第四話 最強の冒険者

四話 最強の冒険者


地龍と合間見るヴィタ達だったが、一方その頃村では混乱の中、1人の男が立ち上がった。

「皆んな落ち着け村から地龍は去った!!」

その声を聞き、民衆は足を止める。

「今、私達がするべき行動は平静を保つ事だ。」

その男の名はケイツ・エネディクト。

ヴィタの父親だった。

「で、でもアイツが戻ってきたらどうする!平静なんて保つ暇があるなら、身支度して逃げるほうが啓明だろう!!」

「そ、それは、、」

ケイツは口をつむいだ。


ドンドン!!


そんな時、村の門を誰かが叩いた。

民衆の頭によぎるのは地龍の再来。

民衆には混乱の風を吹く。

「何があった!!」

そんな心配をよそに門を潜ったのは人の姿。

それは村の地主であるユーベン家の家来だった。

「ち、地龍が目覚めやがったんだ!!」

民衆の1人が声を上げる。

「地龍だと?!」

民衆の一言に怪訝な顔をした家来だったが外にいる仲間のために門を引き上げる。

ガラガラと引き上げかれる門の外には馬と積荷を取り囲む屈強な男どもの姿がだった。

「坊っ!坊っっ!!」

家来は声を上げ、ユーベン家の者を呼ぶ。

積荷の馬車から出てきたのは白髪の少年、アルセだった。

「何があったんだ。」

「村のものによると地龍が目覚めたと...」

「地龍だと?」

「そうですよね?余りにも信じ難いです。」

「いやお前も村の外にある大きな足跡を見ただろう?」

「それは、」

そんな会話を聞き、ケイツは立ち上がってアルセの側へと近寄る。

「アルセ坊、真実でございます。」

「地龍が村に接近し、村の門のすぐ前へと近づいてまいりました。」

「そうか、ケイツさんがおっしゃる事なら信じよう。」

「ありがとうございます。」

ケイツはアルセを前に膝をつく。

「それに早馬で知らせたのであろう?その冒険者と合流したところだ。」

「それで肝心な地龍はどこへ行ったんだ?」

アルセは村の様子を伺うと共に民衆の中に見た顔を探す。

「ケイツ、」

「は!」

「ヴィタやエンナ達はどうした?姿が見えない。」

ケイツも民衆の中にヴィタこ姿を後を追う。

「どこに行ったんだヴィタ...」

そんなケイタを見てアルセは感情を露わにする。

「ケイツさん!どこにいるんです?!」


ヴィタの奴、一体どこにいるんだ。

みんなの顔も見えない、まさか、、


アルセの頭には最悪の光景が思い浮かぶ。


「坊!伏せろ!」

家来の1人がアルセに覆い被さる。


次の瞬間、村の外れで大きな火球が打ち上がる。


「誰が外で戦っているのか?」


その村の外れで打ち上がった火球は空で爆発した。その焔はアルセらへと降りかかる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

発動 ケイツ・エネディクト「均衡名[水壁]」

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「水円」

ケイツは村の中心にドーム上の壁を生成する。

「これで、、何とか...」

ケイツは素早い判断で村を守る均衡を発動する。

「ケイツさん!避けろ!!」

アルセがケイツにそう呼びかける。

ケイツは頭上へ目を向けた。

「はぁ?!」

ケイツの見たものは、自らが生成した水壁を貫通し、その焔は村へと、民衆へと降りかかっていた。


その焔は触れたものは燃え上がり、苦痛の悲鳴を上げている。

「ケイツさん!!ここにヴィタは居ないんだな?」

アルセはもう一度確認する。

「その様です!!」

「ケイツさんよく聞いてくれ!」

「地龍はここを襲いにきた訳じゃない!誰かを追って来たんだ!そしてソイツは村の外れで地龍と戦闘をしている!!」

「俺はここを離れ、冒険者を連れて地龍を討伐に行く。ケイツさんはここを頼めますか?」


ケイツは周囲を見回す。

辺りは焔で燃え広がり、人や家を焼き上げる。

そんな惨状を見てケイツは唾を飲み込んだ。

「はい、私に任せて下さい!」

「息子を...頼みます...」

「分かった。」

アルセは冒険者を連れ、村の外れへと走り出す。

「これは大変な仕事を任された...父さんも頑張るからヴィタ...お前も死ぬなよ。「水壁[倒壁]」」


そんなケイツを背にアルセは火球の上がる方角へと足を動かす。


「ユーベンの旦那よ。いいのか?民衆をほっぽいて」

「分かってる。」

「でも見捨てられない...アイツらは俺の仲間なんだ。」

「はっ!貴族でもそんな考えを持ってる奴いんだなw」

冒険者達ははアルセの発言に笑みをこぼす。

「俺は貴族じゃないただの小さな村の地主だ。」

「はいはいそれにユーベンの旦那よ。」

「なんだ?」

「早く足を動かせ?その仲間とやら、死ぬぞ?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(最悪だ...死ねなこれ..)


