27.ハーレム完全体
宿の改装の話は長く続き──……。
何とか皆の意見を一つにまとめ上げ、ジーナがそれを図面に書き起こしてくれた。
ぼくのかんがえたさいきょうのくろねこていである。
最終的に二十階立て地下三階で収まったらしい。どこの高級ホテルだ。
そんなこんなで、やっとこさ話し合いを終えることができた。
仕事は終えたとばかりに皆揃ってぞろぞろと宿の屋上から引き上げてしまったため、俺は一人寂しく後片付けをして、晩飯の残りを食べるのであった……。
そして全てを片付けて、ようやく入浴。
冷たい水を頭から浴びると、話合いで加熱した脳がすぅっと冷えていく……。
宿の改装の話が頭を過ぎる。
あの図面をさらっと引いたことからしても、きっとジーナは本当に建築工事ができてしまうのだろう。
上手くいけば、本当に最高の宿屋が出来上がってしまうのだろうか。
……そうなればいいと思う。皆に残していけるものは、価値あるモノの方が良いのだから。
***
「あっお兄ちゃん。今日は絶対わたしと寝てもらうからね?」
「ぐるるるっ……だんなさまはなーちゃんとねるのです……!」
風呂から上がって部屋に戻ると、俺のベッドの上でキャットファイツをしているエウリィとジーナがおりましたとさ。
エウリィがマウントに立っているあたり、ちゃんとジーナは手加減しているようだ。
「亭主……今日こそはちゃんと言い聞かせてやってくれ」
お嬢様もちゃっかり部屋の隅っこに居た。
ちなみに三人は昼間に買ったお揃いのナイトウェアを着てくれていた。
俺が選んだジェラ ケのモコモコパジャマに近いやつだ。
オタクの諸兄が大好きなアレな。勿論俺も大好きさ。
なので了承も得ずに皆の分を購入した。エカーテさんの分も忘れずに買った。
「……何をジロジロ見ている。これは亭主が買ってしまったから仕方なくだな……きゃっ!?」
口を開くとツンしか出てこないお嬢様を抱え上げて、ベッドへと運ぶ。
もうね、こんなもん皆で仲良くおねんねするしかないんですわ。
ふわふわでもこもこな美少女×3とおねんねとか、男の夢なんすわ。
ほらほらエウリィもジーナも寄って寄って。
「私はいいっ! いいから!」
「もー、仕方ないなぁ……。狭いけど我慢するよ」
「ぐぬぅ……。し、しかたないですね……。なーちゃんもゆるしてあげます」
有無を言わさず俺はお嬢様を抱いたままベッドインした。
お嬢様は寂しがり屋なので、こうでもしないと気が済むまい。
流石に四人でシングルベッドは無理があるだろうが、内三名は子供だし何とかなるだろ。
そう思って腰を沈めた瞬間──大きくベッドフレームが軋んで、ミシリと嫌な音が聞こえてきた。
あっ、ちょっと待って、これはヤバ──、
「わっ!」
「ぎゃっ!?」
「きゃああっ!?」
バキンッと大きな音を立てて木製のベッドフレームが真っ二つに折れてしまい、全員体勢を崩してベッドから床へと投げ出されてしまった。
俺はすかさず少女三人分のクッションとなる。ぐえっ。
お尻の柔らかさが最高だぜ、へへっ。
「ふっ……くふふっ! あははっ! べ、ベッド壊れちゃったよお兄ちゃんっ」
「笑い事じゃないぞエウリィ! だから私はいいと言ったのに!」
「だ、だんなさまとのあいのすが……!」
もともと古い物だったし、重量オーバーでお陀仏になるものもやむなしか。
やれやれ、リノベする際に備品類も新しく作らなきゃダメだな、こりゃ。
ところでお嬢様、もう少しお尻にも肉を付けた方が宜しいかと存じ上げ候。
「きゃあっ!? ど、どこを触ってるんだ!」
だってお尻が顔に乗っかってるんですもの。
*
ほっぺたに紅葉マークの勲章を得たぜ。
「全く、この変態め……!」
