弁当屋
@sokkou
弁当屋
俺は、いつも週に一回通いの弁当屋で弁当を買っている。
だが、今日は何か違和感を感じた。
しかし、その違和感にはすぐに気づく事になる。
弁当屋には、出来上がるまでを待つためにイスが5個あるのだが、左から順に、十、十五、二十の時の俺が座っているのだ。
二十歳の俺の隣の席の隣が空いているのは今年二十五歳の俺の分という事だろうか。
そして、空席の隣には確実に人間ではない何かがいた
「なんだこれは・・・」
もちろん過去の自分にも驚いたがそれよりも、謎の化け物に驚いてしまった。
こんな状況だが、俺は過去の自分に話しかけたらどうなるのか気になった。
自分と面と向かって話してみたかったのだ。
俺はまず手始めに十歳の頃の自分に話しかけた。
「俺は未来の君だよ」
何を言っているんだこいつはと言いたそうな顔をしたが、声を出すことは無かったので不思議に思った。
次は十五歳の自分に話しかけた。
「高校受験は最後の方に苦労するぞ」
やはり、表情で不審がっているのはわかるのだが声は発さないのだ。
もしかしたら、過去の自分は声は出せないのだろうか、そう思って二十歳の自分に話しかけるのはやめてしまった。
話し掛けたあと、イスに座って待とうと思ったが、流石にあの化け物の隣に座る勇気は無く立って待った。
弁当が完成して、受け取った後、俺は足早に帰り始めた。
帰っている途中、俺は色々な事を考えた。
他の人には見えていないのだろうか、空席より手前には過去の俺が座っていたが、空席より奥にいたあの化け物はまさかとは思うが未来の俺なのか。
そんなことを考えたりもしたが、それから仕事が忙しくなり、そんなことなど忘れてしまった。
そして五年後...
俺は勤めている会社で部長への昇進が決定したのだ。
これは異例の昇進だ。
俺は舞い上がって出勤していた。
そんな時だった。
信号を無視した車が突っ込んできたのだ。
引かれた瞬間、数秒が何分にも感じられた。
俺の人生はこんなものなのかと思うと、少しづつ気を失っていった。
「大丈夫ですか」
声がした。
俺はてっきり死んだと思っていたから、激しく動揺し、飛び起きた。
しかしどこも痛くないのだ。だから起き上がることができたと思うのだが、俺はこの状況がいまいち飲み込めなかった。
俺は辺りを見渡した。
見た感じは病院だが、一つ決定的に違う。
俺に声をかけたのは五年前に見た化け物だったのだ。
俺は言葉を失った。
そんな俺を見て化け物は、躊躇わず声を掛けた。
「安心してください、何もしませんよ、ここは宇宙船なので安心できないかもしれませんが」
そう言うと化け物は続ける。
「私は宇宙幸福管理局の者です、私はたまたまこの地球の幸福度調査に来たのですが、調査を進めていると、幸福度が急激に変化した場所があったので、その場所へ向かってみると血だらけで倒れたあなたがいたのです」
「見た所、この世界の移動手段である車で轢かれた不慮の事故だったようなので、私の判断で助けることにしたのです」
俺は納得はしきれていなかったが、それよりも感謝の言葉を述べた。
「本当にありがとうございます、誠に、勝手なんですが私にも仕事がありますので、そろそろ下ろしてもらってもよろしいでしょうか?」
「それが・・・」
化け物は口を一瞬どもらせたが、重い口を開いた。
「あなたが生死を彷徨っていた状態からなんとか、救うことができたのですが、その際に我々の細胞で壊れた体の組織を繋ぎ止めたので我々と同じ見た目になってしまったのです・・・」
弁当屋 @sokkou
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