第12章 俺、相棒と喧嘩する
第61話 俺、ギャルと朝を過ごす
「おはよーございます、音奏さーん」
ドアノブも器用に開けちゃうシバちゃんにアラームで目覚めた俺はめちゃくちゃ広いキッチンでシバの飯を作った。
しばらくして、可愛い彼女の分と自分のパンを焼いて、目玉焼きなんかも作っちゃったが……。
寝室から返答はない。
「ケケケッ、英介ってほんとダメだよなぁ」
シバは食い終わったた皿をカランと前足で蹴って鳴らす。おかわりですか、そうですか。
「ちゃんと相棒の分も焼いてますよ」
「よーく覚ましてな」
「はいはい」
カリカリに目玉焼きのせ。ご安心を、シバは犬神なので人間の食い物やしょっぱいもん食っても体は壊さないもんで。
シバが2杯目を食い始めてから俺は寝室へと戻った。床には昨日、音奏が羽織っていたバスタオルが丸まっている。そっか、そのまま寝たんだった。えっと……流石に彼女のクローゼットを漁るのは気がひけるんで俺のTシャツでいいか。
黒Tを引っ張り出して、それからシーツにくるまっている彼女に声をかける。
「音奏、朝ごはんできてるぞ」
「うぅ……」
「おはよう」
「おはよ……」
「服、着ないと風邪ひくぞ」
「動けない」
「え? 熱か?」
「ばかっ……腰いたい……うぅ」
これだから素人童貞は! と言われそうな俺はやっと彼女の状況に察しがついてそっと寄り添った。
「えっと、何か欲しいものは?」
「ピンクの下着……フリフリのセットのやつね。それと英介くんの匂いがするTシャツ」
あぁ、なんて可愛いんだこの生き物は……。俺は可愛い生き物と暮らす運命だったのか?!
「了解、ご飯は? 食えそう?」
「食べる……」
「じゃ、ちょっと待ってて。クローゼット、勝手に開けるぞ」
「うん」
***
音奏の部屋……というか彼女の荷物が置いてある部屋には大きなウォークインクローゼットがある。多分、10畳くらいの。前の部屋より広い。下着……下着。
クローゼットの中に下着が入ってそうなボックスを開けると……、中には可愛らしいピンクのフリフリや白いレース、真っ赤で刺激的なものなど「こんなに必要ないだろ」というほど下着が詰まっていた。
「これで、昨日まで未経験だったとか……」
黒いTバッグを摘んで、罪悪感にかられたのでそっとしまった。
「さてさて、ご希望はピンクでフリフリ、これかな」
どれもこれもピンクでフリフリだがなんとかセットものを見つけて寝室へと戻った。音奏はシーツにくるまったまま半身を起こしスマホをいじっていた。
「お待たせしました」
「ありがと……」
俺は背中を向け、彼女が着替え終わるのを待つ。シーツと肌が擦れる音がちょっとリアルで……彼女がゆっくりと着替えていることがわかった。無理させたか……? いや、誘ってきたのはあっちで、いや俺の責任か。
「立てる?」
振り向いてみると俺の黒Tをきた彼女がベッドに座っていた。つるつるの生足、目に毒だ。
「立てないのでソファーまで運んで欲しいです」
「はいはい」
よいしょっと彼女を抱き上げて寝室を出る。可愛いシバ犬にからかわれつつ、広いリビングを横切って、これまた馬鹿でかいカウチに彼女を下ろした。
「ありがと」
「お水? ミルク? お茶?」
「あったかいお茶がいいなぁ」
「了解」
ダイニングテーブルに展開していた食事をソファーの前のローテーブルに運び直して、あったかいお茶まで作る。可愛いすっぴんのギャル様は一足先に目玉焼きにマヨとしょうゆをかけていた。
「いただきます」
「どうぞ」
「あのさ、目玉焼きのしょうゆマヨってうまいの?」
目玉焼きは結構万能だからなんでも合う。俺はケチャップとマヨを混ぜたソースをかけたり、たまにシーザーサラダドレッシングをかけたりもする。
「マヨしょー美味しいよ? こってりだけどさっぱりって感じ」
「太りそうだけどな」
「ギクッ」
ほっぺたについたマヨを気まずそうに拭うと音奏は照れ笑いをした。
「パン、おかわりいる?」
「目玉焼きもおかわりしていい?」
「はいはい、お昼ご飯は頼んだぞ〜」
「りょ〜」
空になった皿を2枚もってキッチンに向かいながら、俺は幸せすぎてニヤニヤするのが止まらなかった。
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