白姫と黒獅子〜神様に外に出されたらそこは荒廃した地球でした〜
あに
第1話 外と中
「はーい!選ばれし勇者よ!」
「いや勇者じゃねーし」
「ノリ悪いねぇー」
真っ白な部屋にいるが、隣の部屋にモニターがたくさん並んでいるゲーミングデスクが見える。
「いや、冷めた目で見られる快感に目覚めるかも!」
「しらねぇよ!この豚!」
「ほぉぉ!罵られるのもまた快感!」
この男は何がしたいんだ?
「私は神である」
「なら私は…何でもいいけどこなのここ?」
私はかってに動き回りそこら辺を探る。
「あーダメダメ!そこはダメだって!そっちもダメ!」
「あー、やらしい本でもあるんでしょ?」
「今は動画の時代ですわ」
「ならあのパソコンに!」
「はぁ、ストップ」
「な、体が動かない」
私の体が動かなくなってしまった。
「いまならしたい放題だぁー、けど紳士の私はしません」
何なのよこいつ?ダサい格好にダサい髪型、太っちょな身体、キモオタ?
「うーん、定期的に外に出て行ってもらってるんですが、今回選ばれたのは貴女です。一つだけ願いを叶えてあげましょう」
「は?とりあえず喋りたいからこれ解いてくんない?」
「はぁ、ほい、これでいいでしょう」
「はぁ、んで?外に出るってどゆこと?」
「それは貴女が外で調べればいいことですね」
この豚何も言わないつもりだな!
「おい!家に返せよ!拉致監禁だぞ?」
「家に帰っても忘れられてるから無理ですぞ」
「は?何言ってんだ?」
「私は神だって言ってるでしょ?」
は?いま十七歳の私は死んだのか?忘れられてるから戻せない?どう言うことだ?
「よーし、よく聞くぜよ。これから貴女は外に出てもらいます。そこは生きるのに困難なところです。だから一つだけ願いを叶えてあげましょう!」
一つだけ願いを叶える?外が生きるのに困難なのに?
「二つとかには?」
「ならないぜよ」
「その喋り方やめろ!」
なんでも一つか………食料大事だけどそれも何だかなぁ。いやでもありか?
「バカの割に考えるのだな?」
「バカは余計だ!てかこの状況で考えるも何もないだろ?」
「そうだな。前のやつは女にモテるようにしてやったし、その前のやつは魔法を使えるようにしてやった」
「魔法?どんな?」
「ファイヤーボールって火の玉が出せるようにしてやったよ」
なんでもありなのか?んー。
「何でも出せるリュックとかは?」
「何でも出せるリュック!?それは想定してなかったな」
デブが焦っている。
「何でもだぞ?わかってるのか?」
「わ、わ、わかってる!だが、これはいいのか??」
困れ困れ!こっちはそのうちに色々見ておくか、
「なんだこれ、街ごと見れるじゃねーか」
モニターには街が所狭しと写ってる。
「おい!そこは触るな」
「触ってねーよ!」
「ほらできたぞ」
リュックができたらしいが、
「可愛くない」
黄色いリュックで中には何も入ってなさそうだ。
「うっせぇ!急遽作ったんだ!文句言うなし」
「何も入ってねーし!これリュックとして機能するのか?」
「無限に入るわ!ちょっとした遊び心だ」
「それはありがたいが!これ欲しいもん出てくるのか?」
汗をかいている豚神様は下手な口笛を吹いている。
「い、一応でてくるんだな!」
「一応ってなんだよ!」
「無限に入るようにしてあげたんだから少しは遠慮したら?」
「はぁ?私を拉致っておいて言う言葉がそれか?」
「ちゃんと出てくるって!少し遅れるかもだけど」
「テメェ、んじゃここで試すぞ!」
「おう、どんとこい!」
私は手を突っ込んでジャムパンを願うと光ってジャムパンが出てくる。
「おぉ、すげえ!」
「だろ?はぁ、良かった」
「良かったじゃねえよ」
「はい!さっさと外に行ってね」
「は?いや外って」
「バイバーイ」
押されて扉をくぐると、そこは本当に外だった。ジャムパンとリュックを持っただけの私にはわからないが。後ろを振り向くと扉はなくなっていた!
「なんじゃこりゃぁー」
荒れたアスファルトに遠くに見えるのは灰色のビル群、青い空に青い海。
ちょーレトロ?エモい?
いや違う、すげぇ荒れてんだけど?
“べべべべべべべ”
バイクの音がする。
「なんだ?また内側から来たのか?」
バイクに跨るのは褐色の肌にゴーグル、ボロボロのアロハシャツに短パンのいかにも怪しい第一村人。
「女の子じゃん!外に出てくるなんて元気いっぱいだね」
「そんなわけないだろ!見て分かるでしょ?混乱してるの!」
「あー、なにも説明なしな感じ?」
「そうよ!あの豚!」
何の説明もなしに外に出てどうすんのよ?外って何?
「あー、俺の名前は梅吉、君は?」
「
「あー、だから髪が白いんだね」
「これは色素が薄くて元からよ」
私は生まれつき髪が白い、色素が薄くて目も茶色い。こんな天気じゃ焼けちゃうじゃない!日焼け止め!
