第47話 おすすめのスイーツ
「悪かった。大事なあんたらの配信ライブに、こっちの余計なトラブル差し込んじゃって。こっちも、事務所の上のほうから千奈を叱ってもらうことになってるから。事務所としては、私が歌の仕事でまた花水木組とつるむより、他と勝手にやってもらったほうが楽みたいでさ」
結音はそう言うと、突然私たちに頭を下げた。
「この事は、本当に誰にも言わないでください。昔の失言で千奈をアイドルとして潰したくない」
「だ、大丈夫です!言いません!ねえ」
奈美穂が慌ててうなずくと、結音の頭を上げさせた。
爽香も結音の顔を優しく見つめ、そして少し悪い顔をした。
「まあ、私たちがその気になれば、この事実をばらして、売れっ子アイドルの席を一つ空けることもできるんだよね~。ばらされたくなかったら……」
結音は不安そうな顔で爽香の言葉の続きを待った。
「配信ライブの時に、おいしい差し入れ持ってきてね。それで聞かなかったことにしてあげよう!」
「仕方ねえな」
ほっとしたように結音は笑った。
「とびっきりおすすめのスイーツ持ってきてやる」
「わーい」
爽香がは無邪気に飛び跳ねた。
「じゃあ、迷惑かけた」
そう言って結音はスタジオを後にした。
私たちは、花水木組の衝撃事実にドッと疲れてしまって、続きのレッスンができそうもなく、早めの解散をすることにした。
「まあでも、多分よくあることの気がする」
私は誰に言い聞かせるわけでもなく、ぼそりと呟いた。
「私たちの世界ってさ、世間に見せてるものとか、世間に思わせてるものとか、多分全然違うんだよね」
その日の夜、私のSNSに一件のダイレクトメッセージが入っていた。
差出人は千奈。今日のことの謝罪だった。
失言はするんだろうけど、やっぱり基本悪い子じゃないんだろうな、と私は思う。
踏み台の発言だって多分忙しすぎてパニックになっていたせいなんだろう。
私は千奈に問題ない旨のメッセージを返すと、すぐに再度メッセージが来た。それは、LIP-ステップの皆に相談がある、というものだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます