第38話 番外編タコヤキ普及秘話
2023/11/03
2話を大きく修正いたしました!
先でやる予定だった話を起きている事の補足説明のために、触りだけ入れた影響で、かなり内容が変わってます。
ですがそこからさらに修正も検討してますので変わる可能性は高いです。
念の為、ご報告させていただきます…
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コナモン屋台でクロが大量注文をしたために発生した待ち時間。
その時間を利用して、オレオルは屋台の人とタコ無しタコヤキにタコが無いわけを聞いていた。
すると、クロが「あいつ…そんな適当な話を広めてやがったのか…」と呟いた。
これはその直後のお話である。
「適当な話ってどう言う事だ? 」
クロのつぶやきを拾ったタコヤキ担当の人がそう尋ねた。
クロはその質問に少しだけ考え混んだ。
そして「あいつももういねえし時効だな…」と今度は耳のいいオレオルにしか聞こえない声の大きさでそう呟いて、語り始めた。
「タコヤキが誰から伝わった料理かってのは知ってるようだから割愛するが、そのタコヤキを広めたあいつの故郷である神々の世界では、タコヤキが人気屋台料理の1つだったらしい。そしてそのタコヤキとは、タコと言う名前の神の世界のクラーケンが入った食べ物だったらしい」
「クラーケン!? 」
クロの話を興味深そうに聞いていた店主の男がそう叫んだ。
「クラーケンたぁ…か、神々はすごいもん食ってんだな… 」
「だなぁ… 」
屋台でオレオルが注文した品を作っている男達が「すげぇなぁ」と口々に言って笑った。
「クラーケンっていやぁ、人魚族の精鋭何十人とかでかかって、死闘の末にようやく倒せるかどうかって話だろ…? 」
「あぁ、だから当時あいつもクラーケンじゃ広めたくても広められないって嘆いた…文字通りでな。大号泣だった…」
クロがげんなりとしてそう言った。
「で、俺達は、材料が揃わないならあいつもさすがに諦めてくれたんだと思ってたんだが『それでもタコヤキは広めたい』とか無茶苦茶な事を言い出してな…」
「それで諦めないのすごい…」
俺は思わずそう呟いた。
「食い意地張ってたからな…そのせいでこっちはクラーケン狩らされたり、それでわざわざ海の底を探し回って手に入れてやったクラーケンを『思ってたよりタコと似てないわね? 柔らかくてとても美味しいけどこれはタコヤキのタコじゃないから使えないわ』とか何とか言って全ての苦労を無駄にさせたり…かと思ったら今度は『タコを作ろう』とか言い出したりしてな」
「…え、タコって作れるモノだったの? 」
クラーケン…に似てるんだよね?
完全にクロの愚痴だったが、聞いている人達は誰1人口を挟むことなく聞いていたので、オレオルがつっこんだ。
「神々の世界の生き物が作れたと思うか? 」
「…思いません」
「いくら俺が天才でもできない事はある」
そう言ったクロの表情は当時の事を思い返しているのかとても険しかった。
天才とか自分で言っちゃうんだ…
「そもそもそのタコの味を知ってるのがあいつ1人しかいなかったから、唯一望みがありそうな仲間の1人で、普段キメラ関係の研究してるヤツも『さすがに無理』って言ってたからな…頼まれたから暇つぶしがてらやってたが誰も本当にできるとは思ってなかったぞ」
うん?
つまり、味がわかっていれば…作れたと?
クロの事やべえやべえとは思ってたけど、クロの仲間もやべえな。
「それでなんで貝? 」
「『それならタコをつくるために食感がタコと似てるヤツを探そう』って言われたんだよ」
「うわぁ…」
すごい執念だなその人…
話から察するにアズマの国の偉い人っぽいし軽い感じで言ってそうなのも相まって、やばさが際立ってる気がする。
そしてそんな人と仲良いとかやっぱクロもやばい。
本来なら嘘だろって思う様な話なんだろうけど、なんか妙に実感がこもってるというか嘘に感じないんだよ。
俺がそう思っていると、店主らの方から苦笑いが聞こえた。
「あの御方はたいそうお転婆だと言う話だが想像以上だ」
「だなぁ」
「もしかしたら数々のあの伝説は誇張でもなんでもないのかもな…」
屋台の人達も俺と似た様な事を思ったらしく口々にそう言った。
「ねえクロ、食感だけとはいえ食べた事のない物を探すのってかなり大変だと思うんだけど、どうやって見つけたの? 」
「見つけてねえぞ」
「見つけてないの!? 」
じゃあアッキ貝とマーリ貝はいったいどこから来たんだよ。
そう思ってクロを見上げた。
するとその疑問を思ったのは俺だけではなかったらしく、クロには『なぜ』という視線が集まっていた。
「…ある日、当時人魚族の王だったヤツに招待されて人魚の国の王宮で開催される晩餐会に行った時の事だ。あいつがそこで出された特産の貝を使った料理を1口食べた瞬間『これよ! これ! 見つけたわ! 』と急に叫んだ。」
「それがタコだった…? 」
「だったら良かったんだがな…」
「え」
違うの…?