「なんでレーヴェもだんなさまもうれしそうなんですか?」
「あれはああいうプレイなの。わたしたちには真似できないから、他の路線で勝負しなきゃダメなんだよ」
「ヒトはごうがふかいいきものですね……」
壊れたベッドフレームを片して、マットレスのみを空き部屋から拝借してきた。
床を片して二つ分のマットレスを敷いて、疑似ダブルベッドの設置完了だ。
これで皆を侍らせられるぜ。
そして──左腕にジーナ、右腕にレーヴェ、そして俺のお腹の上にエウリィという無敵の布陣が完成した。
ハーレム完全体だな。エカーテさんを加えて究極体に進化できる日も近いかもしれん。
「あの、ふくをぬいでいいですか? なーちゃんふくがきらいなんです」
「駄目に決まってるだろうが! お前は本当に人の話を聞いてないな!」
いや、レーヴェ。世の中には裸族という人種もいてな。
私室では常に全裸でいないとストレスを溜めてしまうんだ。
「そんなバカな話があってたまるか!」
「あー、ママも暑がりで人の目がないところだとすぐ薄着になるから、気持ち分かるかも」
何ィ!? エウリィその話もっと詳しくお願いします。
「薄着とはレベルが違うだろうが! おい馬鹿っ!? 脱ぐんじゃない!!」
「だってゴワゴワしてるんですもん。このままじゃねれないですよ」
「ジーナが脱ぐんならわたしも脱ぐっ」
モコモコパジャマは哀れにも部屋の片隅へぽいっと脱ぎ捨てられてしまった。
そして全裸少女×2が現れた。モコモコパジャマ……似合ってたのに……。
悲しみ……。
「馬鹿っ! 馬鹿ものどもっ! 亭主の目の前で服を脱ぐんじゃない! お前たちは恥じらいというものが無いのかっ!?」
「うるさいですね。レーヴェもぬいだらいいじゃないですか」
「そーだよ。皆一緒なら恥ずかしくないよ」
「なっ、なっ、なっ……!! 亭主!! なんとかしてくれっ!!」
いかん、どえらいことになっとる。
ヌーディストビーチかここは。
やい裸族の少女たちよ。
あまり他人に自分のヘキを強要するもんじゃないよ。
「だんなさまもぬいだほうがいいですよ。ねるときにはだがみっちゃくすると、きもちいーですよ?」
「お兄ちゃんも脱ご? ほらほらっ」
全裸少女たちが襲い掛かってきた。
あっ、ダメっ、脱がさないでっ。
えっちっ。
「あ、あわわ……っ!!」
俺は成すすべなく衣服を奪われてしまった。
暴漢に襲われたエロゲ女主人公の気分であった。
そしてお嬢様は手で見ないようにしていたが、指の隙間からバッチリ俺の痴態を見ていた。
お約束であるな。
「なんてことを……っ! こんな変態たちの魔窟にいられるかっ! 私は部屋に帰らせてもらうぞっ!」
「ダメだよレーヴェちゃん。皆で仲良くしないと」
「くやしいですが、だんなさまがいちばんのぞんでいるのはレーヴェのようですからね。にがしませんよ」
「ひゃう!? ま、待てっ! 私は別に亭主に望まれてなど……」
ふーっ、全く、勘弁してほしいんだぜ。
あくまでエロゲのCG回収くらいの気持ちなのよこっちは。
「なんでそんな笑顔なんだ! 馬鹿っ!」
だってさぁ、仕方ないじゃんね。
なんかもうそんなふいんきなんだもの。
ほらほら、あんまり騒ぐと近所迷惑になるから、仲良くしようね。
「観念してねレーヴェちゃん」
「なにをそんなにいやがってるんですか」
「や、やめろっ! 乙女は軽々しく殿方の前で肌を晒してはいけないんだ! あっ、あっ、あっ……!」
イエスロリータノータッチの法則に従い、俺にはロリータたちの暴虐を止めることなどできなかった。
「やめろぉーーーっ!!」
南無。
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