蒸気機械兵の嫁〜夫の修理費はハンドメイドで稼ぎます〜

篤永ぎゃ丸

序章『蒸気と鉄血に添い遂げたい』

 地の果てには、刃金はがね造花ブーケが咲いていた。


 空が埃のように汚い。禍々しい雲が世界を覆って、地上は廃棄物が足の踏み場が無い程に転がっている。傷付いたゴミの山に混じる私を、手足が無い蒸気機械兵マキナが優しく包んでくれていた。


「貴女ノ事ハ、僕ガ必ズ守リマス」


 錆びついた妻問つまどいが耳元に囁かれる。私は上の世界で、全てを破壊する兵器を沢山作ってしまった。だからこうして投げ捨てられたのに——素敵な言葉を贈ってくれるのね。


 朦朧とする意識の中で見る奈落の世界は、魔石炭タール臭い蒸気ミストに包まれているけれど、真っ白でとてもきれい。背中に寄り添う特殊鋼とくしゅこうの熱伝導率は低いからひんやり冷たいはずなのに、どうしてこんなに素肌が温まるのだろう。


「貴女ノ事ハ、僕ガ必ズ守リマス」


 二回目の妻問つまどい。素直ストレートに伝えようとする不器用な鉄血は、止まりかけた心臓の鼓動を高鳴らせる。

 襤褸襤褸ボロボロな私達だけど、幸せな家庭を築いていけそうな未来が目に浮かぶ。人と機械が寄り添って生きたら、どんな心が仕立て直されるのか、すごく知りたい。


 だから私は——機械兵に添い遂げたいと思ったの。


「私を、?」

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