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その日の夜、23時。

私の部屋の隣、お父さんとお母さんの寝室だった部屋で先生が今日も寝ている。

私が23歳の年にバッタリと再会し、それからまた毎日のように会うような生活になった。




隣の部屋からは物音1つ聞こえない。

繁忙期は遅くなることもあるけれど、そうでなければ先生は22時には就寝している。




そして早朝から起きていて、本当に老人のような生活を送っている先生。




昨日は私の誕生日だからか少しだけ遅くまで缶ビールを一緒に飲んでくれた。

先生と初めてお酒を一緒に飲んだ。




25歳になったからかもしれない。

私はもう本物のガキではなくなったからかもしれない。




“本物の老人になっても千寿子の飯が食いたいんだけど。”




“俺は朝1番が大好きなんだよ。

だから千寿子がまたここに住んでて嬉しい。”




口が悪いはずの先生から出てきたそんな言葉をベッドの中で何度も何度も思い出す。




私が隣の部屋に寝ていても、夜に1度もこの部屋の引き戸を開けることはない先生からの言葉を。




彼女はいないと言っている先生からの言葉を。




「私はもうガキじゃない・・・。」




先生に聞かれたら嫌なので、掛け布団の中で小さく呟いた。




そしたら、見えた。




掛け布団の中にはキャミソールワンピのネグリジェを身に付けている私の身体が。




遮光カーテンではないカーテンから入る薄暗い光りでは色までは分からないけれど、私は赤いキャミソールワンピのネグリジェを着ている。




そんな姿でベッドの中で寝ている自分に小さく笑った。




「本物の老人になったから性欲も皆無になったのかな・・・。」




昔は“毎日のように彼女とやってる”と言っていたあの人は老人になってしまったらしい。

彼女も作らず22時には就寝し5時半には起床する。




そして私のことを叩き起こしては“朝飯も作れ”と言ってくる。




こんな格好で寝ている私の姿を明るいところで見てもあの人は普通だった。




きっとあの人が老人になってしまったのだと思う。

私は着実に大人の女になっているはずだから、あの人が老人になってしまったのだと思う。




だから私がガキだからではないと思う。




毎晩のように隣の部屋で寝ているあの人から女として見られないのは、私がガキだからではないと思う。

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