YS004  最強と呼ばれた「白雪姫」のお話

 Reality barrage Gamers。このゲームは幾度となく進化を繰り返し新たな要素がプレイヤーの手により発掘、発信されていく「革命」を繰り返すゲーム。

 プレイヤーたちはスキルを集め闘技場と呼ばれるPvPにてランキングを競い合う。今はまだ、そう思われていたゲーム。少なくともがゲームを始めるまでは。だがしかし、そんな彼女がRBGを始めるのはまだまだ先の未来の話。


 そんな本軸とは少し前のRBGに最強と呼ばれる者がいた。


 一対その他という圧倒的人数差をおのが実力で吹き飛ばしプレイヤーをほふりに屠りまくった最強にして美少女。今まででおこなわれてきた公式大会で2連覇中の覇者。

 誰もが振り向く美貌びぼうとオリジナルの雪の結晶があしらわれたドレスを身にまとい踊る戦う姿はプレイヤー達に「白雪姫」と2つ名をつけられるほど。



 本人も気品あるロールプレイをするためさらに白雪姫の名が定着し、薄水色のサラサラとしたロングヘアをなびかせるその彼女の名は「ユキ」。


 彼女もこのスカイスクランブルに参加していたプレイヤーの1人だった。





* >>ユキ視点





「ん〜。他プレイヤーと協力して街を作る…。のは別にほかの人たちで出来そうだよね〜。となると何かしら他にもイベントみたいなのがあると思うんだけどなぁ〜…」


 と言いながら浮島ういじまぐんの中央にある巨大なひとつの島。中央にさらに巨大な大樹たいじゅを持つ明らかに重要な島。そしていかにもこの開けた土地に街を作ってね?と言わんばかりのスペースを一通り見て回る。


 まさしく絶景、最新技術が生み出す拡張エリアは今も続々と他の小さな島々からやってくるプレイヤーを迎え入れていた。

 そんな島の中央に鎮座ちんざする大樹を見上げて考えに思いをせる。

 流石にこんな大勢に注目されてるとなぁ〜。好きに動けないし〜


 そんな私を遠巻きに見守る見知らぬプレイヤー達。既に闘技大会で2連覇をげているため知名度はそこそこ。ゆえにどこに行こうにも目立ってしまうのが悩みだね。


 まあ、本来活動範囲的にまみえることの無いよそ者的にはレアモンスターみたいな扱いをされてそう。

 今も聞こえるざわめきにうんざりし始めてきた頃、1人のプレイヤーが私の前に歩みだした。



「おやおや、お姫様。こんなところにいらしていたのですか」


…?


「はい?どなたで?」


 唐突とうとつに話しかけられてもロールは保った私!偉い!とりあえずそのいけかない口調のあるじへ視線を向け少し強めに問いかける。こういうやつに関わりたくないのに…



「これは失礼いたしました。わたしくめはセバスと申します。以後いご見知みしきをお姫様」


「いえ、結構です」


 え?何この変なの…。普通に気持ち悪い。馴れ馴れしいし。初対面でいきなり姫様とか言われても無理無理。


 私のの辛辣しんらつな態度もなんのその。自分のロールプレイにいしれるこの執事のような格好だけの変態は、周りの目線をガン無視して詰め寄ってくる。


「ではお姫様。わたしくめと共にまいりましょう」


「いえ、結構です。遠慮えんりょしておきますわ…」


 いやいや、なんで初対面のよく分からない奴と行動しなきゃ行けないの〜。というか近い〜…


 その後もしばらく私が無視するも付きまとってくる執事ことセバスは、私の拒絶も意思ものらりくらりと…めんどくさい。


 イライラしてきた。一気に遥か上空へ飛び立ちこの変態を振り払おうと試みるも…。




「どちらに行かれるので?」


「…」



 スキルなのか、あっという間に追いつかれてしまいしつこく粘着ねんちゃくされる。


「もういいですわ。警告いたしますよ?これ以上付きまとうなら実力で排除はいじょ致します。そうならないうちにどこかに…」


 最終勧告。これ以上は生理的にも無理なので一応少しの殺気と氷弾をいくつか浮かせて相手を睨む。


「おやおや、お姫様。反抗期はんこうきですか?ダメですよそんな…」


 どうやら無駄むだみたい。ならやるしかないよね。


おろかなあなたに雪の静かなるひと時を。【私と一緒に踊りましょう】…」


 相手が言い切る前に私は戦闘服に着替える。舞い散る雪。そのままその不埒者ふらちもの目掛けて氷弾を飛ばし戦闘の火蓋が今切られた。




* >>三人称視点




 このRBGというゲームは先述した通りいくどもの革命を繰り返しゲームが進化してきた。

 防具や武器、魔力に魔法。そして飛行能力なんかも初めの初期環境にはなかったものだ。

 今の戦闘スタイルは空中戦闘がメインであり〔魔力〕を使った属性遠距離弾総称「魔弾」を飛ばして相手にダメージを与えることができる。もちろん、武器による近接攻撃などもできたり、アイテムや爆弾を使った戦闘も可能だ。


 このゲームは闘技場でバトルをするものと先述したが闘技場だけでしかバトルできない訳では無い。フィールドに湧くスキル取得ができる「オーブ」をめぐって日々そこかしこで戦闘が繰り広げられていた。

 また、闘技場以外で倒された場合でもランキングが移動する。つまり必然的にランキング上位は狙われやすくなるのだ。


 これもそんな戦闘に過ぎない。



 両者空中、ユキの初弾はまっすぐ変態ことセバスに向かうもサラリとかわされる。そして済ました顔でセバスはユキに話しかけた。


「お姫様からの手ほどき、まことに感謝致します。ではこちらも全力で」



 動き出したセバスを見たユキは自らにさらに〔飛翔〕を使い相手よりも高度を稼ぐ。そのまま自身の技を唱えた。


「【凍える世界こごえるココロ】」


「ふむ。【あなたへこの屋敷の接客を】」


 スキルにより作ることの出来るオリジナルの技。ただスキルを組み合わせ詠唱することでめんどくさい設定をショートカットして攻撃出来る方法なのだがこのゲームにおいてはかなり有効である。

 対するセバスも技を発動させ弾幕を放ちユキを取り囲むように大きく広がる攻撃は、ある途中から一気にすべての魔弾がユキ目掛けて進路を変え迫っていく。これが時差式で5回も繰り返されあたりはすぐさま魔弾だらけになった。



 そんな全方位5段階波状攻撃を見ていとも簡単に回避してゆくユキ。


「お見事。さすがお姫様。では次を【紅茶とミルクとお砂糖とティータイム】」


 さらに技を詠唱し広がる弾幕を生み出したセバス今度は6段の波状はじょう攻撃として飛ばす。そしてその6段の弾幕は先程と違い同時に3種類の別々の動きを始めユキを襲う。



 ひとつは先程と変わらないもの。

 ひとつは先程よりもさらにその後〔曲がる〕もの。

 最後は途中から全くのデタラメな方向へ飛ぶもの。

 

 逃げ場に散らばり多角的な攻撃が増えた弾幕攻撃がユキを囲むように動き始めた。





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