輪廻少女
ふんわり塩風味
第1話
そして私は目を覚ました。これで四度目だ。
現状を少しでも多く把握しようと、そのまま空中に停滞して辺りを見渡す。
砲撃を受けて爆破された山は燃えて、大きな火事を起こしている。
あちこちに壊された飛行艇や戦車の残骸が散らばり、回収されていない亡骸が散乱している。
無数の黒い煙が燃えた森から立ち上がり、空を染める勢いで拡がっていく。
敵軍はもう近くにいない。破壊するだけ破壊し、殺すだけ殺して撤退した後だ。
私は配置されていた場所から離れていた。あのときの攻撃で吹き飛ばされてしまったのだ。
現状を把握した私はハッとして宙を飛翔し、慌てて自分が最後にいた場所まで戻った。
この戦域は敗北した。しかし、みんなは生き残っているかもしれない。早く合流しなければ!
最後に戦闘した場所まで戻って周囲を見回す。私に気がつけば合図をしてくれるはずだ。
そのとき、崖で倒れている少女を見つけた。
彼女を中心に、水風船が破裂したように大量の血液が拡がっている。
それを見て私は瞳を見開いて息を飲み込んだ。それは私の同級生であり、部隊の一人だ。
私は降下して彼女の傍らに下り立った。
私が近付いても身動き一つしない。それ以前に、絶命しているのは一目瞭然だった。
いつも綺麗に三つ編みにしていた黒の髪は、焦げて半分以下の長さしか残っていない。さらには血で赤黒く染められ、今ではそれさえも乾いてボロボロだ。
「ロルナレン……。ごめん……なさい……。ごめんなさい!」
私はその体を抱き上げた。アスリートのように嫋やかだった体は、今は物のように固い。
ロルナレンの顔に水滴が滴り落ちて、自分が泣いているのだと始めて気付いた。
涙を拭って顔を上げたとき、腕を飛ばされた挙句、岩山に激突して血を撒き散らしたのだと、一目で分かる亡骸が目に入った。彼女も私の同級生のミーナだ。
「ミーナ!」
私はロルナレンの体をその場にそっと横たえると、慌ててミーナのところへ向かった。
ミーナの体を抱き上げると、彼女の体も冷たくて固く、表情豊かだった彼女はもう笑うことも怒ることもない。薄く目を開けて光のない瞳で虚空を眺めている。そのミーナを見ると、また悲しみが込み上げてきて涙が溢れてきた。だが、泣いてなんていられない。
なによりもまずは、ちゃんと埋葬してあげたい。
ミーナをロルナレンの元に連れて行くときに、立ったままで無数の銃弾で撃ち抜かれた少女の姿が目に入った。彼女もちょっと物事を斜に構える考え方をした同級生、ソシリアだ。
あの、ちょっと自分の主観の強い論弁も二度と聞けないと思うと、胸に穴が開いたようだ。私は涙を止められずにソシリアの亡骸を抱き上げると、二人の下へ連れて行った。
三人の亡骸を並べて寝かせると、改めて罪悪感が込み上げてくる。
どうして私は生き返ってしまうのだろう……。
「ごめんなさい……。ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
私だけ生き返って……。生きていて……。一緒に死ねなくて……。ごめんなさい……。
言葉は掠れて嗚咽へと変わっていく。涙は止まらず、それでも謝ることしかできない。
この悲劇は、もう二週間前のあの時から決まっていたのかもしれない。
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