第88話 ちぇけらっ!!

ーミナモ目線ー


 そして日は経ち、高校入学の日になった。


志木

「どんな人達がいるんだろうね?」


ミナモ

「意外と頭のネジが2、3本くらいはぶっ飛んだ人がいるかもね。女装したオッサンみたいな同級生とか、ゴリラ顔の人とか、伝説の人斬りとか」


志木

「……なんで最後だけ物騒なんだい?」


ミナモ

「まぁ、そうそう変な人はいないんじゃないかな?」


 そんな話をしながら教室のドアを開ける。


 そこには褌しか身につけていない、長身の男が仁王立ちしていた。


褌男

「おぉっ!! お前等が俺の同級生かっ!?」


『ガラァバタン』


 私は急いでドアを閉めた。


ミナモ

「……」


志木

「……」


ミナモ

「……あれ? 私疲れているのかな? 今、褌しか身につけていない男がいたように見えたけど……」


志木

「……ここ最近の師匠の修行が厳しかったからかな……。私もミナモと同じような幻覚を見てしまった……」


ミナモ

「学校って場所で褌だけの奴がいるワケないよね」


志木

「そうだね。そんな変態がいるワケがない。きっと私達の幻覚だ」


『ガラァ』


 私は再びドアを開ける。そこには褌姿の男がドアの前に立っていた。


褌男

「よっ!! よっ!! ちぇけらっ!! 俺のっ!! 名前はっ!! 『黄金 地色おうごん ちいろ』っ!! 俺の歌を聴いていろぉっ!! 全ての女は俺にメロメロォッ!! この度この学校の生徒になるよぉっ!! 俺はお前等のクラスメイトォッ!! 仲良くしなきゃ俺泣くけどぉっ!! 仲良くしない馬鹿はいないっ!! いえぇっ!!」


『ガラァバタン』


 私は再びドアを閉める。


 なんだ? あの幻覚は? 私は何故、幻覚を見ている? 新手の能力者か?


ミナモ

「……どうしよう……褌姿の男がラップを歌いながら自己紹介をしている幻覚が見える……」


志木

「……ミナモ……私もだよ……。これは師匠に言って修行のレベルを下げてもらうしかないようだ……。幻覚を見るほど疲れるのは良くないだろうからね……」


ミナモ

「……そうだね……。流石に日常生活で支障が出たらダメよね……。じゃあ、改めて開けて見ましょう」


『ガラァ』


褌男

「御用改めであるっ!! 『黄金組』であるっ!! 俺は『黄金組』局長っ!! 『黄金 地色』であるっ!! 貴殿等が俺と共に勉学に育む同士達で間違いないなっ!? ようこそっ!! 『黄金組』へっ!!」


『ガラァバタン』


 ドアを開けたら再び褌姿の男がいたので慌てて閉めてしまった。


志木

「な、何がどうなっているんだいっ!? 何度ドアを開けても褌男の幻覚が見えるだとっ!?」


ミナモ

「間違いないっ!! 新手の能力者の仕業っ!! 私達はすでに何者かに攻撃をされていたっ!!」


志木

「ば、馬鹿なっ!? 周囲からは敵意や殺意は感じなかったぞっ!? そもそも私とミナモの感知をすり抜けて攻撃を仕掛けるとはっ!?」


ミナモ

「それだけ厄介な相手という事っ!? い、一体どこから攻撃をっ!?」


『ガラァ』


褌男

「そんなんじゃないしぃっ!! 幻覚とかでもねぇよっ!! 攻撃もしてねぇんだけどっ!!」


 扉を開けて褌姿の男が出てきたっ!?


褌男

「人の顔を見ていきなり扉を閉めるとか失礼な奴等だなっ!! おいっ!! シャイなのかなっていろいろなキャラを演じて和ませようとした俺の努力をなんだと思っているんだよっ!!」


ミナモ

「い……」


褌男

「い?」


ミナモ

「いぃぃぃやあああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!! 変態ィィィィィィィィィィッ!!!!」


 私は目の前の褌男を蹴り上げたっ!!


『バキイィィィィィィ』


褌男

「おぉっふうぅぅっ!?!?」


志木

「ミナモが褌男の股間を蹴り上げたっ!? あれは潰れたぞっ!?」


 褌姿の男は飛び上がり、頭が天井に突き刺さる。


志木

「な、なんて事だ……。こんな事が現実で起こるなんて……」


ミナモ

「……」


 そして首から下の胴体がゆらゆらと揺れている。


 私は掃除用ロッカーからほうきを取り出す。


志木

「ミナモ? な、何をするつもりなんだい?」


ミナモ

「……」


 そして箒を大きく振りかぶって……思いっきりフルスイングするっ!!


ミナモ

「くたばれっ!! 変態っ!!」


『ブオオオォォォンバキイィィィィ』


褌男

「アァヴゥッヂィッ!?!?」


ミナモ

「フンッッ!!」


『ブオオオォォォンバキイィィィィ』


褌男

「おぉうぅんっ!?!?」


ミナモ

「ウラララララララララァァァァァァッ!!」


『バキッベキッバキッバキッベキッバキッバキッベキッバキッ』


褌姿

「いってぇっ!? あぅんっ!? ちょっ!? イタッ!? な、なんでっ!? イテッ!? おいっ!! アダッ!? すねばかり叩くなっ!!」


志木

「ミナモが褌姿の男の脛に目掛けて箒をフルスイングしているっ!! いいぞっ!! 畳み掛けろっ!!」


ミナモ

「変態くたばれっ!!」


褌男

「ちょいいい加減にしろよっ!!」


 褌男は突き刺さった頭をなんとか引き抜き、床に着地した。


褌男

「いきなり何するんだよっ!? なんでいきなり攻撃してくるんだよっ!?」


ミナモ

「いやぁ、変態見つけたらとりあえず叩きのめそうかと……」


褌男

「やめてっ!! 俺じゃなかったらマゾの極致に到達しちゃうところだったぞっ!! 段々気持ち良くなってきちゃったんだぞっ!! ドMになったら責任取れんのかよっ!!」


志木

「すまない、ドMくん……。私とミナモから離れてくれないかい? 半径20メートル以内に入らないでもらえると助かるね……」


褌男

「俺の扱い酷くねっ!?」


志木

「目の前に女性がいるのにその姿でいるのはどうかと思うけど……。それにそういう格好を学校でするのは良くないと私は思うよ。とりあえず、不審者くん今から警察を呼ぶからちょっと待ちたまえ」


褌男

「俺は不審者じゃねぇよっ!! この学校の生徒なんだよっ!! お前等のクラスメイトッ!!」


志木

「なっ!? ば、馬鹿なっ!! こんな不審者が生徒だとっ!? よりにもよってクラスメイトッ!? そんな格好をしているのに不審者ではないだとっ!?」


褌男

「俺だって好き好んで褌をしているワケじゃねぇんだよっ!! 能力の関係で露出度が高めの服を着なきゃならねぇんだよっ!!」


ミナモ

「え? 家にいる時はしっかり服を着ているって事?」


褌男

「ん? いや、家だと全裸派だけど」


ミナモ

「やっぱり露出狂の変態じゃないっ!!」


『バキイィィィィグチャァァァ』


褌男

「あんほほおぉんほんほぉほおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!?!?」


志木

「ミナモの回し蹴りが思いっきりクリーンヒットしたっ!? アレは絶対に潰れたぞっ!!」


褌男

「今の……一撃で……惚れちゃったぜ……」


 これが『裸鬼』の二つ名を得る『黄金 地色』という男との出会いだった。


ーミナモ目線終了ー

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