第80話 畑作り?
『それで、エルフさんたちは何を作るおつもりだったの?』
もはや異世界の植物に夢中で忘れてそうなので聞いてみると
『あっ⋯⋯そ、そうでしたね。私たちは、あまり大掛かりなものや目立つものは作れなかったので、葉物や根菜を作っていたのですが』
そうか、隠れて暮らしていたから⋯⋯
『うむ。じゃが、これからは好きな物を作れるのじゃ』
〖だね~。色んなの作れるよ~〗
そうね。天界樹様と主神様のおっしゃる通り、目立つ野菜だって、背の高い野菜だって作れるわよね。
『そうですね。キャロも美味しいのですが、たまにマンドラゴラになってしまって、娘たちが苦手になってしまって⋯⋯』
『貴重な栄養源だったのですけど⋯⋯』
『『だってぇ』』
あらあらまあまあ、ご夫妻揃って困ってらしたのね。娘さんたちも悪いとは思ってるようだけど⋯⋯
『マンドラゴラって、かわいいものではないのかしら?』
だって映像で見た聖域のマンドラゴラさんたちは⋯⋯
『かわいいわよね?』
『『『『えええぇっ!?』』』』
びくぅっ
『え?え?かわいくないのかしら?』
めちゃくちゃ『正気!?』って目を向けられてないかしら?
『レイ⋯⋯あれもの?特別じゃ』
『そうなの?』
私も欲しかったんだけど⋯
〖あれはね?愛し子が「かわいくなぁれ」って魔力を注いじゃった結果だね~。本物は~えっと、あ、あったあった〗
主神様が途中からぶつぶつ言い出したと思ったら、なんだか空間から、ぱっと取り出して見せてくれたのは
〖これだよ~〗
『キシャーッ!!』
『『きゃーっ!!』』
『『マンドラゴラっ!!』』
『あ、あらあらまあまあ、これが?』
細面で、ムンクの叫びのような、血色の悪い人参が短い足を組んだような⋯⋯お世辞にも
『かわいいとは言い難いわね⋯⋯』
これは、欲しくないわぁ
『レ、レイさん、よく平気ですね?』ぷるぷる
『え?あらあらまあまあ?』
エルフさんたち、いつの間にそんな遠くに?
『レイには状態異常耐性があるからの』
〖ほぼ無効に近い強力なやつね~。近々、無効になったりして~。あはは~〗
あらあらまあまあ?なんだか主神様たちが妙なことを仰ってるわね?
『状態異常って何かしら??』
『レイ、そなたマンドラゴラの声を聞いてなんとも思わなかったじゃろ?』
『え?そうね?ずいぶんうるさいわね~くらいかしら?』
あとは、顔が可愛くないわ~くらいよね?
〖普通はね~?マンドラゴラが抜いた時に出る声を聞くと、失神したり、下手したら死んじゃうんだよ~。一種の精神攻撃みたいなもんだよね~。今出してる声も攻撃してるんだよ~〗
『あらあらまあまあ、そうなの?』
ずいぶんと怖いのね。
『魔物の中にはの?そういった、精神的や、毒、呪いなどと言う攻撃をしてくる者がおるんじゃ。まあ、魔物だけとは限らんがの』
〖レイさんにはそのほとんどが効かないってことだね~〗
『あらあらまあまあ、それは、嬉しいわね』
なんて便利な能力なのかしら!
『たしかに便利じゃがのぉ』ふぅ⋯
〖そうなんだよね~〗はぁ⋯
あらあらまあまあ?なんだかまた雲行きが?
『こういうところもじゃな⋯』
〖そうなんだよね~小さい子でも知ってるはずのことを知らないっていうのは、まずいよね~〗
『あらあらまあまあ、それは確かに⋯』
うっかり、これ何かしら?って手を出したりしたら、他の方にも迷惑かけちゃうわね。
でも、知らないものは仕方ないのだから
『百科事典とか、草花辞典とかないのかしら?絵本とか?』
子供向けのでもいいから
『レイさん、あることはありますが、この世界、本はとても貴重なのです。大きな都市の図書館や、身分が高い家にはあったりしますが』
『一般市民で持っている者はまずいないでしょう』
『あらあらまあまあ、そうなのね⋯』
エルフ夫妻にまた気の毒そうな目を向けられてしまったわ。でも、本がそんなに貴重なんて、この辺りは前の世界は恵まれてたのね
〖まあ、本なら天界にもあるから、エルフさんたちと一緒に勉強してよ~〗
『あらあらまあまあ?主神様、よろしいの?』
『『私たちまで!?』』
主神様、なんてことない感じで仰ってるけど、助かるわ。
〖いいよ~。ただし、司書さんが『いいよ~』っていう本だけね~〗
『あらあらまあまあ?それはいわゆる「禁書」なんてものもあったりするのかしら?』
わくわくしちゃうわね。
〖ん~本気でまずいのは僕が管理してるから大丈夫なんだけど~〗
あら、残念⋯⋯
〖レイさんの場合、何をどう発想転換して、何かやらかさないか心配だからね~。薬草の本とか無難なものを選んでもらうように伝えとくね~〗
『あらあらまあまあ⋯⋯』
何気に酷くないかしら?
『主神様の配慮は当然じゃの』
『『『『うんうん』』』』
あら、皆さんも酷いわ。
〖酷くないと思うよ~。レイさんは自重してね~あはは〗
『はい⋯⋯』
なんか、釈然としないわ⋯⋯
『ささ、とにかく畑を始めようかの』
〖そうだね~〗
そうよね。それじゃあ
『まずは⋯⋯』
しゃもじで
〖『ちょ、ちょっと待ったぁ!!』〗
『あらあらまあまあ?』
なんで止めるのかしら?
