第96話 番外編☆野々村奈美穂の推理
私、野々村奈美穂は、牧村好葉を疑っています。
それは、女優の花実雪名さんと仲が良すぎるということです。
勿論、花実雪名さんは事務所の先輩で、とってもキレイで優しくて演技も上手くて一生懸命で、見習うべき存在です。
そして、なんやかんやで私達にとっても良くしてくれています。
好葉が懐くのも分かります。
私だってもっと仲良くしたいです。
……でも、なんだか好葉と花実さんの仲良くのそれは、ちょっと違う気がするの。
「好葉いるかしら」
その日、仕事終わりに花実さんがうちの楽屋にきました。
「私もこのスタジオで仕事だったのよ」
「せ、雪名さん!わざわざすみません。連絡くれればこっちから伺ったのに」
好葉が慌てて帰り支度をします。
「会いたくて待ちきれなくて……」
ボソリと雪名さんが呟いたのを、私は聞き逃しませんでした。
やっぱり間違いないです。
花実さんと好葉は、恋人同士に違いありません。
お付き合いしてるんだと思います!
私は勘が結構鋭いんです。
だとしたら、好葉は良くない。
いくら個人を尊重する時代とはいえ、アイドルたるもの恋愛は禁止です。たとえそれが相手が女子でも駄目です。男女平等ってそういう事です。
ただ個人的には、案外お似合いだな、たまんねえな、なんて思ったり……してないです。
「じゃ、私お先するねー」
好葉はいそいそと帰り支度を終えて花見さんにの方へ向かいます。
「じゃーねー好葉。明日早いからねー遅刻しないでよー」
爽香なんか、呑気に挨拶しています。
さて、好葉と花実さんが行ってしまうと、私もいそいで支度をして楽屋を出ます。
そして、二人が向かったであろうほうへ走っていきます。
今日はちゃんと二人がお付き合いしている証拠をゲットして、好葉に注意しなくては。
少し行くと、すぐに二人が空いている楽屋へ入っていくのが見えました。
仕事も終わったのになぜ楽屋に?
はっ!そうか、きっと逢引ですね!こんな仕事場できっとなんかこう……なんかしているに違いありません!
二人が入った楽屋のドアが閉まったのを確認して、私はそのドアに近づきます。
中から二人の声が聞こえてきます。
「……雪名さん?ここは」
「いいから早く。好葉、脱ぎなさい」
!!そんな!こんなところで!?
私は真っ赤になってドアに耳をくっつけます。
「ほら、見ててあげるから。それとも脱がせて欲しい?」
「じ、自分で脱ぎます」
布ズレの音がほんのり聞こえます。
「脱ぎました」
好葉脱ぐの早い……!!
「ふふ、相変わらず小さくて可愛いわね」
小さくて可愛い?好葉の胸のことだろうか。確かに好葉のは爽香のなんかに比べると小さいけど、可愛いってほどでもない気がする。あと好葉の小さいとこと言えば……まさか足のことでも無いですしね。
「えっそこを踏むんですか……!」
「あら?私に逆らうの?」
「いや……その、怖いです……」
「大丈夫よ。ほら……。気持ちいいでしょう?」
「気持ち良くないですぅ」
「そう?えいっ!」
「いやっ!くすぐったいです!」
「ふふ、ほら、もっと。……もう、好葉ったら、やっぱり焦らしプレイが好きなのね」
「ち、違います!好きじゃないです!」
ねえ、ねえ中で何してるの!?
どんなプレイしてるの!?
私は好葉をそんなエッチな子に育てた覚えはありません!
中で何が起こっているのか私は氣になって仕方ありません。
踏むとか言ってたよね?焦らしプレイとかも……?
え、服を脱がされた好葉が、花見さんのきれいな足で踏まれてる……?踏まれて気持ちいいの?それも焦らしプレイとか言ってた……なにそのSMチックなやつ!好葉、踏まれて喜んでるの!?
「逆よ」
突然声をかけられて、私は飛び上がりました。
振り向くと、花見さんのマネージャーの白井さんが立っています。
「あ、あ、お疲れ様です。あ、あ、あの……逆って?」
白井さん、確かに、逆、って言ってました。
逆ってなんでしょう。
「……やだ!スカート逆に履いてた!はずかしいです!」
「ふふ、慌てん坊さんね」
白井さんは笑っています。
「雪名と牧村ちゃんここにいる?なんか、台本の読み合わせを牧村ちゃんに相手してもらうって言ってたんだけど」
「だ、台本……?」
え?もしかして、さっき私が聞いたのって台本だった……?演技?やだ恥ずかしい!てっきり私……。
「な、なんか花実さんの好葉の声ここからしてたから、気になってしまって」
私は言い訳しながらドアから体を離すと、白井さんにお辞儀をして、慌ててスカートを直しにトイレに駆け込むのでした。
※※※※
「雪名ー、何してるの?」
楽屋に白井さんが入ってきて、私と雪名さんを交互にみる。
私は白井さんに泣きつくように言った。
「白井さぁん、雪名さん、今日は手を踏んでくれって言うんですー」
パイプ椅子に手を置いて、私にその手を踏むよう命令している雪名さん。
「背中より踏みやすいでしょう」
「そんな事言ったって、折れそう感があって怖いんですよ。それに、たまに私の足を握ってくるんです」
「ちょっともみもみしてあげただけじゃない。気持ちいいでしょ?」
「くすぐったいしびっくりします」
「もう、だからあんなに弱い踏みつけだったの?好葉の得意な焦らしプレイかと思ったわ」
「違いますぅ」
私は、口をとがらせる。
白井さんは苦笑いしながら言った。
「仲が良いことで大変結構ですけど。あんまり外に声が聞こえないようにね」
「え?聞こえてました!?」
そんな恥ずかしい声が漏れてたなんて、誰かに聞かれてたらもうヤバい。
焦る私に、白井さんは優しく微笑むだけで何も言ってくれない。
「そんな事より、続きしてよ」
我関せずとばかりに雪名さんはそう命令してくるのだった。
後日、奈美穂に、「好葉って演技上手いんですね」と褒められたけど、何のことだろう。
番外編END
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