雷雲 (Hi-sensibility)
春嵐
第1話
遠くで、雷が聞こえる。
彼は、大丈夫だろうか。考えるだけで、今この状況を抜け出せるわけでもない。授業中。
意味のない塾だった。どんなに金を積んでも、わたしの頭は出来があまり良くない。おそらく、箸にも棒にもかからないだろう。
それに比べて、彼は。頭がいい。器量も良い。
彼とわたし。どっちの人生が、幸せだろうか。ばかなままひたすら目の前で金を積まれて英才教育の紛い物を流し込まれる生活と。才能と英気に溢れ自らの世界を切り開いていく雷のこわい生活と。
わたしのこの金を流し込まれる生活は、数年ちょっと耐えるか育て主が諦めれば終わる。彼の雷に対する恐怖は、たぶん死んでも消えない。
塾。つまんないな。彼と一緒にいたいな。遊ぶんじゃなくてもいいから、彼の隣にいたい。彼が、わたしになんとなく気を遣ってくれるのを感じて、やさしい気持ちになりたい。一方的で相互非互恵的な、わたしにだけ得のある好意。こういう考え方をするからわたしはばかなんだ。
でも。
ばかのほうが、たぶん。彼の人生よりは、恵まれていると思う。やっぱり。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます