第55話 恋する乙女男子の俺が腐女子とカップリング論争をしていたら何故か警察に表彰された件

 今日は喫茶『プリティー・ボンバー伊藤』でのバイトの日だ。


 僕がバイトをする際に監視役をしてくれるのは、コウの祖父である岩帝さんだ。僕がバイトの出勤日は岩帝さんが二人乗り用のオートバイクで迎えに来てくれる。


 岩帝さんは、もう100歳超えてるのに免許を返納しなくていいのだろうかとたまに疑問に思うが……気にしないでおこう……。


岩帝

「鉄也くん、お迎えに来たぞ」


鉄也

「あ、岩帝さん。いつもありがとうございます」


コウ

「おー、鉄也がバイトをしている時の監視役って爺ちゃんだったのかー」


岩帝

「まぁのぅ。鉄也くんは一応、『帝』の誰かが監視してなきゃならんからのぅ。ワシとしては、監視する必要がないくらい無害な子だと思うのじゃが……」


コウ

「まー、そういう契約だし仕方ねー気がするけどなー」


鉄也

「コウはどうする? バイト先に来るの?」


コウ

「あとで行くわー」


 僕は岩帝さんの乗っているオートバイクに跨がり、バイト先に行く。バイト先に到着するとゴリラが扉の前で待ち構えていた。


鉄也

「ゴ、ゴリラッ!? 何やってんのっ!?」


ゴリラ

「朝5時からずっとスタンバイしてました」


鉄也

「朝から学校にいないと思ったらっ!? 何やってんのっ!? 留年しちゃうよっ!!」


ゴリラ

「フッ……。安いもんさ、留年の1年や2年くらい……。鉄也の女装が見れるなら……」


鉄也

「僕はコウとゴリラと一緒に卒業したかったんだけどなぁ……」


ゴリラ

「て、鉄也ぁっ!! ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!?!?」


 ゴリラはいきなり前屈みになって倒れ込んだ……。そしてピクピクと震えている……。


ゴリラ

「出ちゃった……。俺のナカの何か大切なナニかが出ちゃった……」


鉄也

「ゴリラ? 大丈夫? なんか生臭い匂いが……」


岩帝

「おっと鉄也くん、それ以上は言ってはならぬ。それ以上言ってしまうと鉄也くんが穢れてしまうぞ。……ところで鉄也くん、コウとは仲良くやっているのかね?」


鉄也

「え? 仲良いですよ。僕にとってコウは最高の親友ですよ。彼ほど気が合って、頼りになる男はいませんよ」


岩帝

「そうか……。そう言ってもらえるのなら……コウも本望じゃろう。ワシもコウに能力の指導をした甲斐があったわい」


ゴリラ

「きいいいいいぃぃぃぃぃっ!! く、悔しいぃぃぃっ!! 悔しいのにいぃぃっ!! 俺のナカから出るナニかを止められないぃぃぃぃぃっ!!」


岩帝

「さぁ、馬鹿者は放って置いて店内に入るぞ。ワシはチョコレートパフェを頼むぞ」


鉄也

「珍しいですね。いつもなら店内の裏側でタバコ吸ってるのに」


岩帝

「たまには食べようかと思ってのぅ。それにワシは甘党じゃ」


 僕は店内の更衣室に入るとバイトの制服メイド服に着替える。着替え終わって、岩帝さんの所へ行くと彼は席につき、チョコレートパフェを微笑みながら食べていた。


鉄也

「岩帝さんは甘いモノが好きなのか……。なんかコウみたい」


岩帝

「味の好みはワシ譲りだと思うぞ」


モエル

「鉄也。遊びに来たわよ。ん? 岩帝さん、珍しいですね。パフェ食べているなんて」


 店内に入ってきたモエルさんは岩帝さんに話し掛けた。


岩帝

「ワシはこう見えても甘党なんじゃよ」


モエル

「貴方は冷酒を飲みながらイカの塩辛を食べているイメージがあったから意外だわ」


岩帝

「ほほほ。ワシはおはぎをつまみに酒を飲むくらい甘党じゃよ」


モエル

「糖尿病になるぞ」


コウ

「よーしー。俺も到着ー」


ゴリラ

「ようっ!! 着替え終わったかっ!?」


 コウとゴリラも店内に入ってくる。


 ……今、思ったけど……『国の盾』の最強戦力である『帝』がプライベートで同じ店に集うってレアな事なのでは?


ゴリラ

「鉄也ぁっ!! 結婚しようぜぇっ!!」


 ゴリラはいつも通りの馬鹿なセリフを言った。


鉄也

「何を馬鹿な……」


モエル

「馬鹿な事を言わないでっ!!」


 モエルさんはいきなりゴリラの胸倉を掴んで叫んだっ!!


鉄也

「にゃっ!? ど、どうしたのっ!? モエルさんっ!?」


モエル

「鉄也はねぇっ!! コウとくっ付くんだからっ!! 邪魔しないでっ!! コウのヘタレ攻めからのっ!! 鉄也の誘い受けなんだからっ!! コウ鉄の良さがアンタには分からないのかっ!?」


ゴリラ

「えっ!? なんで胸倉掴まれたのか分からんけど……これだけは言わせてもらおう……。鉄也はなぁっ!! 俺の嫁なんだよっ!! コウ鉄だと? テメェこそふざけた事を抜かしてんじゃあねぇぞっ!! このスカタンがぁっ!!」


モエル

「コウと鉄也のカップリングほどっ!! 尊くて、美しい組み合わせはないのよっ!! 見て分からないのっ!? コウのヘタレ攻めをしそうな感じっ!! ちょっと奥手な感じが最高にそそるのよっ!! そして鉄也のコウを誘いながら少し小悪魔感を出しそうな感じっ!! コウの全てを受け入れつつ、たまに攻め返しそうなあの感じが堪らないのよっ!! アンタみたいな野獣が入り込む隙なんてないのよっ!!」


ゴリラ

「アンタは分かってねぇよ。野獣だからこそできる荒々しいプレイをよぉっ!! あられもない姿にひん剥いた鉄也に涙目で『や、優しくしてね』と言われたらっ!! どんな男でも野獣となるっ!! ならば元々野獣ポジションの俺がやるべき事だろうがっ!!」


モエル

「アンタみたいな野獣顔こそヘタレなのよっ!! 野獣顔のヘタレ姿なんて誰も見たくないのよっ!! 美男子のコウと美少女顔の鉄也だからこそ成り立つのよっ!!」


岩帝

「……話がまったく分からんが……こういう事かのぅ……。コウと鉄也くんが付き合っておった。そしてゴリラ顔の少年が鉄也くんを寝取ろうとしている。そういう事で合っているかのぅ? ワシの孫がまさか男を好きになるとは……曽孫ひまごの顔が見たかったのぅ……」


コウ

「いや、俺と鉄也は付き合ってねーよー」


鉄也

「店内で暴れないでくださいよ」


 そんな話をしていると、勢いよくドアが開けられ誰かが入ってきた。


強盗

「テメェらっ!! 動くんじゃあねぇっ!! 強盗だっ!!」


モエル・ゴリラ

「「うるせぇっ!! 黙ってろっ!!」」


 モエルさんとゴリラは店に入ってきた覆面姿の男を殴って店外に放り出す。


鉄也

「今、なんか入ってこなかった?」


岩帝

「強盗と名乗っておったような……」


コウ

「そういえば、銀行強盗が逃走中ってニュースでやっていたようなー……」


鉄也

「……」


コウ

「……」


鉄也

「コウッ!! 確保だっ!!」


コウ

「おうっ!!」


 銀行強盗を捕まえた僕達は翌日、警察に表彰されたのだった。


ゴリラ

「恋する乙女男子の俺が腐女子とカップリング論争をしていたら何故か警察に表彰された件」


鉄也

「ゴリラ。お手柄」


ゴリラ

「ぬわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!! ビクンビクンしちゃうぅぅぅぅっ!!」

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