『まずは、エルフたちにこの世界では、本当はどうやるのか見せてもらった方が良いのではないかの?のぉ?主神様』
〖そ、そうだよね。何事も基本は大事だよ~。ね?エルフさんたち〗
『『え、ええ、もちろんですっ』』
『『『『うんうん』』』』
いつの間にか招集された他のエルフさんたちまで、なんでそんな首がもげそうな勢で首を縦に振ってるのかしら?
エルフ姉妹ちゃんたちだけは
『『⋯⋯?』』
不思議そうに大人たちを見てるわね。やっぱり不思議よね?
『で、では、神様と精霊様に感謝と祈りを捧げながら土を耕します』
『こちらの土は柔らかく良い土なので、直接クワで耕して大丈夫そうです』
あ、あら?あの鍬はどこから取り出したのかしら?
インベントリのような機能を持ったバッグ?マジックバッグっていうのね。それはカモフラージュにも便利ね。
あら?エルフさんが鍬を入れる度に少し光ってるかしら?
え?魔力を少し流しながら耕してる?それで土や妖精さんが喜んでるのね?
私もお手伝いしたいのだけど、でも、私は鍬を持ってないから、この当たりを少し
『耕運機~♪』
グイングイングイン
うんうん。いい感じで縦回転出来てるんじゃないかしら?下の方までほっくり返せてるわよね?
あ、あら?なぜエルフさんたち固まってるのかしら?今日は巨大しゃもじは出さなかったのに?
あら、ちょっと石とか出てきたわね。エルフさんたちも取り除いてるわね。根を張りにくくなるから取り除かないとね。
あら、ちびっこゴーレムさんたち手伝ってくれるの?あら?食べてる?石よね?美味しいのかしら?
あら?ゴーレムさんが光ってるわね?
え?主神様、なぜ子どものように転がって笑ってるのかしら?天界樹様、そんな目を見開いていたら砂が入りますよ?
あ、エルフさんたち、庭師さんから腐葉土を頂いて土に混ぜ始めたわね。相変わらず庭師さんたち優秀ね。どこからともなく現れるわね。
『あらあらまあまあ、こちらにも、ありがとう』
私の方にも来てくれたわね。じゃあ、これも魔法でさっくりさっくり、混ぜ込んで。
あら、もうぴょこっと雑草が?まだ種を巻いてもいないのに?ずいぶん気が早いわね。
『『『ぴゅう~ぃ♪』』』
あらあらまあまあ?ちびっこゴーレムさんたち、口笛なんかいつの間に?あら、小鳥さんを呼んだのね。まあ♪雑草を食べてくれるのね?ありがたいわ。
あ、あら?鳥さん、ちょっと成長してないかしら?
『『『『⋯⋯』』』』
エルフさんたち、目が点ね?そうこうしている間に畝もたてれたのだけど、何を育てたら良いかしら?
あ、こっちにエルフさんが⋯あっ、つまづいたら危ないわよ
『あらあらまあまあ、これが噂のキャロの種ね?』
『そうです。万が一、マンドラゴラになってしまったら、必ず声をかけてくださいね。抜き方をお教えしますので』
『分かりましたわ』
ふむふむ。撒き方は、パラパラとまいて、薄く土を被せて、ちょっと押さえて、お水をたっぷりね。うんうん。さっきの水の妖精さんたちが大活躍ね。クジラさんの潮吹きがシャワーみたいね。
なら、私も⋯⋯あら、ちびっこゴーレムさんたちも手伝ってくれるのね。土をかぶせてくれてるわ。それなら!水まきは、あら水の妖精さんが手伝ってくれるの?それじゃあ、せっかくだから魔力も込めて
『スプリンクラー♪』
うんうん。いい感じね。うふふ。さっき主神様に見せていただいた子は不健康そうな顔色に顔つきだったから、聖域の子たちみたいに、丸々と健康でかわいい子がいいわね~♪
〖あ、やっぱり、やらかしちゃったね~あはは~〗
『そうじゃのぉ⋯分かっておったけれどのぉ』
主神様たち、分かってた?
『あ、あの、主神様⋯成長速度がおかしいですよね?』
『何でもう収穫できる大きさに?』
『な、なあ、あのキャロ、動いてないか?』
『動いてる⋯⋯しかも、丸々として色艶もいいな』
『あれってマンドラゴラ?』
『天界樹様⋯⋯マンドラゴラが自分で土から出てきてるのですか?こんなことって⋯』
『姉様!あれマンドラゴラ?かわいいよ!!』
『うん。かわいくて逆に食べられないかも?』
『そうかも!』
エルフさんたちは、あまりの光景にアワアワしている。娘さん達は可愛さに震えてるけど
〖あはは~レイさんだから仕方ないね~〗
『そうじゃのぉ。レイだしのぉ⋯ん?一匹増えたのぉ』
ぽこぽこっ うんとこどっこいしょ
〖一匹どころじゃないみたいだね~あはは~〗
『⋯⋯輪になって踊っておるのぉ』
『『かわいい~♪』』
『あらあらまあまあ?おかしいわね?』
なぜこうなったのかしら?ちなみに、エルフさんたちの畑は
ぴょこんぴょこん
既に芽が出てるのだが、
『『⋯⋯(きづいて)』』さらさら
誰に気づかれることもなく、風に葉を泳がせていた。
おかしいな?エルフさんたちを見てたはずなのに⋯
☆。.:*・゜☆。.:*・゜
お読み頂きありがとうございます。遅くなってすみません。皆さんの応援、感想などなど、力になります!ありがとうございます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます