1-3 ドキドキ、入学式
予定より10分ほど遅れはしたが、新入生のドール200名は全員、イベントホールに入場することができた。
コハルは待機室に遅れてきたせいで、連絡網において名前が目立っていたにもかかわらず、かなり前列の方に座らされてしまった。
彼女は居心地が悪くそわそわしていたが、さらに前方の席の一角では、黄緑色の髪のドールは、大胆にも脚を組み、腕で枕を作ってあくびをしていた。それと対照的に、綺麗な姿勢で一ミリも動かずに静止している生徒も何人かいる。
何かぶつぶつと独り言を言い続けているドールもいれば、大声で「緊張する~!」と言い合っている者もいる。あるいは入学式早々、隣のドールの耳元で甘い吐息を吐き、誘惑している者もいる。
まさに百人百色――これがドールの多様性だ。
コハルはそんな個性的な面々に囲まれ、ますます落ち着かない気持ちになっていた。
自動音声により呼名がなされ、生徒たちが順番に返事をしながらその場で立ち、ステージ上のライブ映像の中心に姿を現す。そして何か一言ずつ発言する。きちんと礼をする者もいれば、腰をひねって大仰なポーズをとる者もいる。
「――No.2681、『カミラ』。」
「はい。全力を尽くします。(最敬礼しながら)」
「――No,2686、『キャサリン』。」
「おう!キャサリン様だぜ!みんなアタシのことちゃんと覚えろよ!よろしくな!(ピース)」
「――No,2693、『ヘレン』。」
「(転びそうになりながら)は、はいぃっ……よ、よ、よろしくお願いします。あうう……。」
「——No,2705、『エリー』。」
「(顔を上げずに)……よろしく、お願いします。」
「No.2712、『コハル』――」
「えっ、あっ!?」
ぼんやりしている間に、あっという間に自分の番がきてしまった。コハルは慌てて立ち上がりながら、ぴょこりとコミカルにお辞儀をする。
「は、はいっ!み、みなさまっ、よ、よろしく、お願い、します…………。」
目の前に自分の巨大な顔が映し出されるのは恥ずかしいどころの騒ぎではない。声をかすれさせ、途中で下を向く。きちんとできたかどうか不安だった。
200人分の長い呼名が終わった後、学長を含め、白づくめの主要な職員全員が登壇し、一列に並んで礼をした。だがその後すぐに、ステージの奥の影に引っ込んでいく。
この学園において教職を担うのはほとんどAIであり、職員たちはごく少数である。彼らは「P」と呼ばれる――
彼らの代わりに、在学生の一人が代表として登壇し、中心に立った。
コハルは壇上に立った人物を見て「あっ」と声を漏らす。先ほど廊下で自己紹介を交わした美女、スイレンだった。
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