第77話 呼び方
魔神様に水魔法の水族館と動物園状態になった経緯を必死に釈明するレイさんと、フォローするエルフ姉妹。
『ほら、いくらしっかりしているとはいえ、エルフちゃんたちはまだ子供でしょう?イメージしにくいものを闇雲に試しても中々上手くいかないし、楽しくないでしょ?だから、親しみのあるものならイメージしやすいし、楽しいだろうから、上達も早いかと思ってね?』
〖······〗じとー
胸元で腕を組んで、ずお~っとそびえ立ってるように見えるんだけど?そんな目で見ないで~
『あ、あの私がもう少し楽しかったらいいなって思っちゃったから』
『私も確かにって思ってしまって』
エルフちゃんたち、ありがとう、助けてくれて。でも大丈夫よ、こういう役目は大人の役目なのよ。
『あのね、エルフちゃんたちは本来であれば、まだ野山を···じゃないわね、森の中を駆けずり回って遊び回りたい年頃のはずよ。子供は遊びから多くを学ぶの。遊ぶことが仕事なのよ。それをしないで修行だけというのは大切な学びの時間を奪ってしまうことになるわ。だからせめて楽しんで···』
すっ
『······』
魔神様が手で私を静止したわ。なんだ、その顔は
〖分かってるわ。というより、よく気づいてくれたわ。ありがとう〗
『魔神様』
ちょっと落ち込んだような、でも優しいお顔ね
〖本来なら私が気付かなきゃいけなかった。そうよね、武神や鍛冶神たちが面倒を見ている獣人の子たちも、遊ぶように鍛錬しているものね〗
〖ふっ。ありゃあ、まじで遊んでるんだぞ?鍛錬だって気づいてないんだよ。だから遠慮がないしな〗
〖そうかもね〗
武神様と鍛冶神様が中心となって、地上で人間やエルフたちに酷い目にあわされていた獣人の子たちを保護しているのよね。その子たちはよく元気に武神様たちに飛びかかって遊んでいるんだけど、ものすごい身体能力なのよ。ジャンプ力だったり、走る速さだったり、アクロバティックな動きと言い、種族に寄るところが強いらしいけど、とにかくみんなものすごく楽しそうなのよね。
〖まあ、とにかく。今回は怒らないわよ。聖域でも役立ちそうだしね。楽しみながらできる方法、探しながらやりましょう〗にこ
『『レイさんっ』』
『よ、良かったわ』
ぎゅう
思わず抱きしめあっちゃったわ。あら?もしかして
『ふむ。三人の距離が少し縮んだかの?』
『だな。喋り方がまだ他人行儀すぎるがな』
『あらあらまあまあ』
やっぱり?嬉しいわ。ピンチに一緒に立ち向かったことが役立ってくれたのかしら?
『『喋り方···』』
『あらあらまあまあ···』
俯いて考え込んじゃったわ。
『そんなに難しく考え込まないでいいのよ。だんだん慣れていけばいいわ』
突然変えろと言われたって無理よね。
『『喋り方···距離···』』
あらあらまあまあ?聞いてない?私の腰の辺りに抱きついたまま、二人で相談して···るのかしら?仲良く同じことをぼそっと呟いているんだけど
『『···呼び方』』
あらあらまあまあ?何だかつぶやきがハッキリしたような?
『『レイ姉様?』』きゅるん
ズキューンっ!
『はうっ!?』
〖〖あらまぁ?〗〗
〖おや?〗
『何やら撃ち抜かれたようじゃの?』
『だな』
神様たちが気づいた。神様たちは聖域の愛し子に撃ち抜かれ済みだから···
な、何かしら?この破壊力は?腰に抱きついたまま上目遣いで
『ね、ねぇさま?』はうはう
小動物のような目で見つめられてる?あ、あら?なんでかしら?無いはずの耳としっぽまで見えるような?
『『はい。レイ姉様』』
『そうお呼びしたらダメですか?』きゅる
『呼んじゃダメ?』きゅるん
『は、はうっ』どきどき
あ、ああ、耳としっぽがへにょっとした?
『だだだ、ダメだなんてそんなことはないわよっ』はわはわ
〖ほぉぉ~あんなにアワアワするレイが見れるとは〗
〖アイツらやるなぁ〗にやにや
工芸神様と武神様が感心していると、
『あなた、うちの娘たちって』
『あんな技を持っていたのか···』
呆れ半分に感心しているお二人。ご両親も知らなかったらしい···
『『じゃあ、レイ姉様』』にこっ
『えへへ。姉様が出来た』にこにこ
『えへへ。姉様が増えた』にこにこ
『はうっ』ばっくばっく
モフ耳としっぽがっふさふさぶんぶんして見える!?
