第13話 つれこみやど

「やだよ、恥ずかしい」

「だって先生のアパートお風呂ないでしょ、汚れたらどうするの。パンティー履かないでお風呂一緒に行く? 今やってきましたってみんなに見せびらかすの、ばれちゃうよ」


 しんこ先生は言葉に詰まった。

 亮は、しんこ先生に「連れ込み宿」に行きたいと言ったのだ。そもそもその言葉を教えてくれたのは、なおだったけれど、連れては行ってくれなかった。


「ね、行ってみたくないですか。なんか言葉がいやらしくてドキドキしませんか」

「それはそうだけど」

「一回でいいから、次からはアパートでも図書室でもいいから」


「普通の宿とかじゃだめ? 雄琴とか有馬とか」

「いいけど、人に会うよ、兄妹ですって言って布団汚したら恥ずかしいでしょ」


 亮は、間宮を犯したときの出血の量に戸惑った覚えがある。しんこ先生もそうだったらめんどうだな、そんなことを思ったのだ。けれどそこまではさすがに言わない。


 結局しんこ先生が折れて、二人は夕暮れの街を歩き花街にある宿に入った。

 昼間は亮でも恥ずかしい、しんこ先生はなおさらだろう。ということもあって今まで河原町から鴨川とデートコースで時間をつぶしていた

「すごい、お風呂がある」

「はずかしい、なにこの鏡張り」

 あれだけ嫌がったくせに、部屋に入ったら、しんこ先生の方がはしゃいでいる。


 違うかも、しんこ先生は三条京阪で会った時からはしゃいでいた。

 加茂川べりでも、おしゃべりだった。

 もしかしたら、今から起こることへの期待と不安で感情が高ぶっていたのかもしれない。


 亮が後ろから抱きしめると、しんこ先生は急におとなしくなった。亮の方が一回り以上年下なのだけど、身長も経験も上だ。

 初夏らしい明るい水色のワンピース、亮が背中のファスナーを腰まで下げるとしんこ先生は亮の方を向きワンピースを足元に落とした。


 今日はさすがにパンティーを履いてはいたけれど、透けて見えないようにか、普通のベージュだった。

 しんこ先生が、ごめんね可愛くなくてって謝るのがおかしかった。


「しんこ先生の見たい」

「亮くんも脱いでくれたら、一人じゃ恥ずかしい」



「一緒にお風呂入ろうか」

「やだ」

「なんで」

「ばあちゃんの遺言で、男と一緒に風呂に入ってはいけないって」

 亮は大笑いしてしまった。


 風呂上がりのしんこ先生の体はいい香りがした。

 時間はゆっくりとそして情熱的に過ぎていく


 その瞬間しんこ先生は、亮にしがみつくようにようにまわした腕に力を入れた。



「ほんとよ信じて、処女だったんだから」

 終わった後、布団はきれいなままだった。心配していた出血は、なかった。亮は不思議な気がしたけれど、ほんの少し胸をなでおろした。


「うたがってないよ、そんなこともあるって本に書いてあったから。しんこの最初の男になれてうれしいよ」

 亮はしんこ先生をぎゅっと抱きしめた。


 実際のところ彼女が処女でも処女でなくてもどうでもよかった、どうして処女にこだわるのか。すでに処女をありがたがる気持ちなどなくなっていた

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