The Power Of Children Is Limitless
能依 小豆
第1話 いざ修学旅行
今から約百年前、最も多くの被害を出した戦争があった。その戦争では、有史以来初めて核が使われた。戦後、その戦争に勝った国々はこぞって手に入れようとした。それ以来、核をもつ国は、核をちらつかせて周りの国を威嚇している。これは、そんな悲しき世界の悲しき事件のお話だ。
☆
「おい、鉄也、明日遅刻すんなよ?」
「何言ってる、秋斗。この僕が修学旅行という一大イベントに遅刻するわけがないだろう。そっちこそ、興奮で夜遅くまで起きてて寝坊しないようにしてくださいよ?」
「俺の場合はぜってーねぇとはいえねぇな。気をつけるわ。サンキュ。でもよぉ、朝八時に空港って結構キツくねぇか?」
「ええ。ジュエラルに行くためにはいくらアジアとはいえ四時間ほどはかかるから、妥当な時間とも言えるが、小六には少々きついだろう。特にいつもギリギリの女子やお前みたいなのだと尚更だな。」
秋斗は、いつも遅刻ギリギリで登校してくる。鉄也はそれが心配だった。
「余計なお世話だよ。確かジュエラルって人口世界一のチネアの奥あたりだよな。言語は…なんだっけか。」
「共通語はお隣のチネア語、その奥のコレア語、少数だがジェパン語もいけるらしい。」
コレアは、鉄也たちの住む国、ジェパンの隣に位置する国だ。
「おぉ、そうだったな!すげえな鉄也。んじゃあ俺はまだちょっと明日の準備が残ってるから帰るわ!また明日な!」
「おう、寝坊すんなよ」
世論には知られていなかったが、今、ジュエラルはチネアとは反対の隣に位置するカブリノとの関係は戦争一歩手前までの最悪な関係だった。だが、それは彼らが知る由もない。
☆
「おーい鉄也!おんなじ電車なら一緒に行こうぜー」
「おはよう。秋斗。余裕を持って家を出れたようでなにより。これなら他の生徒を待つ時間が長そうだよ。荷物忘れはないですか?」
「安心しろ。準備は万端だ。昨日の夜も、今日の朝も確認済みだ。」
「それならいいんだが。」
そんな話をしながら電車に揺られていると、気づけば空港だった。
「空港って案外近いんだな。俺もっと遠いと思ってたぜ。」
「僕もだよ。こんなに近いとは思わなかった。」
そうなのである。鉄也たちの最寄駅から空港までは三十分ほどなのである。そして、二人が出た時間は集合から二時間近くも前の六時過ぎだったため、七時前には空港の集合場所であるエントランスについてしまった。二人は後一時間近くある時間をどう待とうかと思い、屋上階にある滑走路が見えるラウンジスペースに行こうと決めた。
「朝の外の空気は気持ちいなぁ。お、あれ今から飛びそうだぞ。」
「あれはさっきエントランスで放送されていた、六時五十三分離陸のムレイベイ行きの飛行機だと思うぞ。ほら、加速し始めた。おー飛んだー」
ちょうど、大手飛行機会社のベーイング949が離陸したところだった。この飛行機は、ジェパンの大手国際線の旅客会社「ASA」の運行する飛行機だ。ジェパンには他に、国内専用の「BUL」もある。主にこの二つがジェパンの飛行機の八割を占めている。
ちなみにこの空港のすぐ隣には、ジェパン国空軍の基地があり、滑走路を一部共用として使っている。この会話の前にも何機か戦闘機が飛び立って行った。この国の戦闘機の水準は世界的に見てもかなりハイレベルだ。今言われている最強の戦闘機はF-72という戦闘機だが、この戦闘機をジェパンは五十機ほど有している。これは、現時点で世界で一番多く保有している。
「おい鉄也。あの飛行機ちょっと面白い色してるなぁ。緑と茶色のぐちゃぐちゃした模様の飛行機なんて面白くないか?」
「あれは空軍の輸送機のC-8だろうな。あれには空軍と陸軍の兵隊がパラシュート降下で敵地に奇襲するための飛行機だったはずだ。」
「へぇお前は物知りだなぁ。俺の質問になんでも答えてくれるのはすげぇぜ」
「ありがとう。好きなものはとことん調べる性格なのでね」
そう。鉄也は色々なことに興味を持ち、興味を持ったものはとことん調べるタイプなのだ。そして、集合の時間が迫っていた。
「お?そろそろ時間じゃねぇか?鉄也、行こうぜ」
「秋斗、気づくの遅い!ちょっと間に合うかわかんないから走るぞ」
「おう!」
そんなこんなで、二人の修学旅行は幕を開けた。これから向かう先で戦地に駆り出されるとは知らずに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます