タカナシ怪奇譚 一戦場公園
タカナシ
『一戦場』
こんばんはタカナシです。
これは私の地元で、子供の頃に友人が体験した話です。
ですが、この話、一番不思議なのは。いえ、それは最後にしておきましょう。
舞台は千葉県南房総にある魚見塚一戦場公園という場所なのですが、この場所は、山の上に位置し、近くには魚見塚展望台もあり、私の街を一望できます。この一戦場という名前の由来は、その昔石橋山合戦で敗れた源頼朝が安房に逃れて来た際に、この場所で地元の豪族との戦いに勝って天下取りの足掛かりを作ったという歴史からなのです。
こうしてみると、立身出世物語、追放からの再起の場所として美談とされそうですが、まごうことなき合戦の地で多くの方が亡くなっている場所なのです。
「一戦場は(幽霊が)出るから夜に行くな」
地元の人間は皆、子供たちにそのように言います。
ですが、子供というのはそう言われれば言われるほど行ってみたくなるもので、なぜか銀玉鉄砲を持って、皆でサバイバルゲームを夜にしに行こうとなりました。
幽霊と出会う恐怖もありますが、普段は遊ばない夜に遊ぶという誘惑に負けて私たちは一戦場公園へと赴きました。
先に申し上げますと、私は運動音痴です。サバイバルゲームなんてやったらいの一番にやられます。
このときも速攻でやられ、すぐに公園の明るいところで待機。
他の友達たちは、まだ周囲の藪や木々の中に隠れていました。
そんな中、最強各の一人であるS君が青い顔をして、無防備に私の前に現れ、皆にサバイバルゲームをやめて帰るように言うのです。
こういうの最弱の私が言っても効果ないのですが、最強各が言うと、何かあったのだなと思われますよね。負けてもいないですし。
それで、急いで皆で帰ったのです。
その日はそれ以上S君が口を開くことはなかったです。
翌日、S君に何があったか聞くと、サバイバルゲームで隠れていると、何やら『ガッシャガッシャ』と大きな足音のようなものが聞こえて来たそうです。
それで、誰か敵が来たのだと思って、身を潜め、こちらから撃つ機会を伺っていたそうなのですが、そこでオカシイことに気づきます。
私たちは誰一人、そんな『ガッシャガッシャ』と音が出る服なんて着ていないですし、そもそもサバイバルゲームをするっていうのに、そんな目立つ音がでる服なんて着ません。
それで、オカシイと思ったS君は音がする方を見て見ると、そこには、
下半身だけの武者が歩いていたそうです。
ガッシャガッシャというのは甲冑がすれる音。
それに気づいたS君はそのまま、その下半身だけの武者が通り過ぎるのを息を殺して待ったそうで、完全に姿が見えなくなると、まず目立つところに居た私の元へ駆けつけたそうです。
こういう噂は、調べると多くの方から聞くことができるので、私の街ではかなりメジャーな怪談なのです。
さて、しかし、この魚見塚一戦場公園の怪談。地元では大変有名なのですが、ネットで調べても一向に出て来ないのですよね。
情報統制でもされているのではないかというレベルです。
ですが、ひとつ心当たりとしては、この幽霊によっての被害は1件もないのです。
幽霊を目撃することはあれど、襲われた、行方不明者が出たなどの噂は全くなく、ただただ、そこをうろついているだけの幽霊なのです。
もしかしたら、そんな幽霊たちをそっとしておいてあげたいという気持ちから、ネットみたいな場所には誰も載せないのかもしれないですね。
もしくは軽々しく、ネットで流布していると――――
おや、誰か来たようですが、いやにガシャガシャ五月蠅いですね。
これから様子を見てきますが、この小説を読んだ皆様も、是非、ご内密に。
タカナシ怪奇譚 一戦場公園 タカナシ @takanashi30
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