ある日のバレンタイン日記 番外編

『ふんふんふ~ん♪』

『レイ、これはこんな感じでいいのか?』

『ええ。さすが料理長ね。美しいわ』


ここは天界の厨房。今日もレイさんと料理長が何かに腕を奮っている。いつもと少し違うのは


『レイ、ずいぶんとご機嫌じゃの?』

『あらあらまあまあ、天界樹様。そんな事ないわ。いつも通りよ?うふふ』

『···絶対違うじゃろ。どう見ても浮かれておるのじゃ』


そう。レイさん、ものすごく浮かれてるのです。


『仕方ねぇよ。俺だって冷静じゃいられねぇぜ』ふっふっふ

『料理長まで如何したのじゃ?なにか悪いものでも食したのかえ?』

『違ぇよ』

料理長まで浮かれてることに、かなり怪訝なお顔の天界樹様。


『あ、天界樹様の分もあるのよ』にこにこ


『何じゃ?』こてん


『これよ♪はいどうぞ』すっ

レイさんが赤いリボンでラッピングされた包を渡す。リボンの下にはカードが。そこには


『これは幼子の字かの?見たことの無い文字じゃが』

拙いながら頑張って書いたと分かる文字が


『それね、私たちの世界の字で「てんかいじゅのせいさまへ」って書いてあるのよ』にこにこ


『俺のはこれだぜ!』ニカッ

料理長の大っきな手にもカードが。もちろん「りょうりちょうさんへ」と書いてある。


『なんとっ!ではこれは愛し子からの贈り物かえ?』ぱああっ


『そうよ。皆さんにあるのよ。開けてみてくださいな』にこにこ


『いいのかの?嬉しいのぉ』しゅる かさかさ

包みを丁寧に開ける天界樹様


『んん~これは、なんと甘い香りなのじゃ』すぅ~

幸せそうな顔で香りを吸い込んでます。


『うふふ。そうでしょう?チョコレートよ。甘くて美味しいわよ』

『チョコレートかえ?ツヤツヤで美しいのぉ。ところで、この形は何かえ?』

『ん~多分、にゃんこの肉球とわんちゃんの尻尾かしら?』

『なるほどの、さすがのもふもふ好きじゃの』くすくす


愛し子のチョコは、にゃんこの肉球型のミルクチョコに、こんもりとピンクや白のチョコが肉球っぽく盛ってある。もうひとつは、わんちゃんのしっぽのような形の白いチョコにミルクチョコで「もふもふ」と書いてある。


『あとは、皆さんでって源さんや、クマの編みぐるみの私から色んな社類のチョコが届いたわよ。それからなんと』

『カカオが届いたんだ!直ぐにチョコレートに出来るように加工してくれたのと』

『種よ。天界樹様、後で育ててもらっていいかしら?バナナとコーヒーもあったのよ』うふふ

バナナはカカオを発酵させるのに必要らしいく、一緒に送ってくれたのだ。コーヒーは南国つながりらしい。まあ、とにかく料理長がご機嫌!


『構わぬよ。喜んで作ろう』

もちろん断る理由などない!

『ありがとう』

『助かるぜ!』


『それではさっきから楽しそうに作っているのは?』


『お返しにチョコレートのショートケーキやチーズケーキ、チョコパイをね。あと、チョコを使ったシュークリームよ。皆さんの分は申し訳ないのだけど少しね。材料が足りなくて』

『構わぬよ。カカオを育てればまた食べられるのじゃろ?』

『ええ。お約束するわ』

『ふふ。では、さっそく育てねばの』

天界樹様もご機嫌。ああ、もちろん主神様たちにも


〖ああ!愛し子がぼくのために?うれしいよ~ぉ、ありがとう~!〗だばー

感動の涙が滝のよう⋯


〖私のためよ!主神のはついでよ!〗

〖ひどいっ!?〗

〖お母様、愛し子は皆に等しくくれましたのよ〗にっこり

〖ご、ごめんなさい〗

魔神様、ほどほどにしないとね?


