなし。そんなので魔物を駆逐できようか。否。ワシは悟ったのだ。今こそこの国を統一して、魔物と相対せば良いとな。安心せよ。お前の妻は、ワシの妾として、ワシの子を産ませてやるでな」
「オズモンドーーーーーーーー貴様ーーーーーーーー」
ザシュッと一刀両断されるファイン。
「(カイル、不甲斐ない父を許してくれ。イーリス、頼らない夫を許してくれ。レインクラウズクリア王国の国民たちよ。侵略者に一太刀も浴びせられぬ無能な王を許してくれ)」
「入って来ないで」
「ほほぅ。やはり美しいのぅイーリス元王妃」
「ファインはどうしたのです?」
「そこで転がっている肉の塊のことか」
「あぁ、なんでこんなことに。許さない許さない許さない」
「起こった顔もキュートですなぁ。して、どうされます?」
「舌を噛んで死にますわ」
「そうですか。それは残念ですなぁ。王妃ともあろう方が国民を見捨てて自分は死ぬとこれが王妃の姿みたいですぞ国民の皆様。おっとまだ魔法で放送はしていませんでしたな。録音はしていますが」
「この外道」
「それに、王妃がワシに跪き、忠誠を誓わないのでしたら、貴方の愛する国民たちを1人づつ、貴方の目の前で殺すだけですが。それがお望みなのですかなぁ」
「そんなことをすれば国民たちは貴方に反旗を翻しますわ」
「結構結構。その時には皆、身も心も奴隷と成り果てて、抗う力などありやしませんよ」
「貴方さえ、ワシに跪きさえすれば良いのです。そうすれば国民たちも助かるのですぞ」
「この外道、好きになさい」
「結構結構、では今すぐ裸になれ」
「なんですって?」
「聞こえなかったか?お前の愛する旦那の目の前でお前を凌辱してやるから脱げと言ったのだ」
「そんな辱めに屈しろと」
「あぁ、嫌ならお前の愛する国民が1人また1人とこの世から消えるだけだ」
「くっ」
一糸纏わぬ姿となるイーリス。
「それでは、イーリスよ。跪き、ワシのイチモツを舐めながら宣誓せよ」
イーリスには、断ることは、できなかった。跪きこの憎い男オズモンドのイチモツを口に含むしかなかった。
「チュパチュパ。私、イーリスはオズモンド王様に身も心も捧げることを誓います」
「続きはどうした」
「チュパチュパ。だから、どうかこの国の民をお導きください」
「そんなに頼まれては仕方ないな」
この映像は国民たちに流されていた。国民たちは、イーリスを売国奴だと罵った。それもそうだ。自分たちの愛するファインの死体の側で、侵略者であるオズモンドの下半身を口に含んで服従の言葉を誓ったのだ。これが売国奴に映らないはずがない。イーリスはレインクラウズクリア王国の国民たちから王を裏切り、侵略者に屈した売国奴だとレッテルを貼られる。そして、これがオズモンドの狙いだった。イーリスの心を徹底的に折り、いずれ本心から服従の言葉を誓わせるための。
「滾ってきた。ホラ、きちんといえた御褒美じゃ」
「あん(嘘でしょ。これお腹を圧迫してる)」
「ハッハッハ。このイチモツに堕ちなかった女など居らんわ。必ずお前も屈服させてやるからな。そらそら」
「あっああん(ヤバイヤバイ、そんな速度で振られたら)」
「フン、気をやってしもうたか。まぁ良いわ。ファインよ。貴様の嫁、実に良い締まりであったぞ。フフフハーッハッハッハッ」
レインクラウズクリア王国の王都の陥落と共に王妃イーリスを得たオズモンドは、次なる戦場へと向かうのであった。
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