第40話 青年と老人

ドッカーンッドゴーンッ!


『やめろ!やめんか!攻撃をやめろ!』


近づいてくる光

攻撃はそれから放たれているのかと思ったが、違った。

あれは攻撃魔法を跳ね返しているだけ。つまりは、自分たちの攻撃で自分たちが攻撃されているのだ。


『やめろー!』ドンっ

さっきから叫んでいるエルフな老人、コイツこそが今回の標的。

ドンっドンっ!

『何故だ!?何故、魔法が発動しない!?』


先程から魔法を使おうと杖を床に叩きつけるが、一向に魔法は発動しない。


『何故だ?この杖は神樹の枝より作られた杖!魔法が発動しないなど今までこんなことはなかったはずっ』

『ちょ、長老、どうにかしてくださいっ!』

『うるさいっ!』

どうにか出来るものならとうにやっている!くそっなぜだっ何が起こっている?もしや、杖に寿命があったのか!?

『ええいっお前の杖を貸せ!』

『あっ!長老何をなさいますっうわっ』ドン!

側近から杖を無理やり奪い、力任せに魔力を注ぐと


パシーンっ

『ああっ私の杖がっ』

『チっ使えんヤツだ!』バキッ


奪い取った杖は魔石が砕け散り、魔法は霧散した。それに腹を立て力任せに杖を叩きつけへし折った。


『ああっ何をするのですかっ』

『うるさいっ役立ずがっ』ドカッ

『ぐっ』

老人は側近の腹を蹴り飛ばし、壁に叩きつけた


『ヒッ!』

『『『⋯っ』』』

『大丈夫よ。あなた達は私が守るわ』きゅっ

『父上!おやめ下さいっ』


側近が倒れたその近くには、幼い子達を抱きしめる女性と、それを守るように立つ青年。


『黙れっ出来損ないがっ』

老人は吹き飛ばそうと魔力を練るが

『なぜだ?なぜ発動しないって』

一向に魔法は発動しない


『⋯まだお気づきではないのですか?ご自分に⋯いえ、この里の大半の者に何が起こったのか』


『何?何が起こったというのだっ』


『だから言ったではないですか、愚かな真似はおやめ下さいと⋯神様と神樹様の逆鱗に触れたのですよ』


『儂のどこが愚かだと言うのだ!我々は選ばれし至高の存在なのだぞ!神樹など我らのためにあるのだ!神とて同じこと!至高の存在である儂が使ってやって何がっ悪⋯っ』


凛とした態度で父親を見据える青年と、唾を飛ばしながら息子を罵る老人。そこへ⋯


『私はお前たちのような愚か者の為にあったことなど一度もないわ』


神樹の精様の怒りに満ちた低い声が響き渡る


〖⋯⋯〗

神様は黙って神樹の精様の横に立っていた


たちまち、青年を初め、何人かの者たちは、膝をつき頭を垂れる。名乗らずとも、目の前の方がどれだけ尊い方なのか気づいたのだ。だが⋯


『貴様っ儂に何をしたっ!この私にふざけた真似をしてどうなるか分かっているのかっ』

気づいていない愚か者は、このように暴言を吐き、あるものは弓を構え、杖を向ける


『愚かなことをっ武器を下ろせ!無礼者っ』

青年が堪らず声を張り上げるが、愚か者たちには届かない


『はぁ⋯これはダメね。もういいわよね?要らないわ。こんなヤツら。ね?⋯創世の神』


『なっ⋯!?』

『『『『『⋯っ』』』』』


再び響き渡る神樹の精様の声に、だれもが声を失った


☆。.:*・゜☆。.:*・゜


お読みいただきありがとうございます。今回癒し要素がなくてすみません。

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