モフェアリーVSタラモピザ
蘭野 裕
希瑠子の話
第1話 ふわふわ
きのうの帰り道に、とっても可愛い生き物を見つけたの。
ちかごろ噂の「モフェアリー」だよ!
子リスのぬいぐるみみたいな……というと分かりやすいかな。
ちっちゃな体におっきなしっぽは、ふわっとまんまるくて真っ白。
そうそう。頭のてっぺんは一匹一匹違う色で、とってもカラフル。ウサミミみたいな出っぱりもあるの。お顔には2つのパッチリうるうるクリスタル。
ねえ、しかも2匹いるんだよ。
良かったら見にこない?
……え、1匹もらってくれるの?
お察しのとおり、里親探しを手伝ってほしいって言おうとしてた。
あなたが飼ってくれるなら安心だよ。
1匹はこのままうちで飼いたい。
うん、オスメスも分からないし、増えすぎたら困るでしょ。
初めは1匹飼いにしようと思って。
* * *
うれしい!
友達が家に来てくれることになり、お昼にふたりで食べようとピザを作りはじめた。
具を並べているところで玄関のチャイムが鳴った。
手を拭いて、この間プレゼントにもらったサマーニットを羽織り、ドアを開ける。
「えー! それボクが編んだ服だよね。似合うー」
「ふふ、おかげさまで」
爽子は手芸が得意で、よく服を手作りしている。おなじ絵本作家のファン同士、しかも住所も近くて知り合いになった。
「タラモサラダ、良かったら食べて」
「わ。ありがと。ピザに乗せてみようかな」
「いいね!」
タッパーを受け取り、奥の部屋へ。
「希瑠子の部屋、またぬいぐるみが増えたんじゃない?」
「前からあったよ。モフェアリーのおもちゃにどうかなと思って物入れから発掘したの」
じつは仕舞い忘れただけ。
タラモサラダを薄くピザの上に乗せながら、何気ないおしゃべりにチクリと胸が痛む。
爽子は多種多様な針と糸や布地や作りかけの物をきれいに収納できる、整理整頓の達人でもある。
「閃いたらすぐ作り始めたいから」と言っていたが、何ごともきちんと準備したい性格ゆえだ。
私の部屋は乱雑にみえているだろう。
そんなことより。
見よ、この焼く前から美味しそうなタラモピザを! オーブンに入れ、スマホにアラームをセットした。サラダの残りは冷蔵庫へ。
さあ、本題に入るとしましょう。
「じゃーん! この箱の中身が、さっきお話ししたモフェアリーです♪」
とりあえず頂き物のお菓子の大きな箱を急ごしらえの飼育箱にしていた。なかにはエサ入れとベッドとトイレのつもりで、箱や仕切りを設置してある。
ふたを開く。
2匹ともピクっと背筋をのばしたと思うと、同じすみっこにくっついて逃げこむ。
Lサイズの鶏卵くらいなしっぽが2つ、2匹の本体をほとんど隠してしまった。
えさは順調に減って残りはこぼれ、きれいなトイレの傍にフンがころがっていた。
危険がないとわかると2匹はそろって顔を上げる。
「本物、はじめて見た。可愛いね!」
「頭の色から、モモちゃん、フジちゃんって仮の名前をつけたの」
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