第16話 まったりと食事
あやふやな過去の記憶とネット検索を乱用して書き上げたので『全てはふぁんたじー』を合言葉にお読みください
また、誤字脱字や間違ってる所などありましたらコメ欄などで教えてください。都度修正いたします。
2023/08/23
ファイヤーオストリッチの表記を"魔物"から"魔獣"に変更、それに合わせて"魔物避け"の表記を"魔除け"に変更しました
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まだ日の落ちていない内から開始したバーベキュー。食べている内に火が落ち、辺りも暗くなり始めていた。
完全に暗くなる前にと設置された魔道具のランプ。
その光でぼんやりと照らされたテーブル周辺には、肉の焼けるいい匂いが広がっている。
テーブルの隣のバーベキューコンロではアントンが肉と野菜を焼いてくれていた。
「オレオル君食べてますか?」
他の3人から少し離れたところで、オレオルが奪い合う様にして食べている他の3人を眺めていると、アントンが追加の焼けた肉と野菜を持ってオレオルの方へやってきた。
「はい、とても美味しいです」
ファイヤーオストリッチの肉は見た目は牛みたいなのに、味はあの見た目通り鳥系魔獣肉の味に近く、【鑑定】で見た通りあっさりとしていていくらでも食べられそうだと思った。
食事が始まってしばらくして落ち着いた今でこそ普通に食べている。
だが、最初に口に入れた時は見た目が牛なのに味は鳥という違いから⋯なんだろう⋯ちょっと説明できないけど、今まで食べたことの無い味と食感でとにかく頭の中が混乱した。
美味しいんだけどね?
それと混乱しないかは別だった。
「アントンさん、焼くの代わらなくて大丈夫ですか? 」
代わって貰えればこっそりリュックの中の非常用食材焼けるんだけどな。
俺にはこの量じゃ全然足らん!
「大丈夫ですよ、オレオル君はゆっくり食べててください」
あ゛〜!!
親切で言ってくれてるのは凄くわかるけど今はその親切がつらい!! 腹減った!!
下手に食べるとスイッチが入ってしまいもっと食べたくなるので、ガッツリ食べれるようになるまで我慢してようと前菜のカルパッチョ改めサラダをちびちびと食べて空腹を誤魔化すオレオル。
最初に浄化魔法をかけているので元々生でも食べれるものだ。
なので焼けるペースはとても早い。だからきっと満腹になるのも早いはずっ…!
「アントンさん焼いてばっかりで食べれてなくないですか?」
「いえ、焼きながら私もきちんといただいてますから」
「…それなら良かったです」
よくねえ!!
オレオルはほどほどの所で焼く係をさせてもらおうと焼けた肉や野菜を瞬殺している3人を見て思った。
*
オレオルは焼く係を代わって貰えそうになるまで待っている間に、前菜をちびちびと食べていた。
だが、とうとうそのサラダが無くなってしまった。
そのため、しょうがなく他に手をつける事になった。
とりあえず1番近場にある刺身を小皿にとってソルソース(醤油)をつけてぱくり。
見た目は牛系魔獣の肉なのに、味は鳥系魔獣のあっさりした味で、とても美味しい。
さすが高級肉だって言われてるだけある。
いくらでも食べられそうだ。
……いくらでも食べれるほど量無いけど。
美味しすぎる⋯どうしよう…
もういいや、食べちゃえ…
エソル(塩)とセムティル(ごま)オイルを合わせたものに肝臓(レバー)刺につけてパクリ。
あぁぁぁ⋯うまい。
血抜きの時間を確保するために時間加速魔法使ったから少し心配だったけど問題なさそうだ。
俺これ好き。
「いい香りの油ですね」
「セムティル(ごま)オイルです」
オレオルは肝臓(レバー)が美味しかったので焼いてある方も食べてみようと思い、皿にとった。
「セムティル⋯たしか大陸の南西の方にある国で取れる香辛料のひとつでしたか⋯」
ふぉー!
なにこれめっちゃうまい!