リュックから日焼け止めを取り出して塗りたくる。
「はぁ、肌が焼けちゃうじゃない!こんなところでどうすりゃいいのよ!」
ちょっと待てよ、第一村人が、
「待ちなさい」
逃げようとしてたわね。
「へい、なんでしょうか?」
「梅吉と言ったわね?ここはどこなの?」
「ここは黒ライオンの領地ですね」
「は?」
領地?黒ライオン?なんかのチーム?
「その黒ライオンってののリーダーに合わせなさいよ!」
どうにか人並みの生活をしないと。
「えぇー!連れてくの?」
「いいでしょ?こんな可愛い子が頼んでるんだから」
「自分で言う?」
「えぇ、自分で言うわよ!このジャムパンあげるから!」
ジャムパン一つで動くかしら?もう一つなんかだしたほうが、
「え!くれるんすか!ウヒョオ!パンってあのパンですよね!」
「パ、パンはパンよ」
梅吉はパンをとるとすぐに開けて食べ始める。
「う、う、うめぇ!」
「そんなに?」
「うめぇ」
涙を流すほど美味いらしい、ここはパンが珍しいみたいね。これは使えるわね。
「まだパンはあるわよ?連れて行く気になった?」
「まだくれるんすか?」
「連れてってくれればね」
「分かったっす!乗って下せい」
“べべべべべべべ”
荒れたアスファルトを二人乗りで走る。お尻がちょっと痛いけど我慢我慢。
「うわぁ」
開けた海岸沿いを走ると潮の香りがすごく心地よい。
あれ?空にあんなでかい鳥なんかいるの?
「お、ワイバーンだ」
ワイバーンって竜みたいなやつよね?
それよりこんなに外に出てるのは初めてかもしれない。それくらい親には大事にされてたからなぁ。
「もうすぐ着きやすぜ!」
「案外近かったのね」
“キキィィィ”
「ここでさぁ」
「は?ビルじゃない、それも汚い!」
「中に入ってくださいよ」
「入るわよ!」
梅吉と一緒に入って行く。
「止まれ」
ピタッと止まる梅吉にぶつかる。
「いたぁ」
梅吉を軽くこづく。
「何しに来た?」
「このお嬢さんが黒ライオン様に会いたいって」
「私が会いに来た白井雪です」
「ワシは黒ライオンと呼ばれとる」
よくみると本当に黒いライオンだ。机なんかは恥に寄せられていて大きな黒いライオンが横たわっている。
「人間の言葉が喋れるの?」
「あぁ、喋れるぞ?」
「すっごーい!あ、なんか食べる?」
「あっしはパンで!」
「よし!今日はパーティーだ!」
リュックからパンやら肉を出していく。
「ウヒョオ!パンだ!」
「黒ライオンは生肉食べれる?」
「く、食えるが」
「じゃぁ、食べよう!いただきます」
「いただきます」
「ワシは満腹じゃ」
「俺っちも食い過ぎたっす」
「私は大丈夫」
お菓子食べてたしねぇー!
それにしても外がこんなに未知で溢れてるなんて凄い!!
「でも私以外の人間はどうしたのかしら?」
「そこらでのたれ死んでるだろ?」
「なんか炎が出る人とかいたらしいよ」
「あ、そいつはやっつけたわ!」
梅吉が手にかけたらしい!こう見えて野蛮なのかしら?
「それよりもお主は何をしにここに来たのだ?」
黒ライオンが喋る。
「とりあえず偉い人?に会ってここがどう言うところか知りたいの!」
リュックから缶ジュースを出して梅吉にも渡してやる。
「ここは地球じゃ、もうだいぶ昔に人間はいなくなったがな」
「は?地球って私達が住んでたところじゃん?」
「それはダンジョン内だろ?安全なダンジョンを作り替えた冒険者が地球に似せて作った偽物だ」
は?私達が住んでたところはダンジョン?なに?ダンジョンって?
「はい!」
「はい、雪さん」
「ダンジョンってなんですか?」
「そこから?」
梅吉が仕方なく語ってくれる。
昔、地球はダンジョンが出来始めて冒険者がウジャウジャいたらしい。そして天変地異も起きてメチャクチャだった。そんな時ダンジョンを踏破した男がいた。その男は地球と同じようにダンジョンを作り替えた。
何ヶ所もダンジョンを踏破し地球になぞらえて地球に置き換えていった。
それが内側と呼ばれる世界。
外側は適応した動植物が闊歩するようになり、ダンジョンから溢れたモンスターの楽園になった。そして今に至る。
「なに?じゃぁ私は捨てられたの?」
「んー、何とも言えないかな?」
「うっうっ!こんな可愛い女子を捨てるなんて!許せない!」
「意外と元気」
モンスターの楽園なんでしょ?私なんていたら食われちゃうじゃない!
「ぐぅー、ぐぅー、ぐぅー」
「黒ライオンねてるし!」
「あっしも眠くなってきちゃいましたぜ」
私はリュックを前にからって黒ライオンに埋もれて眠る。
梅吉は雑魚寝だ。よく寝れるな。
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