昔話

old tales.1 成長期

 全てを拒絶された。

 お前は生きていることが間違っている、と言われているような気分だった。


 いつからか、何をするのが正解なんだろう、と思うようになっていた。

 生まれたことを拒絶されていた、ぶっきらぼうと聞かされるまで、周囲との多少の壁もすぐに取り払える薄い物だろうと思っていた。

 実際には深く根を張った分厚い断材が、自分の目はどこにでもあるただの壁だ、と視覚していたけれど、わかった気になっていたのだと想う。


 生まれてすぐに、孤児院に出されたらしい。

 少なくとも自分の出身はどこか、と聞かれたらそうとしか答えようがないから自分にはこれ以外に選択肢がない。

 そして孤児たちの中でも一際孤立していた私は、家族の円には入ることができず、疎まれていた。


 最初からそうだったとは限らないけれど、気付いたときには自分から外野へと歩きだしていた。

 どういう理屈かは分からないが、そうしていた。

親切心とか、その他の優しさなり、そういった気持ちを持った職員たちからも嫌われて育った。

 自分が被害者だと言いたいわけでもないのだが、周りからはただ『ムシロチ可哀想な子』を演じている、そう思ってもらおうと生きているようだ、と言われた。

 どこかがおかしくて、人と考え方が違うのだろうと気づかされてからは、この話をだれにもしたことはない。


 9歳になった日

 その日以降、図書館に籠るようになった。

 そしていつも図書館にいる自分を、周りは "アハマカリル無口で愚か者"と呼んでいた。


その時には自分の興味は『マドラサ学ぶ場所』にあって、誰から何と呼ばれていようと何も感じなかった。

 人間関係における感情は欠如しており、幼くしてその雰囲気を感じ取らせる言動がきっかけで、ほとんどの職員が私を嫌った。

 その言動がどういったものかは分かりようがないけれど、きっと手を振り払って周りと遮断するかのように壁を自分が創ったんだろう。


 そして12歳になるその時まで、親しくしてもらった覚えはなかった。

 

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