禁断の通知
長事 理
禁断の通知
普通の一日だと思っていた。
太一は新しいスマートフォンを手に入れたばかりで、さまざまなアプリをインストールして楽しんでいた。その中で、一つ奇妙なアプリが目に留まった。名前は「真実の囁き」。
アイコンは古代の文様のようなもので、何となく気になってインストールしてみた。起動すると、アプリは「選んだ人々のみが、真実を知ることができる」と表示された。
それから数日、何も変わらない日常が続いた。ある日、太一のスマートフォンに通知が来た。
「真実の囁きからのメッセージ: それは覗き始めている…」
不気味に思ったが、考えすぎだと思い、その通知を無視した。しかし、その後の通知はより奇妙になり、内容もエスカレートしていった。
「真実の囁き:彼は近づいてきている…」
「真実の囁き:あなたの夢の中を歩く者…」
「真実の囁き:ヨグ・ソトホートの目が、あなたを見つめている…」
夜、眠る時も不安になり、悪夢を見るようになった。
夢の中で巨大な邪神ヨグ・ソトホートが彼の前に立ちはだかり、彼の存在そのものが理性を侵食していくのを感じる。
とうとう太一は、このアプリをアンインストールしようとした。しかし、アプリは「アンインストール不可」と表示されて消えない。慌てた太一は、スマートフォンを工場初期化しようとしたが、スマートフォン自体が応答しない。
夜中、部屋の窓ガラスが震えるような低い音が聞こえてきた。恐怖に駆られた太一は、その音の方向へ目を向けた。
窓の外には、星空を背景に、膨大な触手とともに浮かぶヨグ・ソトホートの姿が見えた。
スマートフォンが振動し、最後の通知が表示された。
「真実の囁き:歓迎する、新たなしもべよ」
太一の叫び声が闇の中に吸い込まれていった。
残されたのは静寂に包まれる闇…。
(了)
禁断の通知 長事 理 @itchidepon
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