YS019  動き出したイベント

*ユキ視点




「よっ、ほっ、どっこいしょ〜!」


 まだ日も登らぬ早朝。私は1人ゲームをしている。RBGをできる時間にも限りがある私にとって自由な時間というのはまだ那由花の起きていないこの時間や夜になる。そこまで連続した時間は取れないがこれでも戦闘には自信がある。


 今日でイベントも3日目。


 初日と2日目で大樹攻略お終えていたユキは続いてさらに大樹の周辺を散策することにした。そして見つけた洞窟に迷うことなく突撃し、下へ続く洞窟を下っている最中だった。


 そしてしばらく洞窟を下ると目の前に現れた広場にはおびただしいほどの結晶がこれでもかと立ち並び。はるか上空に空いた穴から差し込む光を辺りにきらめかせ。正しく絶景を生み出していた。


「おお〜」


 ユキを持ってしてもなかなか壮大な景色に思わず声を漏らし、辺りを散策するようにキョロキョロしながらさらに奥に進んでいく。


 結晶でできた林を抜け、少し開いたスペースを見つけたユキ。幻想的な空間が続いていたがそんな空間の中央にあたるそこに横たわる白いなにかを発見した。

 途端にユキは戦闘服のドレスをまとい。タガーを構えた。



「まだ、目覚めには早いコケ。何奴コッコ?」


「んあ?」


 そしていきなり聞こえた声にびっくりした拍子に変な声をあげたユキ。その白い塊はゆっくりと動き出しその巨体を持ち上げた。



「ほう?人の子か。聞けば我等が領域にいきなり現れたと聞くコッコ。何用か?まあ、いいコケ。お日様が登ってから攻める予定だったコケが、今からでもよかろう」


「ん?なんの話し〜?」


 喋り初めてこちらが驚愕きょうがくしていることも気にせず語り続けるその白い塊は、最後までユキを見ながらもユキの話はガン無視するというある意味すごい芸当を繰り広げる。そしてそのまま首を持ち上げその大きな鳴き声をとどろかせた。





「コケコッコーーーーーーーーーーーーーォ!!!」


「うッ!?」



 このよく響くであろう洞窟内で突然の爆音。うるさいを通り越して一種攻撃となる鳴き声はユキに状態異常すらも引き起こした。


「これでそなたらはいずれ地上堕ちるだろうコッコ」


「え〜!!なんて〜??」



 ユキの耳は先程の爆音で未だ耳鳴りの最中だ。


「その前にそなたから堕としてくれるコッコ!」


「だから聞こえないって〜!!うわっ!!?」



 ユキ目掛け飛ばした羽を目眩しにその白い塊はいつの間にか別の姿へと容姿を変えていた。



「行くコケ」


「おお〜。綺麗」



 氷像でできたかのようなガラスのような羽。1枚1枚がおり重なりながらも崩れぬその容姿にユキは見とれる。


「じゃあ、私も〜。【私と一緒に踊りましょう?】」


「ほう?」


 ドレス姿ではあるものの。自身にバフをつけるため技を唱える。ドレス姿はそのままに、ユキの周りにはキラキラと粒子が舞い始めていた。

 そんなユキを見てその氷像は珍しいものを見るように鳴く。


「そなた。それをどこで手に入れたコケ?」


「秘密」



 両者同時に飛び出し瞬く間にあたりは氷が吹き荒れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る