『レイ姉様、魔法練習しましょう』にこ
『レイ姉様、次はなんの魔法する?』にこ
『え?そ、そうね?どどど、どうしたらいいかしら?ま、魔神様?』はわわわっ
どうしたらいいのかしら?この年でかわいい妹が二人も?私には孫もいるのに?
たまらず魔神様に助けを求めると
〖ぷはっ!あはははっ!いつも周りを振り回してるレイがこんなに慌てるなんてっ〗
見物していた魔神様が笑いだした。
〖くすくす。たしかに。貴重ですね〗
〖ふふふ。レイさんでも困ることあるんだね~〗
『ひどいわっ親子で笑うなんて!』
魔神様が笑えば、ほかの人も笑うよね。
『まあまあ、良かったではないか、かわいい妹が2人もできたんじゃぞ』ふふふ
『良かったな。美人三姉妹で冒険できんじゃねぇか?』にやにや
『天界樹様に料理長までっ』
美人三姉妹、いい響きだけど
『『美人三姉妹···』』ふへへ
『あらら、締まらない顔しちゃって』
『そんなに姉が欲しかったのか?』
エルフ夫婦も娘たちの緩んだ姿を見て複雑そう
〖三姉妹?まあ、たしかに見た目はそうかもしれんが、中身は婆さんと孫ほど離れてるだろ?無理ないか?〗
ピクッ
『あ、バカ武神』
〖なんということを言うんですか〗
〖あ?だって本当のことだろ?〗
ピキっ
『俺、知らねぇ』ずり
〖こっちこないで下さい〗ざりっ
後退りをし、武神様から距離を取ろうとする工芸神様と龍様
そして周りはとっくに···
〖バカね、武神〗
〖エルフちゃんたち、危ないからこっちおいで~〗
〖はやくはやく〗
『『は、はい』』タタタっ
避難済み···
〖なんだよ、訳わかんねぇな〗ぼりぼり
『あらあらまあまあ···分からないなら、教えてあげますわ』ギラン
〖あ?レイ?〗
『ふふふ···武神様、女性の年齢はね?···自分で言うのはいいけど』じゃり
〖けど?〗
『人には言われたくないのよーっ!』しゅばっ
〖なんじゃそりゃあああっ〗ばっ!
ずがーんっ!!
〖わあ~すごいね~レイさんの飛び蹴りガードしたよ~〗
〖いやいや、受け止めた腕から煙みたいの出てるけど?〗
〖それより衝撃で武神の足元クレーターみたいになってますよ〗
主神様親子、冷静に分析
『誰が婆さんですかーっ』ぐいんっしゅばっ
〖自分で『おばあちゃん』って言ってんだからいいだろが!〗
ガイーンッ
〖今度は空中回し蹴りですね〗
『武神の腕硬ぇからな。蹴りの反動利用して飛び上がったな』
〖工芸神様に龍!感心してないで止めてたも!妾の庭がぁ〗さめざめ
『あ~あ、ありゃあ止める方も命懸けじゃねぇか?』
料理長に一票
『だから、それがダメだと言っているのよーっ!デリカシーが無いわね!』ドンッ!
〖馬鹿野郎!魔法まで使うんじゃねぇ!〗
『私は『野郎』じゃないわーっ』ドンドンドンっ
『『わあ~』』
『水魔法だよ、お姉ちゃん』
『ええ。何だか水が回転してるわね』
『ギャーっまた妾の庭がーっ』う~ん ふら~
『『天界樹様っお気を確かに!』』がしっ
『よくやったエルフたち』ふぅ~
天界樹様、気絶しちゃいました。
〖主神、可哀想だから〗ぱちんっ
〖うん。シールド張ったよ。ぼく、体調戻ってて良かった〗ぽわん
〖まったく、困ったものですね。私も張ります。気休め程度ですけど〗ふわ
〖やれやれ、私も手伝いましょう〗ほわ
神様四人がかりのシールドって···
〖早く終わらないかしら〗
〖水魔法の練習が裏目に出ちゃったね~〗
〖やたら上達してますものね〗
〖仕方ないですね〗
『そこ治さないとモテないわよ!』
ドカンっ
〖余計なお世話だ!〗
ガインっ
〖終わらなそうだね~〗
〖そうね〗
〖〖〖〖はぁぁ〗〗〗〗
レイさんの取り扱い、要注意
☆。.:*・゜☆。.:*・゜
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