第70話 憎めない子
打ち合わせやリハはが終わって、帰りは深夜になった。
家に帰ってスマホを確認すると、マイカちゃんからメッセージが入っていた。
『インフルエンザだったんだって?あれキツイよね、ウケる。明日友達と見に行くから頑張ってね』
何がウケるのかよくわからないけど、ちゃんと渡したチケットでツアー来てくれるようだ。社交辞令じゃなかったのが嬉しい。
私はマイカちゃんにお礼のメッセージを返す。そう言えば、モデルの事を思いついたのも、マイカちゃんからシンデレラサイズモデルの件を聞いたからた。
そうだ、雪名さんにもベイビーベイビーでのモデルの件を教えよう。前に看病してくれた件も含めて、無事回復したことを電話で連絡をしたい。
あ、でも時間も遅いしな。迷惑かも。電話じゃなくてメッセージだけにしておこう。
私は明日に向けて早めに就寝した。
※※※※
私の復帰がてらのステージは無事に成功した。
ステージ成功の余韻に浸る間もなく、次のツアーは県外なのでそちらの準備に取り掛かる。
途中で生配信をし、SNSを更新し、来てくれて感想をくれたファンへのお礼メッセージを送る。
「好葉!」
「はいっ!」
急に赤坂さんから呼ばれて好葉は飛び上がった。
「な、何かありました?」
「好葉、モデルのマイカちゃんと知り合いだったの?今日のチケット渡した?」
「は、はい。何が不都合が……?」
在庫処分とか言ってたのがまずかったんだろうか。
「知ってる?マイカちゃんすっごい若い子に人気あって、フォロワー数すごいの。あと、なんかわかんないけど凄い人脈もあって」
「人脈……」
そう言えば、前に一緒に飲んだ時も、積極的に
媚売りに行ってる、って言ってたな。あれ本当だったんだ。
「今マイカちゃん今日のライブのことSNSに上げて、凄い問い合わせきてる。都内のツアー日程はもう無いのかって」
「そ、そうなの?え」
私が驚いてそう聞き返したが、赤坂さんはバタバタとスマホて調べ始めた。
「追加日程組めるかちょっと見てみるわ」
「おー、繁忙期って感じですねー」
横で聞いてた奈美穂が感心して頷いている。
「マイカちゃんにお礼の連絡してくる」
私は電波の届く所へ走っていった。
「え?お礼?全然そんな私は何もしてないよ」
電話をかけると、マイカちゃんはケロリと答えた。
「てか、意外と女性アイドルグループのライブに行くのってこっちも好感度高くなるんだよねー。男性アイドルとかだと変なファンに叩かれるし、ヒップホップ系行くとチャラいとか言われるし」
「はあ」
案外打算的で、それを私に正直に言っちゃうあたりが、私がマイカちゃんを嫌いになれない理由かもしれない。
「でも、楽しかったのは本当だよ。あと、私のプロデュースしたハンカチも匂わせしてくれてありがとね」
「匂わせ?」
そんな事した覚えはない。というか、あのハンは、結局雪名さんから返してもらっていない。
「ほら、花実雪名さんのSNSの写真で、私のハンカチ何回か見切れさせてくれたじゃん。あれ、このっちがお願いしてくれたんでしょ?」
「え、いや……」
そんな事は私はお願いしていない。っていうか雪名さんにそんな事お願いしても、ハンカチが庭の肥やしにされそうになるだけだ。
偶然か、それかSNSを管理している白井さんが何かの策略があつてやったのかもしれない。
「このっちのSNSじゃあんまり世間の反応無さそうだけど、花実さんのSNSのおかげですっごく反応良かったんだあ」
「まあ、そうだろうけど」
それを悪びれもなく私に言っちゃうんだけど、どうもマイカちゃんは憎めない。
「そんじゃ、まだツアーあるんでしょ。頑張ってねぇ」
明るく電話を切ったマイカちゃんを私は拝む。
……そう言えば、雪名さんから連絡無いな。
モデルの連絡についても既読にすらならない。忙しいんだろうか。
私はそう思いながら、みんなの所へ戻って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます