ナンセンスキャスティング
是人
プロローグ
疫病神と舞台挨拶
少年には「疫病神」という役が与えられた。
神様の気紛れか、そんなふざけた配役により彼は幼少期よりとにかく不幸に見舞われる。
外に出る度にトラブルに巻き込まれる幼少期。
集金泥棒の容疑に真っ先にあげられ続けた小学生時代。
流行病のシーズンが近付くと誰よりも最初にかかり、病原体として学級閉鎖を次々と起こす疫病神そのものとなった中学生時代。
彼にその気はなくても、不幸があちらから歩いてくる始末だった。
しかし生まれてからずっとそんな具合なので、少年も諦めてその体質と付き合い、上手に生きていくことを子供ながら心に決める。
しかし、その決意は高校入学と共に消し去ることになった。
彼は立ち向かいたかったが、たった一人の少年が大きな災厄に敵うことはなく、圧倒的な力にひれ伏すほかなかったのだ。
ヒステリックな爆弾魔「テロリスト」。
人を人とも思わない冷酷非道な「人殺し」。
自分の死に場所を探し続ける「自殺霊」。
救済を願う者へ天啓を授ける「聖母」。
盲目的な人形好きの完璧主義者「人形師」。
血に飢えた寡黙な番犬「武士」。
以上、六名を前に「疫病神」は成すすべもなかった。
楽しみにしていた高校生活から足を踏み外し、あっという間に転落していく。
しかしここで負けるわけにはいかないと少年は再び立ち上がる。
春休み開け、入学早々に六つの災厄に襲われたこの悲惨な学園生活をなんとかしようと、少年は尽力することにした。
その様子はさながら悲劇を喜劇に変えるような、途方もない努力が必要なものだが、傍から見ればバカバカしいことこの上ないものだ。
そんな「疫病神」による七つの短い茶番劇を、一緒に見ていくとしよう。
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