第36話 眠る精霊

 と、言うわけでやって参りました。天界樹様のお庭。


『『うわあああっ』』

『すご~い』きらきら

『きれ~い』きらきら

 そう。天界樹様のお庭は、何時でも美しい花が咲き誇っているし、木々も立派な枝に、青々とした葉。隅々まで手入れが行き届いた美しいお庭なのよ。

『これは⋯っ』

『あなた、目眩をおこしそうですわ』くら

 あらら、大人のエルフさんには分かるのね。そう、このお庭は綺麗なだけじゃなくて、地上にあっても貴重なものや、天界にしかないものもあって、その最たるものが⋯


『さあ、着いたぞえ?』

 さあああっ


『『⋯⋯』』

『『⋯⋯っ』』


 お庭の中央、風が引き抜ける少し開けた場所にそびえる


『これが天界樹じゃ』

大きな大きな美しい姿の天界樹。私も初めて見た時、あまりに圧倒的な存在感というか、神秘的なオーラというのかしら?なんとも言えない雰囲気に言葉を失ったけど


『ん?どうしたのかえ?』

『あらあらまあまあ?』

『こいつら、固まってる?』ツンっ

料理長が突っついてみたけど、全く反応がないわね。


『おや、口と目が全開のまま固まってますね。もしもし?息をしてらっしゃいますか?』コンコン

バートさんも確認してるけど、なんだか人体から出たとは思えない音がしたわね。


『ハッ!も、申し訳ございません。つい、見惚れてしまいました』

『私もです』

『『⋯』』ぽかーん

娘さんはまだ立ち直れないみたいね。

森に生きるエルフさん達にとって、やっぱり特別なのかしらね。


『さあ、精霊は今、この洞の中で休んでおるのじゃ』

『あっ精霊さんっ』

お姉ちゃんの方が走ってきたわね。

『しぃー』

天界樹様が唇に指を当てて落ち着かせて

『静かにの。まだ眠っておる故』

『は、はい。すみません』

洞をそっと覗くと、精霊さんが丸くなって眠っている


『あっ、良かった⋯息してる』ぽろぽろ

『うん、うん。良かった』ぽろぽろ

かすかに上下する胸を見て安心したのか、泣き出してしまった姉妹


『天界樹様、精霊が、小さくなってしまった気がするのですが』

『はい。もう少し大きかったと』

心配そうに尋ねるご両親


〖うん。かなり削られちゃったからね〗

〖仕方なかったとはいえ強引に引き離したからな〗

代わりに答えたのは主神様と鍛冶神様。


〖犠牲になった精霊たちの血で書かれた魔法陣にね、括り付けられてたのを引き離してね、できた隙間を剣で断ち切ったんだよ〗

〖俺たちが着いた時には大分力を吸い取られていてな。助け出すだけでやっとだった。すまない〗

〖ごめんね〗

事情を説明し、真摯に頭を下げる神様たちに


『と、とんでもないっ』

『助けていただけただけでも幸いでしたっ』

『犠牲になった精霊たちもいたのですから』

『その子たちを思うとやりきれませんが⋯』

『助けていただいてありがとうございました』

そう。助かっただけでも幸運だったと、頭を下げるご両親。


『そうじゃの。この洞の中でもう少し休ませてやれば、やがて目覚めるじゃろ』

『本当ですか?』

『よろしくお願いします』

『うむ。任されよう』

天界樹の精様に任せれば大丈夫よね


『さあ、では場を移そうかの。あちらにもう集まっているようじゃの』くすくす


『あらあらまあまあ、楽しみね~』

今度こそ、もふもふもふもふ♪


☆。.:*・゜☆。.:*・゜

お読みいただきありがとうございます。フォロー、感想、応援などありがとうございます。

『小さな小さな花うさぎ~』『転生初日に~』もお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る