地龍は焔の息吹を吹きかけ、僕の体を焼き上げる。


ダッダッダッ!

次の瞬間、地面を蹴り、アルセと冒険者の一行が到着する。

「はっはっはーーーー!」

「ギリギリ間に合ったな旦那!何人か生きてるぞ!!」

「ギル子と他の奴らは動けるやつだけでも手当してやれ!!」

「コイツは俺がやる!!」

「分かりました。」

そのリーダーであろう冒険者は鋼の鎧に身を包み、背に拵える巨剣を抜きさり地龍に一太刀切り付ける。


「みんな無事か!!」

アルセは声を荒げ、皆に問いかける。


ジジ...

するとアルセの頭の中にリエナの均衡「八岐大蛇」の能力で意識の共有が付与される。

「リエナ!!」

(ヴィ...た..が...)

ポツポツと意識が途切れながら皆が何か言葉を発している。

(ヴィタが死んだ。)

「は?」

その言葉を聞きアルセの顔は真っ青になる。


ガキッ!!

冒険者の放つ渾身の一太刀はベルモルトの鱗に弾かれる。

「くっそ、!コイツかてぇな!!」

「そこらの雑魚とはてんで違うのか!!」

「それじゃあ!やるか!!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

発動 ◻︎◻︎◻︎・◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎ 「均衡名[強器]」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

冒険者は自身の手に持つ巨剣に均衡の能力を付与する。

「はっはっはーーーー!」

冒険者は高笑いを上げながら地龍の前腕へと剣を振り下ろす。その剣は先程と違い地龍の腕をバターを切るが如く切り伏せた。

「おっ!やっぱりいけるなぁ!!」

前腕を切り落とされた地龍は雄叫びをあげ、より興奮状態へと入る。

ベルモルトはかつて焔の化身とも呼ばれた古来の地龍、冒険者に負けじと攻撃を仕掛ける。

地龍は口内に焔を溜め、冒険者へと吹きかけた。


それを見た冒険者は地面に剣を突き立て叫ぶ。

「起きろ!!」

するとその地面に突き立てられたその巨剣は次第に巨大化し、地龍の息吹を防いだ。

「甘いんだよ!どいつもこいつ魔物は!!」

「噛みごたえがねぇんだよっ!!」

そう言い残すと異様にも巨大化した剣で冒険者は地龍の首を刎ねた。


「ヴィタが死んだ?」

アルセは声を振るわせる。

(リエナ!本当にヴィタはっ!死んだのかっ?!)

アルセは共有された意識の中、リエナ達に問いかける。

(アルセ、ヴィタが...地龍の焔に包まれちゃった。)

アルセはそれを聞き、足の力が抜けたのか地面へとへたり込む。


地龍の首をいとも簡単に切り伏せる冒険者、彼は王都で数年わたってコロシアムの王者として君臨した武の王。そんな彼は魔物から取れるあるものを求めていた。


旦那、あの様子だと仲間の誰が死んだのか、まぁ十分だ。10歳にも満たないクソガキだけで地龍を足止め出来ているなら100台点だ。運がいいか、それまた均衡に恵まれたか、仲間とやらは随分強運だな。

