機種変

初めて携帯ババアの話を聞いた翌日、Nは学校の友達イツメンに携帯ババアの話をしました。

石川県にしては珍しくカラッと晴れた日のお昼休み。


「ねぇ、知っとるけ、金沢駅の怖い話ねんけど」


友達はみんな携帯ババアを知らなかったようで、不安げな様子で話を聞いていました。けれども話が終わると「それだけ?」という空気になって、「ありえんし!」「なんなんんそれ~!」と言って笑いあっていました。

やっぱり「貸すと身内に電話をかける」というのが都市伝説としては恐怖度が低く、さらには、ちょうど学校で「内灘霊園」にまつわる怖い話が流行っていて、そっちの方が断然怖かったのです。(今でもネットで調べるとすぐヒットされるほどです。)


すると、別グループにいた、最近大学生の彼氏ができたという陽キャグループに属しているMちゃんが話しかけてきました。


「え、私それこの前話しかけられてんけど」


バカにしていた携帯ババアが、現実になった瞬間でした。


「か、貸したん??」


携帯ババアに携帯を貸すとどうなるか、それは息子に電話をする—―

本当にそうなのかそれだけなのか、含めた質問でした。


「充電切れとって貸さんかった。え、ヤバいけ?」


一瞬にして生まれた緊張が一瞬にしてなくなりました。

本気にはしていないふりをして、実は心の底で期待をしていたような、

でもそれを表にはだせないような思春期特有のあの感じ。

「ちょwwそんな馬鹿みたいなことありえんしww」という空気感。


「なーんや、びっくりしてんけど」

「よかったじ!貸してたら電話されとってんよ!!」

「電話されるなんて超こわーい!」


現実にはいるけれど、貸さなかったからなにも起きていない。

そのことに安心してみんないつもより声が大きく、笑い方も大げさになっていたそうです。


「え!マジ?貸さんくてよかった~!」


Mちゃんは素直な女の子だったので、携帯ババアの話を知ると怖がっていました。

怖がっている様子がおかしくて、誰かが冗談でこういったそうです。


「てかMちゃんがこの後、学校来んくなったらめっちゃ怖くないけ?」


本当に冗談でした。その場のノリででた言葉だったそうです。

けれども、Mちゃんは学校を休みがちになり、3か月後には学校に来なくなりました。

携帯ババアに携帯を貸していないのもかかわらずです。

NはMちゃんと話す機会は少なく、そもそもグループが違ったためどうして学校に来なくなったのかはわからずじまいでした。


Nのバイト先では携帯ババアは「お姉さんだった」「子どもを病気でなくした」「貸すと呪われて死ぬ」と、様々なパターンで話されていました。

もしかすると「声をかけられた時点でもうダメだった」なのかもしれない。そう考えたそうで、Nと学校の友達イツメンの間で、携帯ババアの話は意識的にしないようになったそうです。


以上が、Nから聞いた携帯ババアの話になります。

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