闇を喰らう-怪異短話集-

えんがわなすび


 おや?


 これは珍しい。こんな辺鄙な場所まで人が来るとは。

 道に迷ったのですか?


 ――なるほど。

 いつの間にか来ていた、と。


 まぁ、立ち話もなんです、こちらの席にどうぞ。


 歩き疲れたんじゃないですか?ここは想像以上に広いですから。

 紅茶飲みます?それともコーヒーが良いですか?緑茶、ジュース、酒、水…なんでもお好きなものをどうぞ。


 遠慮はいりませんよ。お代もいりません。

 さあ、どうぞ。



 ところで、あなたは何かを探しているんじゃないですか?

 ここに来られる人は、皆、共通のものを探し求めているうちに迷い込むんです。


 ――そうかもしれない、と。

 なるほど、自覚がない。


 いえいえ、なければないで良いのですよ。

 大抵の人は自ら探し求めて来ますけど。


 けれど、こうして出会えたのであれば、あなたの奥底には求めているものがある。

 ここに迷い込む人達と同じものを。


 図らずも、ここにはあなたの求めるものがきっとありますよ。

 ご満足いただければ良いですねぇ。



 さあ、では。

 ゆっくり飲みながら過ごしましょうか。


 きっと、長い話になるでしょうから。



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