完全に火を通すのではなく、表面を軽く炙る程度にしか加熱されていない肝臓(レバー)は予想に反してコリコリとしていた。
だが、コリコリしているのに柔らかく歯切れもいいので未知の食感だった。
「そうです、前にじいちゃんのお店の常連客さんに貰って美味しかったから…ガル爺に頼んで取り寄せてもらったんです。でも、少しだけだと取り寄せ経費の元が取れないってたくさん売りつけられたのでたくさんあるんです」
あの時ほど自分のリュックの【時間停止】と【異次元空間】と【重量無視】に感謝した日はない。⋯お金? お金はガル爺が自分も食べたいからと利益度外視で安くしてくれたからその月ちょっと節約を頑張るだけでどうにか払えた。
「ガル⋯と言うとあのガルガイアさんですか?」
「たしかにガル爺の名前はガルガイアですけど⋯"あの"って? 」
そういえばガル爺の名前見て門の兵士さんもびっくりしてたっけ。
「あの方はかつて英雄ロウルと共に世界中を巡り、その時に築き上げた大陸全土に渡る数々のコネと取引先を今でも持っていて、揃わないものは無いと言われるほどの超凄腕の商人ですよ? 」
ほ、ほえー⋯ガル爺すご⋯
道理でセムティル(ごま)オイルの時もすぐに入荷の連絡をくれたわけだ。
オレオルのその反応を見て「本当に何も知らされていないんですね」とアントンが言った。
「じいちゃん達みんな自分の過去を俺に話したがらなかったからほとんど知らないんです」
俺以外の人に話してるのはよく裏からこっそり聞いてた。
だから小さい頃に『なんで俺にだけ話してくれないの? 』って聞いたことがある。
だけど、『儂は隠し事が苦手でよくミナから怒られたんじゃ』ってわけわかんない事言って笑ってた。
『いやいや隠し事苦手とか言いながら俺に今隠し事してるじゃん!? 』って思って、じいちゃんにもそう言ったけど、じいちゃんは笑うだけで話してはくれなかったんだよなぁ。
そんなオレオルの話を聞いてなぜか何かを納得した風に「なるほど」と相づちを打つアントンにオレオルは違和感を感じたような気がした。
だが確証がなかったので勘違いだと思う事にした。
「だからたまにじいちゃんとかが偶然話してるのに出くわした時は、俺耳よくてどこにいても聞こえちゃうからよっしゃーって思ってこっそり聞いてました」
アントンはそれを聞いて案外ロウルはオレオルがこっそり聞いているのを承知で話していたんじゃないかと思ったがそれを伝えようとは思わなかった。 いつか知ることになるだろうと思ったからだ。
「おじいさんがオレオル君にだけ話さなかったのはなぜなんでしょうね」
「わかりません⋯」
オレオルはそう答えつつ先程と同じソースに今度は心臓の刺身をつけてパクリと食べた。
あ、心臓も美味しい!
以前別の魔獣の心臓を【鑑定】した時に知ったが、心臓はハツとも呼ばれているそうだ。
いったいどこで呼ばれているのやら⋯
「えっとー焼いたハツはさっき食べたから⋯(あと生で食べてないのは)⋯あ、これだ」
砂肝!
オレオルは肝臓(レバー)の時と同じものに付けてパクリと食べた。
おー。これもうまい。
「どれが1番好きでしたか?」
美味しそうに食べるオレオルを見てアントンがそう尋ねてきた。
「うーん⋯レバーですね」
「レバー?」
「あ、そっか⋯肝臓の事です」
レバーという言葉は俺の【鑑定】スキル独特の言葉なのでじいちゃん達にしか通じないのを忘れていた。
「あぁ、肝臓でしたか」
アントンは納得したようにそうつぶやくと「私は心臓が1番好きです」と言って心臓の刺身を口に運んだ。
「心臓も美味しくて俺の好きな味でした! 」
味を食べ比べるために同じソースにつけたけど、次はレバー以外は別のやつにつけて食べてみよう。
ソルソース(醤油)とすりおろしたガリク(ニンニク)のやつとか、セムティル(ごま)パラパラかけてみるとか、細い千切りにしたジャンジーガ(生姜)も合うかもしれない。
というかこの魔獣の肉が全部美味いから何合わせても良さそう。なかなかいないのにこれだけ美味しいんじゃ高級品なのも納得だ。
オレオルがその事をアントンに言うと「そうですね⋯なんにでも合うでしょうけど、個人的にはドラム肉を細切りにして、刻んだガリク(ニンニク)の入ったタレをかけてあったやつが好きでした」と言った。
「あぁ! それはじいちゃんが好きだった、ユッケっていう料理ですね」
「ユッケ⋯覚えました」
「本当はあそこに卵黄を絡ませるんですが、今日はなかったので卵なしです」
「卵黄ですか⋯たしかに合いそうですね」
「このお肉でやったらきっと美味しいですよ」
「美味しいでしょうねぇ⋯」
2人でその味を想像してしみじみしていると焼けた肉がなくなったのかほかの3人がやってきた。
「何2人とも隅でちまちまやってるのよ? 」
「お前さん見た目は完全に小さな子どもだし、言動も結構子どもっぽい時があるが、食べ物の好みは爺さんみたいだな。」
え、言動も子どもっぽい!?
「ほれ、食え! 大きくなれないぞ! 」
「むぐっ!?」
オレオルがアレクの言葉に密かにショックを受けていると口の中に焼けた大きなフィレ肉を突っ込まれた。
もぐもぐ⋯口いっぱいにお肉でしあわせ…
ぐぬぬ…子どもぽいと言われたことは気に食わないけどこの肉の味付けは美味しい。
ブラックペパ(黒胡椒)とソルソース(醤油)⋯それにこれは
「ジラギ(バター)⋯?」
「うまいだろ?」
「はい、とても美味しいです」
俺は今ジラギ(バター)を持っていないのでおそらくアレクさん達の手持ちのものだろう。
次の街に着いたら調味料系と食材を買い足そうかな⋯
オレオルはこっそりとそう決心した。
…それはそうと今の大きなお肉で完全にスイッチ入っちゃった感じするんだけど、ドカ食いして許されると思う?
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