碧き春は想い出とともに ~泡沫の鬼神は過ぎ去りし冬の夢を見るのか?~

白桜

はじまりの朝焼け

第1話 ちょっと誰か説明してえええええぇぇぇぇっ!?!?

 僕の最初の記憶は自分が奴隷として売り飛ばされそうになっていた時のモノだ……。


 暗い部屋の中、スポットライトが僕を照らす……。


『性別はオス。病気もなく、傷一つない体。きめ細やかな肌。可愛らしく幼い顔立ち。黒真珠のように漆黒で、艶やかな美しい髪と瞳。年端もまだいかない幼子でありますが、力はそれなりにあり荷運びなどの力仕事もこなせますし、怪我の治りも非常に早い為、様々な遊戯にも耐えられます。さて、紳士、淑女の皆々様……まずは100万から始めましょうか』


『こりゃなかなか良い顔立ちじゃねぇかっ!! 女児であったならなぁ……。まぁ、それでも120万は出すぞっ!!』


『俺なら125万くらいなら出すっ!! ショタをイジメるのはええからなぁっ!!』


『ワタクシなら1000万出すわっ!! イジメ甲斐がありそうだものっ!!』


『1100万っ!! こりゃ良い実験動物になりそうだっ!!』


『コイツは良いっ!! 夜の嗜みの時にヒィヒィ言わせ甲斐があるからなぁっ!! 買わなきゃ損ってやつだなっ!! ヨシっ!! 俺は6000万出すぞっ!!』


『ボォクなら7000万出すねっ!!』


 僕を見ながらニヤニヤと嫌な笑みを浮かべ、次々と数字を叫ぶ気品ある服を着た人達。


 この時は何が起きているのか、どうして僕がここにいるのか、理解できていなかった。


 自身の首につけられた鉄の首輪、手錠、足枷が少し窮屈だ……。けど、僕の力じゃ引きちぎれそうにない……。


 両手に繋がれた手錠の鎖を見ながら僕はどうなるのだろうかと考えていたその時だった……。


 僕の真っ正面にある大きな扉が何者かにより凄まじい勢いで蹴破られるっ!!


 飛んで来た扉は僕の真横を通り過ぎるっ!! 怖っ!?


 そして後光と共に現れたのは、白い鬼の面をつけた女性だった。


 彼女の右手にはその全てがまるで雪が積ったかのように美しい純白の刃の刀が握りしめられ、左の腰にはその刀の鞘であろう白い鞘が差されている。艶やかな長い黒髪を一括りに縛り、藍色のスーツを着こなし、白いコートを羽織っている。


鬼の面をつけた女性

「御用改めであるっ!! 『国の盾くにのたて』であるっ!! 抵抗する者は皆斬り伏せるっ!!」


『『国の盾』だとっ!? な、なんでこんなところにっ!?』


『あ、あれはっ!? 『国の盾』の一番隊隊長の『水帝すいてい』じゃねぇかっ!?』


『ウッソだろうっ!? 『国の盾』の最強戦力の1人じゃねぇかっ!?』


 鬼の面をつけた女性の後ろから次々に人が入って来たっ!? ヒョロガリ長身でふんどし姿に赤鬼の面をつけた男が女性の後ろから現れたっ!?


 後から入って来た人達は普通にスーツ姿なのにっ!? なんで赤鬼の面をつけた人だけ白い褌姿なのっ!? なんなのっ!? あの変な人っ!?


変な人

「たいちょー。ずーいぶん気合い入ってますねぇー」


鬼の面をつけた女性

「そんな事はない。それより『裸鬼はだかおに』……」


変な人

「だいじょーぶっすよぉー。ここ以外はぜぇんぶ包囲してますよぉー。誰一人として逃がしはしねぇーっすよぉー。『水帝隊長』。だから今夜オレとゴートゥーベェッドッ!! しぃましょーよー」


鬼の面をつけた女性

「キモッ!! そんな事を言ってないで仕事するぞっ!!」


変な人

「りょりょりょーかーいー。おいっ!! テメェらっ!! 抵抗しなけりゃしょっ引いて豚小屋突っ込んでやる程度で済ましてやるがよぉっ!! 抵抗するならよぉっ!! 今ここでぶっ殺してやるぞっ!! ゴラァッ!!」


『『国の盾』がなんだって言うんだっ!! ボォクなんてエリート家系なんだぞっ!! ボォクをしょっ引くなんてしたらボォクのパパが黙ってないよっ!!』


変な人

「やかましぃっ!!」


 小太りの前髪ぱっつんの眼鏡をかけた青年が前に出て行くが、褌男がそいつの股間に蹴りを叩き込むっ!!


 その小太りの青年の体は飛び上がるっ!! 『ブィヒィッ!?』と声を出した後、口から泡を吐いて倒れ込むっ!!


変な人

「キィッモイ男がよぉっ!! この俺に話しかけてくるんじゃあねぇよっ!! 俺に話しかけていいのはよぉ乳のデカい女だけだっ!!」


 えっ!? な、なななな、何が起きてるのっ!? えっ!? 褌ヒョロガリ強っ!! あの小太りの人100kgくらいありそうなのに浮いたぞっ!?


変な人

「野郎共ぉっ!! 全員しょっ引けっ!! 抵抗する奴は切り捨てろぉっ!!」


鬼の面をつけた女性

「お前が仕切るな。馬鹿タレが」


変な人

「たいちょー。これでもよぉ、俺、副隊長っすよ!! カァッコつけさせてくださいよぉー!!」


 いや、褌姿の時点でカッコ良くないと思うのは僕だけじゃないはず……。


鬼の面をつけた女性

「まぁ、いい。全員、確保しろっ!! 一人たりとも逃すなっ!!」


変な人

「かああぁぁしこまぁりいいぃぃぃぃぃっ!!!! よぉしっ!! 野郎共っ!! 全身全霊で敵をぶっ飛ばすぞっ!!」


 褌姿の男はいきなり褌を脱ぎ捨て仲間達であろうスーツ姿の人達と共に気品ある服を着た人達に突進して行くっ!!


 今っ!! 何が起きてるのっ!? なんで褌脱ぎ捨てたのっ!? 何がしたいのあの変態はっ!? もう何が何だか分からないよっ!! もう意味わからないよっ!!


 ちょっと誰か説明してええええええぇぇぇぇぇぇぇっ!?!? 



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