「旦那!地龍は俺らが貰うからな!!」

そう言うと冒険者は地龍の首を足蹴に高笑いをする。

「ん?」

「おい!ギル子!手当が終えたならこっちに来い!なんかあるぞ!!」

「はいはい。」

ギル子と呼ばれる女性は聖職者なのだろうか聖服でみを纏っている。

「な?変なのあるだろ?」

「確かにそうですね。これは宝石ですか?」

2人が見下ろす先には焔に包まれたのか煤まみれの大きな宝石が転がっている。

「じゃあこれも地龍と同じ様に切り刻んで持ち帰るか!」

冒険者は手に握る巨剣を謎の宝石に振り下ろした。

「は?」

冒険者は呆気に取られたのか目を丸くする。

それは先ほど地龍の首をいとも簡単に刎ねた巨剣が宝石に振り下ろし程度で二つに砕けてしまったのだ。

「あ!!俺の愛剣が!!」

冒険者は折れたを目にした嘆き苦しむ。

「団長何やってるんですか、」

ギル子は呆れた様に団長を見つめる。

「ギル子!この岩許さねぇ!お前のその手に持ってるメイス貸せ!!」

「嫌ですよ団長汚いですし、」

「あ~くそ!!一張羅が!!!」

「もう落ち着いて下さいよ。この剣変わった能力はありますけどただ大きくなるだけでしょう?」

「俺はそれが気に入ってたんだよ!!」

「団長これは学びです。強欲は身を滅ぼす。いい教訓です。」

「あ~クソ!!この忌々しいクソ岩が!!」

冒険者は頭を掻きむしり、肩を落とした。


そんな時ふとギル子が何かに気づいた。

「ん?これ中に人入ってません?」

「は?」

冒険者は宝石を近くで覗き込む。

「確かに何がいるぞ。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

発動 ギルナ・コバルナ 「均衡名[緑化]」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「洗草」

ギルナは不思議な植物を地面から生成した。そしてその植物の分泌液で宝石を綺麗に洗い上げる。

「これは!!」

ギルナの目に映り込んだのは宝石の中に黒髪の少年が封じ込まれている姿だった。

「旦那!こっちに来てくれ!」

「旦那?」

冒険者が見る方向には力無く座り込むアルセの姿があった。冒険者はそんなアルセを見て首根っこを掴み上げる。

「何を、、」

「お前の仲間かも知れねぇぞ?見ないのか?」

気を落としたアルセはポツポツと語り出す。

「何を、ヴィタは地龍の焔に包まれて死んだ。」

「それは自分の目で見てから決めろ。」

そう言うと冒険者は宝石の前へアルセを放り投げる。

「どうだ?」

「ヴィタだ、、」

アルセはしがみつく様に宝石の中にいるヴィタを覗き込む。

「やっぱりか、同じぐらいと歳に見えたからな、切り刻まなくてよかったぜ。」

「団長...あなたは切り刻まなかったのではなく、切り刻めなかったが正しいです。」

「おい!それは言うなよ!」

「だって団長が嘘をつくから。」

ギル子はほっぺを膨らませる。

「おい!団長にもメンツって言うのがあってだなぁ!!」

「ヴィタ...どうしてこうなった...」

冒険者は咳払いをする。

「これは十中八九、均衡の枠を超えた禁忌に触れた結果だな。」

「禁忌?」

「均衡ってのは能力が出力できる限度が決まっているんだよ。均衡はあくまで50%以下の能力下でしか正常機能しない。50%以下と言うのが能力で振り当てられた時に平等に与えられる最大値、自身の能力の正常性を保つためのこの世界の縛りなんだよ。」

「割り振られた能力が限界値の50%を上回る場合、それは何かしらのデメリットを生み出す。それ自体を禁忌と言うんだ。」

「コイツの場合、生死の狭間で咄嗟に超えちまったんだよ。踏み入れちゃいけない領域にな。」

「で旦那、ソイツをどうすんだ?俺じゃあこの宝石は砕けないぞ?」

「ありがとう、でも」

「「僕ら」なら破壊できる。」

「ん?そうか、それはぜひ見てみたいね。」


俺でも破壊できない黒髪の均衡をどうやって破壊するつもりだ?


「すまない、それはダメだ。」

「残念だな。」

「村へ先に帰っていてくれないか?報酬なら村では用意する。」

「あーいらねぇよ地龍の死体くれるんならな、」

「ああ、好きにしてくれ。」


ジジ...

(皆んな聞いていただろう?)

(集まれ、ヴィタが生きてた。)

(リエナは準備しろ。)

("禁忌"を引き起こす。)

((((了解。))))


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

登場人物

ヴィタ・エネディクト...小柄な黒髪の少年。

均衡名[結晶化]

エンナ・イーファ...赤髪の少女。

均衡名[点呼]

テネ・ウィザード...子紫色の髪の少女。

均衡名[寝ン無]

エルナード・グランド...大柄な少年で青柳色の髪の少年。

均衡名[光盾]

リエナ・バック...翡翠色の髪の少女。

均衡名[八岐大蛇]

アルセ・ユーベン...白髪の少年。

均衡名[ ]


冒険者

灰色の髪色をした中年男性。

鋼鉄の鎧で身を纏い、剣を巧みに操る。コロシアムの元王者。

均衡名[強器]


ギルナ・コバルナ

桃色の髪の毛の若い女性。

聖職者で作中に出てくる神を信仰している。

均衡名[緑化]


謎の少女

ヴィタの夢に出てきた少女。

[ ]


ケイツ・エネディクト

ヴィタの父親で村の地主ユーベン家と深く関わりのある人物。




































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