道はつながっている
今日は、久しぶりに東京に行く新幹線に乗っている。
流れゆく景色を見ながら、見たことのある景色だと安心している。
だが、そうではない景色もちらほらあった。
二か月ほど前、日本が大きく揺れた。
東日本大震災である。
日本は混乱し、物流は寸断された。
あの絶望的な日を迎え、これからどうなるのだろうと思っていた。
だんだんとライフラインが復旧していくが、物流が回復しないことが、私の心の隅に暗い影を落としていた。
震災が起きてからは、ほぼ仕事と買い物しかできず、近所をぐるぐると回ることしかできなかった。
津波もなく、家も無事だったので幸運だったと言えるが、旅行が好きだった私の心には、もやもやとたまるものが出てきていた。
そんな中、訪れた知らせが新幹線の開通だった。
東北新幹線も、壊滅的な打撃を受けた。
ニュースの写真で見て、これはしばらく復旧しなさそうだと絶望的な気持ちになっていた。
だが、わずか四十九日で新幹線は全線開通となった。
私たちの状況も、ライフラインが復旧し、家が無事だった私は、物流以外はわりと元の生活に戻りつつあったので、私は仕事が休みの日にさっそく新幹線の切符をとった。
行動を起こしたのは、ほとんど無意識だった。
それからは、その日を今か今かと楽しみに過ごしていた。
少し気もそぞろになっていたことは否めないだろう。
そして、今日を迎えた。
特に目的はない。計画もしていない。行き当たりばったりだ。
気分転換を兼ねて、東京観光をしようと思う。
東京の方も、計画停電などで大変そうだが、交通が止まっているわけではないし、気をつけていけば何とかなるだろう。
何もかもが変わってしまったが、新幹線から見える車窓の景色は、昔見た面影を残してくれていた。
それだけで、涙が出そうだった。
何もかも変わったが、変わらないものもあった。
この新幹線に乗って、感じることができた。
また、私たちの生活は取り戻せると。
実際、今確実に取り戻しつつある。
そうでない場所も、また築くことができるはずだ。
胸が熱くなり、視界がわずかに潤んだ。
ありがとう、新幹線。
あなたが今までつないでくれていたこと、そして今つないでくれていること、私はずっと忘れない。
私は、ゆったりと背もたれに預け、目を閉じた。
かすかな新幹線の走行音と揺れを感じる。
新幹線はこれからも、力強くレールを駆け抜けていくのだ。
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