朝1番に福と富と寿を起こして

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「千寿子！おはよう！！！」

先生のうるさすぎる声で今日も意識を醒ます。

まだ薄暗い部屋の中を今日も確認し掛け布団をゆっくりと被った。

「起きろ！！朝だぞ！！」

被った掛け布団を今日も思いっきり剥ぎ取られ、10月の早朝のひんやりとした空気が私の身体に張り付いてきた。

「まだ眠いから・・・。」

「昨日も遅くまで起きてたんだろ！？

早く寝ろ、毎日！！」

誰かさんのことを考えてしまいなかなか寝付けない夜だった。

思い返せば、去年の誕生日の翌日も、一昨年の誕生日の翌日も寝付けない夜だったかもしれない。

「老人と一緒にしないでよ・・・。」

先生から剥ぎ取られた布団をもう1度掛けようと手を伸ばすと、先生がまた布団を掴み阻止してきた。

「俺に朝飯も食べさせろよ、千寿子。」

「あのくらいのご飯なら誰でも作れるから自分で作ってよ。

勝手に食材使っていいから。」

「いつも俺の金で買ってる食材だろ、高いスーパーの。」

「たしかに・・・。」

「自分でも作れるけど誰かに作って貰った朝飯が食いたい。」

そう言われ、先生の方を見る。

薄暗い部屋の中、微かな朝の光りの中で先生は私のことを真っ直ぐと見下ろしている。

私の身体なんて一切視界に入れていないような顔で、私の顔を真っ直ぐと。

そんな先生の顔から視線を逸らし、私は言った。

「早く彼女とか作りなよ。

それで彼女にああいうご飯を作って貰えばいいじゃん。

ここで食べたいなら1階部分をいつでも貸すし。」

「彼女があんな飯を作るわけねーだろ。」

「なんで？」

「俺の為に気合いを入れた飯になるに決まってるだろ。」

「それなら文句を言って簡単なご飯を作って貰えばいいじゃん。」

「彼女にそんなこと言うわけねーだろ。」

それを聞き、私は静かに目を閉じ、口は開いた。

「老人の介護とかガキには荷が重いから今日で最後にしたい。

私はガキだから朝はもっと遅くまで寝てたいし。」

パジャマは着ていたけれど、今日も朝から完璧な顔面と髪型になっていた先生の姿を思い浮かべながら言った。

そしたら、先生は少しだけ無言になった。

「老人ではねーだろ。

それに俺は家族に介護なんてさせない為に金を稼いで老人ホームに入る老人になるんだよ。」