魔女の放浪記

黒川宮音

魔女の楽園

第1話  国内における魔女の生態

現代社会において魔女はおとぎ話の人物ではない。


実際に存在しており生きている。


しかし、その存在はまだ多くの謎に包まれていた。


アジアの島国「日本」


日本においても魔女が存在しているとされている。



2020年 初春。


日本政府は魔女に関する情報を国民に公開し続けると発表した。


並びに魔女に関する条例なども整備され、国内にいるのかもわからない魔女に対して


万全の準備を整えている。


おとぎ話によると魔女は古くから生き続け不老不死だということ、我々人間と見た目の区別がつかないetc


多くの説が唱えられてはいるが....


その殆どが真実かどうかもわからない。


なにせ魔女の存在がはっきりしていないから。


魔女が大人しく捕獲されれば真相の解明につながるのに.....


政府関係者の多くはそう思っていた。



2020年 某月。


国内で初のが確認された。


その魔女は政府の研究施設に送られ、魔女の生態について解明する研究材料となる。


人体実験のようにも見えるがこれは違う、なのだから


何ら問題はない。


真っ白な空間が広がる施設。


白い空間の中には一人の若い女性が椅子に座っている。


ここは政府の研究施設である「《こがさ》」


小笠と呼ばれているのはここの研究所の創設時に貢献した人物の名が小笠だったからだそう。


安着なネーミングだ。


ともかく、日本で初めて確認された魔女だ。


色々調べることもあるがまずは.....


「君の名前は?」


研究員の一人が彼女にマイクを通して問いかける。


この施設ではあらゆる行動が常に監視、映像と音声として記録されるようになっている。


これも魔女の特異性を鑑みた結果だろう。


彼女が小笠に来てからというもの多くの研究員が体調不良を引き起こした。


「…………」


彼女からの返答はない。


3日間まるっきりこの状態である。


こちらから話しかけても沈黙のまま何も話さない。


これでは埒が明かない。


そう判断した研究員は彼女がいる空間に自白剤を気化したものを送り込んだ。


自白剤ならばこちらの問に答えるはずだと....


「もう一度聞こう。君の名前は?」


すると彼女はゆっくりと口を開いた。


「外道ですね.....」


彼女の口から聞こえたのは名前ではなく卑劣の言葉だった。


彼女は続けた。


「わざわざ捕まってあげたのに、実験材料としか見ていないんですね.....」


研究員達は息を呑んだ。


自分たちがやろうとしていることは人体実験そのものだからだ。


は人間とは違う.....


それが常識になっている。


だからこそ、この研究は正しい行動であると信じているのだろう。


「これ、外してもらってもいいですか?」


そう言って手の鎖をちらつかせた。


「いやぁ.....こちらとしても安全面の問題もあるので

外すというわけには.....」


万が一の場合の保険だ。


最も、手錠が有効かどうかは定かではないが...


とにかく、魔女は危険な存在とするのがこの世界の常識である。


次の瞬間。


彼女の周りに濃い霧が現れた。


研究員たちは何が起こったのか分からずパニックになっていた。


「換気機能をフル稼働させろ!!!」

「この霧を今すぐ排泄するんだ!」


換気機能は最大運転で稼働し続けている。


けれど一向に霧は晴れない。


「霧が薄くなってきました!」


研究員の一人が強化ガラス越しに指を向ける。


「「!!!」」


そこにはさっきまでいたはずの魔女はおらず、椅子の上に手錠が置かれているだけだった。


「くそっ!してやられた!」


その後、施設内をくまなく捜索したが彼女の姿はどこにもなかった。


その出来事は朝のニュースで大々的に報道されることとなった。


このニュースをきっかけに国民全体に魔女の存在が認知される事となった。


捕獲された魔女の行方は未だに不明。


しかし、今この瞬間にも街の行き交う人混みに魔女が紛れているのかもしれない...










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