俺は最弱、だが最強のギルドを作らせていただきます!! 村人10人の辺境の地から成り上がる、村とギルドづくり

白鷺 潮

自立

第1話 始動:辺境に転生する

 すみわたる青い空、そして広がる草原。


「ギルド、楽しみだなぁ」


 小道を一歩一歩、味わうように踏みしめながら転生した幸せを噛みしめていた。



 転生マッチングシステム。それは、希望者同士で条件が合えば、転生先を選べるシステムだった。


 俺の名前はカイ。多忙な人生を送っていた俺に飛び込んできたのは次の募集だった。


『地方ギルド長への栄転。のんびり優雅な転生生活』


その募集を見た瞬間、俺は飛びついて転生したのだった。



 

『おっと、いいアイディアを思いついた』


 俺は立ち止まってメモを取り出した。ギルド長として、やりたいことを書きながら歩いているのだ。


 ・ Sランク冒険者を育て、魔王討伐を陰で支える

 ・ 王女をダンジョン奥深くから救出する司令を取りまとめ、恋に落ちる


 ファンタジー世界のギルド長。なんていい響きなんだろう。


 そうだった。さっき思いついた言葉もメモしておかないと。


『この私を、誰だと心得ている。新ギルド長カイとは私のことだ』

と付け足した。


 転生物のギルドの初イベントといえば、悪者からの絡まれイベント。その時のために、かっこいいセリフを思いついたら書き留めているのだ。

 やっぱりはじめが肝心だからな。


 空想しながら歩くと、時の流れは早い。あたりはいつの間にか、夕焼けになっていた。


「さてと、今夜はこのあたりで泊まるかな」


 道の先に丸太で建てられた家が4,5軒集まっている集落を見つけて呟いた。


「こんにちは」


 ガタついた扉を開けながら俺は声をかけた。


「しばらくそちらでお待ちいただけますか?」


 答えてくれたのは、金色の美しい髪をした若い女性だった。ほがらかで話しかけやすい雰囲気を醸し出している。


 俺はイスに座りながら、部屋の中を見回した。中はコンビニのぐらい広さで、古びた地図が壁には飾られていた。


『今の場所はどこだろう?』

と思いながら、サラヘイム村の場所を探した。

 

 俺の目的地はサラヘイム村。

『この道をまっすぐ進み、サラヘイム村を目指せ』

という転生直後の啓示に従ってここまで来たのだ。


 いや、それだけ?  女神が説明してくれるんじゃないの?


 と思ったものの、それ以降は何の説明もなかったのだ。

 

 受付の女性は、手が空いたようで、こちらに微笑みながら歩いてきた。俺と目があうと、彼女は軽く会釈をした。


「このあたりに宿はありますか?」


「ここに泊まれまれますよ」


 それはよかった。こんな何もないところで、転生初日から野宿なんてしたくない。


「では、1泊お願いできますか?」


「1泊ですか?」


 彼女は不思議そうな顔をしている。宿屋って、泊まる場所だよな。何でそんなに不思議そうな顔をしているんだ?


「お客さんは、どちらに行かれるのですか?」


「この先の村に行く予定です。今日はもう遅いので、ここで泊まろうと思って」


「ここの先は魔物の住処で、村はないですよ。」


「えっつ!!」


 なんてこった。道を間違えたらしい。


「サラヘイム村に行きたいのですが」


「あら、そうだったんですね」


 彼女は満面の笑みを浮かべた。よかった、場所を知ってそうだ。これで、安心して休める。


「ここがサラヘイム村です。ようこそサラヘイム村へ」


サラヘイム村!! この過疎った場所が目的地だって?


その瞬間に、俺の記憶はプッツリ切れた。




◆◆◆


「あら、『地方でのんびり生活』に応募した転生者、初日に死んだなんてことないですわよね」


「ほっとけよ。『地方でのんびり生活』といったら、ど田舎での求人という意味だろ。そんなことも知らない奴にサポートは不要だ」


「『アットホームな職場』の募集がブラック企業の求人というぐらい有名ですわよね」


「まあまあ、そうは言わずに。せっかく私の世界に来ていただいのですから、温かい目で見守ってくださいよ」


お茶をすすりながら、転生者の観察を楽しんでいる3人の神々だった。

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