第8話 覚醒

 コウとゴリラに……直撃は……しなかった……。けど……こ、このままじゃ……。


テン・バイヤア

「次はお前等だっ!! 先程はよくもやってくれたなぁっ!!」


コウ

「ゴリラっ!! 構えろっ!!」


ゴリラ

「ちくしょうっ!! よくも鉄也をっ!!」


 こ、このままじゃ……コウがっ!! ゴリラがっ!!


 クソッ!! 立ち上がれよっ!! 立ち上がってくれよっ!! 僕の身体っ!! 


 こんなところでっ!! くたばれないっ!! コウ達を護るんだっ!!


 こんなところでっ!! 寝転んでる場合じゃねぇっ!!


 その時だったっ!!


 目の前に突然刀が現れたっ!! 刀身も鍔も柄も何もかもが真っ白な日本刀っ!!


 なんでこんな所に刀がっ!? どこから出たっ!?


 そう疑問が浮かんだが、一瞬でその考えが吹き飛んだ。


 この刀で奴を倒さなくてはっ!! コウ達を護るんだっ!!


 僕は雪のように白い刀身の日本刀の柄を掴み立ち上がるっ!!


鉄也

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」


テン・バイヤア

「っ!? な、何っ!? あ、あの爆破をくらってまだ立ち上がるのかっ!? いやっ!! それより、なんだっ!? そのジャパニーズソードはっ!?」


 僕は右足に力を込め跳ねるっ!! ピエロ男に向かって飛ぶっ!!


テン・バイヤア

「このくたばりやがれええええぇぇぇっ!!!!」


 ピエロ男は僕に目掛けて薄桃色の球体を複数作り出して投げ付けてくるっ!! 刀が砕けたら戦えないっ!! だから刀じゃ防げないっ!!


鉄也

「うおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」


 僕はそれを左手で防ぐっ!! 爆破で僕の指先が吹き飛ばされるっ!! 


鉄也

「ぐっ!?」


 い、痛いっ!! だが、止まれないっ!! 止まるワケにはいかないっ!! そのまま駆け抜けるっ!!


テン・バイヤア

「さっさとくたばれよっ!! この死に損ないがっ!!」


 ピエロ男は容赦無く薄桃色の球体を投げ付けるっ!! 僕はそのまま左手で防ぐっ!! 左手の掌がっ!! 手首がっ!! 徐々に吹き飛ばされていくっ!!


鉄也

「負けるかああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


 左手から肘まで吹き飛ぶが僕は止まらないっ!! 止まっていられるかっ!!


 僕が護るんだっ!! あのピエロ男からコウ達を護り切るまでっ!! 倒れてたまるかっ!!


テン・バイヤア

「こ、このガキッ!! 自分の左手をっ!? いやっ!! 左腕を犠牲にしただとっ!?」


 僕は右足に力を込めて跳ねるっ!!


テン・バイヤア

「このクソガキがっ!!」


 奴がナイフを振り上げるっ!!


鉄也

「させるかああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」


 ピエロ男はナイフを振り下ろそうとするっ!! 僕は振り下ろされる前に奴のナイフを持っている右肘を切り裂くっ!!


テン・バイヤア

「ぐうぅぅっ!?!?」


鉄也

「おおおおおおおおぉぉぉぉっ!!!!」


 僕はそのまま奴の左手首を刀で切り上げるっ!!


テン・バイヤア

「ぐぃやぁっ!? こ、このおぉっ!! クソカスがああああああぁぁぁぁっ!!!!」


鉄也

「おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉっ!!!!」


 そのままピエロ男の胴体を左側から真っ二つにするっ!! そして地に落ちた奴の心臓目掛けて刀を突き刺してトドメをさしたっ!!


テン・バイヤア

「うぎぃやぁっ!?!?」


 こうして僕はピエロ男を殺した……。


鉄也

「はぁ……はぁ……」


 左肩からの……出血が止まらない……。腕を失った左肩を見る……。


 ここ……までか……。


 意識が……徐々に……遠退いて……いく……。


コウ

「て、鉄也っ!! おいっ!! 鉄也っ!!」


ゴリラ

「鉄也……」


 泣いている……2人を見る……。良かっ……た……。無事……みたい……で……。


鉄也

「コウ……ゴリラ……。幸せに……生きろ……よ……。すぐ……に……死ぬ……なよ……」


 そのまま僕は意識を失った……。








 変な夢を見た。空が曇って薄暗い場所に、石がいっぱい積まれている河原。川に入りゆっくりと川瀬を歩いて行く人達がいる。


 なんだ? ここは?


 そう思っていると巫女服姿の女性がいた。


 黒髪のポニーテールで白く透き通るような肌。二重まぶたで大きな瞳の女性だった。


 そんな彼女は川を見つめている。


 ……どこか見覚えがあるような……。


 そう思って見つめていると彼女が僕に気が付き、こちらに歩み寄る。するとじーっと僕の顔を見つめる。それから僕に話しかけてきた。


巫女

「貴方がこっちに来るのは、まだ早いわよ……。ここに長居していたら帰れなくなる……。ほら私が送ってあげるから、帰りなさい。貴方の帰りを待っている人達の所へ」


 そう言われた後、また意識が遠退いていく……。




























 気が付いた時には、僕は病院のベッドの上だった。


鉄也

「……知らない天井だ……」


 ってボケをかましている場合じゃないな。ここは病院だよね? なんで僕はここに?


 そして……なんで……なんで失ったはずの左腕があるんだっ!? 指も肘もしっかり動くっ!! ど、どうなっているんだっ!?


 あの後、何が起きたっ!?


 僕は生きているっ!! いや、生きているのはまだ理解出来るっ!! だが、消し飛んだ左腕がなんで復活しているんだっ!?


鉄也

「な、何が……」


ミナモ

「鉄也っ!!」


コウ

「て、鉄也が意識を取り戻したぞっ!!」


ゴリラ

「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!! 鉄也ああああぁぁぁぁっ!!」


 皆んなが僕に抱き付いて泣いていたっ!! 


 その叫び声で看護師達、医師が入ってきた。そして僕は精密検査をさせられた。







 あの後、何が起きたのかコウから聴いた。


 僕が倒れた後、白い日本刀は消えてなくなり、僕の体からドンドン血の気が引いていったらしい。


 コウもゴリラもどうしようも出来ず、泣いているしかなかった。


 その時だった。


 突然、ボロボロの男子用のブレザーを着た傷だらけの女性が現れた。


 その女性は倒れている僕を見て、僕に手をかざすと失った左腕が徐々に再生していき、折れた左足がみるみる治っていったらしい。


 女性はコウとゴリラの顔を見ながら『とりあえず、傷は治したから早く病院へ連れて行ってあげて』と言ったそうだ。


 コウが僕を抱えて女性にお礼を言おうとした時には、彼女の姿は消えていたそうだ……。


 その後、僕は病院に連れ込まれたのだった。ミナモさんの部下達がその女性について調べてみたが、その女性の情報は見つからなかった。


鉄也

「僕が倒れている時にそんな事がねぇ……」


ミナモ

「……」


 ミナモさん、俯いたままプルプル震えている……。心配かけちゃったよね……。


 目が覚めてから検査中に医師から聴いたけど、僕は病院に担ぎ込まれた後も生死の間を7日間、彷徨っていたらしい。


 かなりの量の血を失い、臓器にもダメージがあり、あと少し病院に到着するのが遅れていたら死んでいたとの事。医者からは『あの状態から助かったのは奇跡だっ!! 是非っ!! 研究させてほしいっ!!』とか言われたっけ……。


鉄也

「み、ミナモさん……え、えっと……」


ミナモ

「……私が……」


鉄也

「え?」


ミナモ

「私が……鉄也に……戦ってほしくなくて……傷付いてほしくなくて……」


鉄也

「……」


ミナモ

「……けど……私が……戦い方を教えなかったばかりに……」


鉄也

「……ミナモさん……。その……心配させてすみません……。ミナモさんが僕に戦い方を教えなかったのって、僕の為だったのは分かってますよ……。だから……そんな悲しい顔しないでください……」


コウ

「ごべん……ごべん……でづや……。おで……何もでぎながっだ……」


ゴリラ

「ぶえええええぇぇぇぇぇっ!!!! でえぇづゔぅやあああああぁぁぁぁっ!!!!」


鉄也

「コウもゴリラもごめん。心配かけて、ごめんね」


コウ

「おでっ!! づよぐなるがらっ!! おばえを護れるぐらいづよぐなるがらっ!!」


ゴリラ

「おでっ!! ぜぎにんどるがらっ!! ぜっだいにおばえをじあわぜにずるがらっ!!」


鉄也

「お、おう? な、何言っているか分からんけど、マジでごめんって……」

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