幻の薬屋なんて存在しません!

昨夜 周

第0話 プロローグ


初めまして、始まりました!

お手柔らかに、よろしくお願いします!


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プロローグ




 人々は噂する。摩訶不思議な噂を。それは、この国にあるという七不思議。


1 真夜中に聴こえる不気味な笑い声


2 不老不死の薬も若返りの薬もなんでもござれの幻の薬屋


3どんな依頼も引き受けるよろず屋


4 歳を取らない幼女


5 死神が店主の薬屋


6 走るカボチャ


7 国の危機に現れる英雄



***


 

「おい聞いたかよ!あの悪名高い伯爵様が殺されたってよ!」

「おいおい、ついこの間、その伯爵様と仲がいい男爵様が殺されたばかりだろう」

「犯人は未だ見つかっておらず、と、まぁ」

「俺はいつか殺されると思ってたよ!」

「はいはい、あんたはまたそんなこと言って…でも物騒だねぇ」

「今月入って犯人不明の事件が3件だろ?」

 


「そーいや、あそこの公爵様の娘さん、回復したって聞いたか?」

「あぁ、おまえさんも聞いたのか、どうやら腕の良い薬屋がいたらしい」

「それって、あの店かい?」

「うんにゃ、あそこは死神が経営してるだろ?見たことあるか、あそこの店主。いかにも死神っぽい外見をしているのをみたぞ?」

「あれ?俺が見た時は美人なお姉さんだったぞ?」

「いやいや、わたしがみたのはこんくらいの小さな子供がいたよ。家族経営なんかねぇ」

「あの店のことはいいよ、じゃなくて、」



「ねぇ、昨日何時まで起きてた?」

「昨日?すぐ寝たけど」

「私聞いちゃった……」

「ん?聞いたって何を?」

「不気味な笑い声よ!」

「えっ、それって……」



「うわぁぁぁぁっ、い、いま」

「どうした?!」

「か、か、かかかかぼちゃ!かぼちゃが!!」

「なぁに言ってんだにいちゃん。電球だよ、電球。」

「酔いでも回ってんのかい?兄ちゃん。」



「今日の新聞みた?七不思議コーナーやってたよ?」

「え、まじで?!帰ったら見なきゃ」

「私見たわ、ほら、いくつかはこの目で確認できるやつ」

「いくつかっていうか、ひとつでしょ」

「わーわーわーきーかーなーいっ」

「うるさいよ、でもそこらかしこで話聞くよね」

「火のないところに、って言うじゃん!存在するやつぅ、テンション爆上げぇ」

「私のひいひいばあちゃんの若い時の写真に写ってた女の子、先祖様の写真にも映り込んでたのを見たんだけどー…最近私見たんだよねぇ」

「血の繋がった人じゃね?もしくはそっくりさん」

「だよねぇ」




***

 



「……馬鹿げた話だよなぁ」



 椅子に背中を預け、長い脚を組み、頭をもたげた男は、紙を頭上に掲げ呟いた。

 カランカランっと鈴の音が鳴り、扉の向こうから幼女が顔を覗かせる。



「…ただいまーっと、なにみてんの?」

「ん?」

 ひょい、と投げ渡られた紙を受け取り、読み上げる。

「あぁ、噂の七不思議コーナーがのってるやつかい」

「そ。今回はみんなのお便りコーナー付き~」

 男は椅子から降り、ずいっと体を前に乗り出した。

「どれどれ、あんらまぁ、あたしが写ってるね」

「やっぱり?何年前の?」

「……確か、この時はねぇ、150年前くらいじゃないかねぇ??」

「へぇ、こっちは?」

「これは、80年前だから最近さねぇ」

「不老不死だと、感覚も麻痺すんのな」

「……」

「それはさておき、この国の七不思議。まさかだとは思わなかったけどな」

「何言ってんだい、半分以上はあたしださ!」

「威張るようなもんか?」

「日々の積み重ねと長年の努力の結果をこうも簡単に弟子ガキに譲る気はないさね!」

「あーあー、そう嘆くな。別に俺も取ろうなんてしてねぇよ。そんなむくれんなって。」

「むぷぅぅぅ」

「可愛くねぇぞ、ったく、どっちがガキだよ」

「あんただよ!」

「だからわめくなって!」


 カランカランっ

「あ、あのー…」



 言い合いが続くと思われたその時、扉が開いた音と同時に可愛らしい声がした。男は振り向き、幼女は棚に素早く身を隠す。


 

「…いらっしゃい、お客さん。何をお求めで?」



 男は振り向き様、和かに笑みを作りつつ、応じる。



 ***




 ここは、国内にある、なんてことない平凡な薬屋。なわけがない。噂の通り、いや、七不思議の全てをコンプリートするこの店は、

 曰く、死神が店主の薬屋で

 曰く、幼女、美女がいる薬屋で

 そして、どんな依頼でも引き受ける万屋。


 この話は、そんな彼らを中心とした物語である。


 


 

 

 

 

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幻の薬屋なんて存在しません! 昨夜 周 @shuu_k311

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