〖おお!俺にもあるのか!可愛いいな〗

〖こんなにたくさん大変でしたでしょうに。いい子ですね〗

もちろん、武神様や工芸神様たちの分も!


『『『御姫様、私たちにまでっ』』』

『きちちっ』

お針子さんたちと天蚕ちゃんの分まで!きっとお包みとかのお礼だね。


『あ、そういえば、皆さんカードの中はなんて書いてあったのかしら?』


〖〖〖え?〗〗〗


『お名前の書いてあったカード、開けるようになってたでしょう?メッセージ書いてなかったかしら?ちなみに、私は「おばあちゃん、だいしゅき!はやくあいたいな!」よ。ああ、私も早く会いたいわ』きゅっ

レイさん、カードをきゅっと抱きしめています。


〖〖〖そうなの!?〗〗〗ばばっ


みんな慌てて確認。でも


〖〖〖読めない⋯〗〗〗

日本語だから⋯


〖俺のは絵だった〗

『俺もです。でも、文字もありますぜ』

〖あ、ほんとだ〗

武神様と料理長には絵が書いてあったみたいです。


〖ん~みんなに異世界文字解読魔法をあげるね〗

〖〖ありがとう〗〗

『おお、読めたぞ!』

〖なんて書いてあったんだ?〗


絵が書いてあった二人は

『あ、この絵、力こぶだったのか』

〖俺のも腕の絵だったんだな。文字は⋯〗

『まっちょ?』

〖むきむき?〗


〖〖〖ぶふっ〗〗〗

〖正解じゃないですか〗

『中々やるのぉ』

『あらあらまあまあ、あの子ったら⋯』

絵を書いたらスペースがなくなったらしい。


〖ぼくはね~「だぁいすき♡」って書いてあるよ~〗

〖私もよ!〗

〖ハートは私が一番大きいですよ!〗

〖僕だよ!〗

〖私よ!〗

親子でハートの大きさを比べだした⋯


〖⋯私には同じに見えますが?〗

『妾にも同じに見えるのぉ』

『俺もだ』

『あらあらまあまあ、私が一番よ♪』


〖私は、「おべんとばこありがと!」ですね。いくらでも作りますよ〗


〖あ、くまさんのとか作ってたもんね〗

〖〖たしかに〗〗

〖気に入って貰えてよかったな〗

『俺も中身作ったのに、まっちょ⋯』

『まあまあ、料理長は自慢の筋肉を書いてもらえて良かったの』

『そうだな。天界樹のにはなんて書いてあったんだ?』

『妾かの?妾は⋯んん?』


『なんだ?』

〖〖〖どうしたの?〗〗〗

みんなが覗き込むと⋯


〖『なんじゃこりゃ?』〗

〖なんでしょう?〗


〖「おんなのてきのてんにょしゃま」〗

〖「にげて~」?〗

〖「あ~れ~」?〗

主神様家族が仲良く読み上げた


『⋯⋯⋯』

天界樹様、目が点⋯


『あらあらまあまあ、あの子ったら⋯』

レイさんだけは意味がわかったようです。



少し前、聖域では⋯

『なんじゃそりゃ⋯』

「おばあちゃん、よいではにゃいか~なっちゃら、にげちぇって」

『悪代官⋯。これが引鉄にならなきゃいいな⋯』


愛し子なりの愛でした。


チョコは皆さん、食べるか保存するか散々迷った挙句、魔神様が複製魔法で複製して一つは保存。残りは観劇の涙を流しながら美味しく頂きましたとさ。


☆。.:*・゜☆。.:*・゜

お読みいただきありがとうございます。バレンタイン間に合った!

あとは『転生初日に~』これは、間に合わないかもな~。

終わったら確定申告やらなきゃ⋯しくしく


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