第19話 神保町ダンジョン(4)
「ダンジョンヒーロー、助けて」
「わかった。任せろ」
”ご指名、入りました”
”おお、出番だ”
”いけえええええ!!”
俺は続けざまに指弾を打つ。
「ヒーローフィンガーブレットォォォ!!!」
「ヒーローフィンガーブレットォォォ!!!」
「ヒーローフィンガーブレットォォォ!!!」
「ヒーローフィンガーブレットォォォ!!!」
「ヒーローフィンガーブレットォォォ!!!」
5体。
10体。
20体。
それだけ削ったところで、『らんらん探検隊』は形勢を挽回する。
後は彼女たちに任せて大丈夫だろう――。
”えぐ”
”マシンガン乱射したみたいw”
”スケルトンに同情するわ”
”強すぎね?”
”↑アーカイブ見ろ。これが平常運転だ”
”まあ、リザードマン相手に無双してたから、スケルトンくらい何体いても相手にならんだろ”
――『らんらん探検隊』がスケルトンを全滅させたのと同時に、虎夫率いる『十二騎』もスケルトンを倒しきった。
とりあえずは乗り切った。
後は、スケルトンリーダーだ。
”おお、スケルトン全滅”
”以前、配信見たことあるけど、そんときより速い”
”ダンジョンヒーローひとりだったら、もっと速かった”
”だな”
”つうか、スケルトンリーダー間に合わなかったwww”
”どういうこと?”
”普通なら、スケルトンとの乱戦中に現れる”
”スケルトンリーダーが現れると、一気に戦いが厳しくなる”
”その前に倒しきったったってこと?”
”YES”
”ヒーローすごない?”
”凄いんだよ!”
そして、通常のスケルトンよりひと回り大きいスケルトンリーダーが現れた。
”満を持して登場(※なお、手遅れな模様)”
”トイレ行ってたのかな?”
”修学旅行でトイレ行ってる間に置いてかれたの思い出した……”
”陰キャあるあるwww”
”コメ欄のせいで、ネタキャラにしか思えないw”
”普通に強いんだけどな、スケルトンリーダー”
「リーダーは俺たちだけで倒す。手出しするな」
”手出しするな(キリッ)”
”フラグか?”
”さすがに『十二騎』のメンバーなら負けないだろ”
”さっきの戦い、普通に強かったな”
『十二騎』の五人は輪になってスケルトンリーダーを取り囲む。
正面の一人が引きつけ、残りの四人が攻撃を仕掛ける作戦だ。
「ひでお君、さっきはありがと」
「ひでおではない。俺はダンジョンヒーローだ」
「そうね。ダンジョンヒーローさん。助かったよ」
「気にするな。ヒーローがピンチを救うのは当然のことだ」
”らんらん、ええ子たちや”
”ヒーローハーレム構築”
”中の人があれだから、ハーレムにはならんだろ”
”ひでおだったら、めっちゃテンパりそうだけど”
”ダンジョンヒーロー、対応がイケメン過ぎる”
”どうしてこれほどに人格が変わるのか”
”変身したからだよ!”
”俺も変身ブレスレット欲しい”
”なにそれ?”
”これ見てこい。URL:――”
「それより、彼らの戦いを見守ろう」
”さて、虎夫のお手並み拝見”
”口だけじゃないといんだけどな”
”ひでお配信でガチバトルが見られるとは思ってなかった”
スケルトンリーダーが剣を振り下ろす。
正面の相手はそれを華麗に躱し。
それと同時に。
四人が斬りかかる。
二撃は避けられた。
だが、残りの二撃がスケルトンリーダーを削る。
そして。
五人はくるりと反時計回りに回転。
今度は左にいた一人がスケルトンリーダーの正面に立った。
上手い!
順番に入れ替わることで、攻撃を一人に集中させないのか。
”強くね?”
”普通に強い”
”連携カッコイイじゃん”
”ちょっと見直した”
”普通の配信だったら、めちゃくちゃ盛り上がるシーン”
”普通の配信じゃないからなあ”
『十二騎』は順調に戦闘を進めていき――ガシャン。
虎夫の攻撃がスケルトンリーダーの核を真っ二つに斬り裂き、トドメを刺した。
全員かすり傷程度のダメージで、完勝と言っていいだろう。
”おおお”
”倒した”
”虎夫、やるやん”
”安定した戦い方だったな”
「どうだ、これがトップ探索者の戦い方だ」
”虎夫くん、会心のドヤ顔”
”ドヤ顔する相手間違ってますよ”
”その男、リザードマン10体瞬殺したよ”
”まあ、ドヤりたい気持ちは分かる”
”いい戦い振りだったからな”
そう言われても、俺ですらスケルトンリーダーくらいはワンパンなんだから、その言葉はトップ探索者に対して失礼だと思う。
とそのとき――。
――ズドォォォン。
「なんだ?」
ダンジョンが揺れる。
濃密な殺気。
これは――。
「イレギュラーだ」
◇◆◇◆◇◆◇
【後書き】
次回――『神保町ダンジョン(5)』
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