戸惑う俺達をちらりと見たクロは「本当の地獄はここからだったな」と言って、今目の前で作られている"タコ無しタコヤキ"を見た。
「『クラーケンの味のこの貝を作るのよ! それが"タコ"だわ! 』だと」
「つ、作ったのか…? 」
「馬鹿野郎、作れたからアッキ貝とかマーリ貝がこの世にあるんだろうが…だよな? 」
クロにそう聞くタコヤキ担当の目は『お願いだからそうであってくれ』と言っているようだと俺は感じた。
「あぁ、最終的にはどうにかな…ただその過程で、いざ生の新鮮なタコ貝手に入れ──ん? あぁ、タコ貝は食感がタコだった晩餐会であいつが見つけてきたあの貝の事だ──それを手に入れて、自分達で調理したら前食べた時とは全然違う別物だったり、かけ合わせるためとかで今度はクラーケンを生け捕りさせられたり、掛け合わせてみたらどっちの面影も無い新生物が爆誕したりしたが、一応タコっぽいやつはできた」
「た、大変だったんだな…兄ちゃん達」
「それでも出来たってことだろすごいな…」
屋台の人がしみじみといった様子でそう言った。
「ちなみにその過程で生まれた新生物ってのがトロボン貝だ」
「トロボン貝っていやぁあの殻が渦巻いてるやつか」
「オレはアレ苦手だなぁ…」
「オレは好きだぜ! あの苦味がいいんだよ」
「オレも好きだなぁ…」
「話してたら食いたくなったな」
「そうだな」
「この屋台終わったら海のある国に向かって移動するか? 」
「いいねぇ! 」
その後注文の品を受け取って代金を支払い、屋台を後にしたオレオルとクロ。
最後に屋台の店主からクロに「場のつなぎありがとな」と感謝の言葉が伝えられた。
だからその場ではクロの話は"よくできた創作話"とされたようだった。
そして、ひと騒動あったコナモン屋台を後にしてすぐ。
リリアさんから連絡が来た。
そのため、フライドコッコ屋台でこれから食べる分を買ってから、伝えられた宿屋へと向かう事になった。
その道中。
ふと気になったので俺はクロに尋ねる事にした。
「ねぇクロ、なんで1種類じゃなくてアッキ貝とマーリ貝の2つ作ったの? 」
「作ろうと思って2つ作った訳じゃねえ、結果的にふたつになっただけだ」
「ふたつになった?」
「片方はクラーケンの味が強くて、もう片方はタコ貝の食感が強くてな」
「あぁーなるほど」
そうなると好みが割れそう。
あぁー、だから2つのままどっちも残したのか。
「でもな、この話には最後にもう一つだけ続きがあってな」
「続き? 」
「クラーケンを倒す時に海の中だったから俺達は氷属性をメインに使ってたんだが…」
そこまで言った所でクロは言葉を切ると当時の気持ちを思い出した様で再び眉間に皺を寄せた。
一般的に超が付くほどのイケメンの部類であろうクロが険しい顔をしているのでちらほら怯えた様な視線を感じるがクロは相変わらず何処吹く風と言った様子だ。
「最後、掛け合わせるために生け捕りにしてたクラーケンが用済みになって、生け簀の中だからって事で、海の生態系への影響とかその辺もろもろ気にしなくていいから、一番楽な雷魔法一発で仕留めたんだが…」
ま、まさか…
「ねぇ、それがタコそのものだった…とか言わないよね? 」
「そのまさかだ」
「うわぁ…」
「これにはあいつもさすがに思う所があったのか『灯台もと暗し』って言って複雑そうな顔してタコの味のクラーケン食べてたな」
「とうだいもとくらし? 」
「灯台は知ってるか」
「ううん、知らない…とうだいって何? 」
「灯台ってのは島とか岬とか港口なんかにある塔みたいな建物だ。夜に天辺から灯光を放って、船舶にいるヤツらの目印になる。目印以外にも湾内に危険な海の魔獣が入り込まない様にする結界の要としての役割なんかもある。」
「へぇー…じゃあ灯台もと暗しって、灯台のもとが暗いって意味だから…えっと、近くにあるのに気づかないみたいな意味? 」
「あぁ、正確に言うと灯台のすぐ下は暗い事から身近な事はかえって気づきにくい事のたとえらしいがな」
「クロっていろんな事知ってる…」
「…無駄に長く生きてるからな」
「クロって何歳なの?」
「さあな…もう覚えてねえ」
「そっか」
オレオルはクロの悲しそうな目に気づいてこれ以上聞くのをやめた。
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お読み下さりありがとうございます!
最後の灯台のくだりは正直入れるか迷ったんですが、オレオルが灯台を知らない描写なんとなくいれたかったのでとりあえず残しました(消えてたら察してください)
そして過去以外にも結構大変な目(?)にあってた事が判明したクロですが、オレオルもいつかこのくらいクロを振り回せるようになって欲しいなと思ってます(いつになるやらw)
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